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振り返ってそこになにがあったのか。映画『ルックバック』感想

ルックバックの映画を観た。
原作は好きで単行本もキンドル版も買った。
映画化が決まって正直不安でしかなかった。

好きだからこその不安。
世の中に評価されてしまう不安と期待があった。

実際に上映が始まってからは好評価で安心したが、
きっと好きな人しか見ていないからではと思った。
天邪鬼なのか、自分だけがこのルックバックの良さの全てを知っている気になっていた。

実際に映画館に行くとレイトショーなのに意外と人がいて、わりと年齢層もばらばらなのにこんなに同じ気持ちの人がいるのかと正直驚いてしまった。

それと同時に自分は傲慢だと思った。
何かを作り続けた人にしか刺さらないと思っていたがそんなことはなく、きっと誰しもがあの物語に心を打たれたのだと。

映画を見終わり、感想は1つ。
『よかった』

色々言いたい事もある。
キャラの声が合っていたとか、音楽がよかったとか、カットがよかった。漫画と違って、動いている「ルックバック」にとても感動した。

藤野の部屋の映画のポスターがバタフライエフェクトになっていたりして、小ネタでも過去をやり直したいオマージュなのかと漫画にはない要素にもニヤリとしてしまった。

とにかく色々ありすぎるのが、これを見て自分もまた現実でも何かを成し遂げないとという気持ちにさせられる。いい映画を観た後の感情を動かされるのと同じだ。


なぜこんなに好きなのかを考えるとたぶん他の人もそうだとは思うが、自分の人生と重ねる。振り返ってしまうからだと思う。

ルックバック=振り返る
それが映画内のキャラクターのストーリーでも描かれつつ、映画を観ている外側の私たちも同じでそれを行っている。

生きる中で自分の人生で似ている部分、つまり何かと競い合ったり、挫折したり、認められたり、成功したり、後悔したりと言った人間が誰しもが持っている感情の起伏を連想してしまう。

感情のジェットコースターのような作品をこの60分もない映画で表現したスタッフやもちろん原作者の藤本タツキには勝てないと思ってしまう。

藤野がラストで漫画を描き続けたように私たちも『描き続けなければならない』とも思った。それが何かは人それぞれだ。

もし人生どうしようもなくなったとしても「とにかく描け!バカ!」とそう背中を押してくれるような作品に感じた。


最後に、藤本タツキ繋がりで物足りなくなった人は是非「さよなら絵梨」も読んで欲しい。

この作品は「ルックバック」のようなはまた違って、漫画という媒体の可能性を広げた作品に感じる。この時代に漫画家をやっていなくてよかったと心底思ってしまうようなそんな作品です。

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