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スケジュールカードって知ってますか?


 最近は視覚支援という言葉もよく耳にするようになってきました。

 障害のある子どもは耳で聞くより視覚に訴えた方が理解しやすいということが広く知られるようになり、最近では保育園幼稚園の先生方からカードの使い方を聞かれることも多いです。保護者の中にはカードを手作りしている方も、、、。

 視覚支援のカードを使えることは障害のある子の大きな武器になります。カードは正しく使いたい、使わせたい。
 療育者の中には
「カードを正しく使うのは難しいし、見様見真似でやっても失敗する!」
なんて、眉間にシワ寄せていう人がいます。確かに見様見真似で簡単に出来るものではないし、間違った使い方をしている人もいます。でも、そんなに小難しいものかな?とも思うのです。

 視覚支援のためのカードの使い方はおいおい少しずつ書いていくとして、まずはじめに知っておいてもらいたいこと。それはあくまで「視覚支援」であるということ。カードは「目で見て理解する」ためのものです。

 私が以前働いていた療育園ではカードを使う前にまずは実物を使います。           
 例えば、慣れている子どもはトイレのマークが書いてあるカードを渡すと
『トイレにいくんだな』
と理解し、トイレに向かいます。でも、カードを使い始めたばかりの子どもや、まだまだ理解の追いついていない子には紙おむつを渡すのです。トイレの入り口にはちょうど紙おむつが入るくらいのカゴが用意してあって、子どもは渡された紙おむつをそのカゴに入れてそのままトイレに入ります。
 カードを使う前に、まずは自分がその場で使うもの、実物を手渡されることで
『これを使うんだな』
と意識付けをし、トイレに行きカゴに入れることで
『ここで使うんだな』
と理解させるのです。
言葉を理解していなければ、
「トイレ行こうね」
という声かけは彼らに通じませんし、トイレのマークを理解していなければ、カードを渡されてもそれはただの紙切れです。

 もう一つ例をあげますね。
幼稚園の先生とお話する機会がありました。
「Aちゃんはお外が大好きで一旦園庭に出ると、給食の時間になっても戻ってこれません。食べることは大好きなのに『給食だよ、今日のご飯は〇〇だよ』と伝えても動いてくれず、手をとっても泣いて嫌がります」
とのこと。私は
「給食のときに使うものはなんですか?自分専用のスプーンやフォーク、給食ナプキンを入れた給食袋とか使ってますか?」
とお聞きしました。
 Aちゃんは食べることが大好き、給食が大好き、であるならば、「給食」が待っていることを伝えれば、園庭遊びを終わらせてクラスに戻れるはずです。けれど声掛けだけだと彼女に意味が伝わっていないため、強制的に楽しい遊びを終わらせられる、としか思えずにいやいやが始まってしまうのです。この時に給食のマークの付いたカードを彼女に見せても、彼女には
『なんのこっちゃ』
です。そこで彼女が実際に毎日給食時に使っている「実物」が必要になってくるのです。
 幸い、園では給食袋を使っているとのことでしたので外遊び終了の時点(その後が給食であることが大前提です)で、声掛けと同時に給食袋をAちゃんに見せてもらうことにしました。大好きな給食時に使うものを見ることで、
『次は(これを使う時間、つまり)給食なんだな』
と理解し、スムーズに遊びを終わらせられるようにしたのです。

 視覚に訴える、ということはこういうことです。ただカードを使えば理解してくれる、というものではありません。実際、給食袋を見せてもはじめは動かないかもしれません。給食袋イコール給食の時間、と結びついていないからです。それでも給食袋を見せながら
「給食食べよう」
と声をかけ、そして実際にクラスに戻ると給食が待っている事を教えることで、外遊びからの戻りがスムーズになってきます。早い子ならば一回で覚えます。

 まずは実物を見せる。次の段階は写真。そしてカード。これが一番丁寧な順番です。
 もちろん実物を用意出来ないものもあります。近所のスーパーや病院、学校、駅…。そういうものは写真で用意します。

 視覚支援とは「目で見て理解する」ためのもの、という大前提を是非覚えてくださいね。

「うちの子カードが嫌いで、、、」というお母さんがいます。
うーん、使い方間違っちゃったな、と思います。
そんな話もまた今度。

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