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【映画】F吹越満

映画のみならずテレビドラマでもお馴染みの個性派俳優さんです。
この人を語るとき、園子温監督作は外せません。園子温作以外の映画やドラマでの吹越満さんでは物足りない気がするのです(´ω`)というわけで園子温3作です。

地味目に見えますがとんでもない異常性を潜めている役者さんだと思います。私生活でも女優の広田レオナとくっついたり離れたりして最近は可愛い娘さんとスタイリッシュな家族写真を披露しています。落ち着いたのかしら。
とてもかっこいい役者さんです。


「冷たい熱帯魚」


吹越満さんといえば、、考えてみましたが、端役でも吹越さんは素晴らしいのでどの作品でも挙げられるのですがやっぱり主演のこの作品は外せないでしょう。

小さな熱帯魚店を営む、吹越さん演じる社本は再婚相手の妙子と実娘の美津子と3人で暮らしています。実の娘は再婚に不満があるようでどんどん素行が悪くなっていきます。ある時スーパーから連絡を受けて妙子と共に向かってみると美津子が万引きをしたという。そこへ店員の知り合いらしい村田という男が割って入り自分の熱帯魚店で美津子をアルバイトをさせて更生させるとその場を取り持ってくれた。村田の店は大手の熱帯魚店で若い女の子がたくさんスタッフとして働いていました。美津子はすぐに馴染み住み込みで働くようになります。そして村田は高級熱帯魚の取り引きビジネスのパートナーとして社本を引き入れます。

村田が近づいてきたことから社本の家族は破滅へと向かいます。強引で邪魔者はどんな手を使ってでもけちらしていく村田に逆らえない社本でしたが、事件がエスカレートするにつれて社本の奥に眠っていた狂気を引き出すことになるのです。事なかれ主義で生きてきた社本が野獣のように生きることに目覚めていく。どうみてもバッドエンドなのですがある意味では魂の回復であり人生を全力で生きるための機能を正常化させていくようにも見えてしまう。社本のやけくそのようなラストへの疾走感。身をもって娘に知らせる生きることの痛さ。サバイバルした娘のその後に持たせたのは希望なのか絶望なのか。激しさに驚きますがとても面白い作品です。

【funky登場人物】村田夫婦


園子温監督作の常連俳優、でんでん演じる村田がとてもにくたらしいやら面白いやら。
村田の妻の愛子を黒沢あすかさんが演じていますがこの人も何を考えているやら大変な騒ぎです。園子温監督の作品は行きすぎた描写が先行しますが存分に観る人を引き付けて揺さぶりラストまで凄い勢いで連れてゆく。ジェットコースターのような中毒性も魅力。村田の人間臭い面も垣間見せながら村田ワールドは社本と共に観る人にも黙って見てろと言わんばかりの爽快感です。



「愛のむきだし」

4時間近くある作品で前後編に分けられています。普通始まった直後に出るタイトルがこの作品では1時間後くらいに出されるという時間感覚の麻痺っぷり。ストーリーに入り込んでいたところに、え?あ、ああそうよねと我に帰らされます。おお今から始まりか、と。

AAAの西島隆弘演じる高校生のホンダユウは神父である父の元に育ちます。母親を早くに亡くしてしまったのだが生前、母に言われた「マリア様のような人を見つけなさい」という言葉に求める女性を探していました。そして出会えたのが満島ひかり演じるオザワヨウコでした。ついに見つけたマリア様に近づこうとするユウですが、そんなユウに執着する女が現れます。安藤サクラ演じる新興宗教「ゼロ教会」側近のコイケでした。人々を洗脳しようとする中にユウの家族もターゲットとされます。

なかなかのしっちゃかめっちゃかっぷりです。主人公や周辺キャラの変な性癖やら屈折具合がどんどんストーリーをこねくり回します。とっても変な展開の中、主人公のふたりは一生懸命にロミオとジュリエットさながらのラブストーリーを展開。それもテーマ曲がゆらゆら帝国。
観る人によってはウハウハな作品です。

吹越氏はヨウコがゼロ教会に連れて行かれた時にユウがすがりついた救済会の神父さん役。困ってる人に向かって「僕たち神父も忙しいんでね」と、しれっと助けない宣言しちゃう胡散臭い人ですがなんかそれなりに見えてしまうのは吹越さんだからなのでしょう。刑事役とかもしてますしね。

【funky登場人物】ペアレンツ

ユウもヨウコもコイケも混乱した親子関係の悩みを持ちます。ヨウコの父親役に堀部圭亮、コイケの父親役に板尾創路となっていますが、愛人作ったり実娘を襲ったりどちらも大変。渡部篤郎演じるユウの父親も洗脳されやすい弱い神父ですが一番素直でまだ更生の余地ありかもしれません。その通りゼロ教会に収容されて真っ白く更生されるのですけれども。平和そうに渡辺真知子さんと笑顔でラジオ体操してる姿が見れたりします。しかし。どの役者さんも他ではあり得ない姿を見ることができる一品です。




「ヒミズ」

あの稲中卓球部の作者、古谷実さんの漫画が原作です。
主演を染谷将太と二階堂ふみ。どちらもヴェネツィア国際映画祭の新人賞を獲るという快挙を果たした作品です。

高校生の住田の目標は普通の大人になること。酒乱の父親、男を作って住田を捨てた母親、それでもそんなことはざらに起こっていて自分はギリギリ普通だと言い聞かせる日々。同じクラスの茶沢さんはそんな住田に一目置くようになります。
しかしある日、住田のもとに訪れては父親が酔って繰り返す「俺、おまえいらねぇんだ」の言葉に住田は心の糸がぶつっと切れたかのように大きな石をふらふらと持ち上げます。そして父親の頭上から振り下ろし父親を殺してしまうのです。

住田の家は池のそばにある貸しボート屋で、その周りには震災で家を失った被災者の人たちがテントを張って住んでいます。吹越氏もそのテントの一つにむちむち美女妻と住む住人のひとりを演じています。テント住まいなのにいつもこざっぱりした服装でぴっちりと髪を七三分けにした御曹司のような佇まいです。


製作中に震災が起こり、書き換えたそうです。
劇中、やる気を見せない住田に高校教師が「がんばれ住田!」と頭ごなしに言うシーンがありますが、ラストに同じ台詞を住田に今度は茶沢さんが言うのです。人から言われる頑張れという言葉は時に押し付けがましくその人の身に立っていないことがあります。それが一緒に立ち共に生きてくれる人からの頑張れは一転、叱咤激励となりその人に響きます。
言葉は同じでも、違う。
しらけた台詞がいっぱい思いを含んで重くなり、住田を未来へ走らせる言葉となるラストが秀逸です。

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