誰にもSOSは送れないMr.Children『miss you』
おはようございます。
黄色い服を買いました。
この記事でさんざん親の仇のごとく黄色(秋山君じゃないよ)をこき下ろしておいてこの様です。一度否定したものはやはり好きになる潜在能力を秘めているもんです。松ちゃんムキムキ、液晶テレビで演奏するBUMP。人は変わるもんですね。
いやなんか黄色って有彩色の中で最もモードな色なんじゃないかって最近思い始めて、、、それで、、、ヤってしまったんです、、、通販で黄色のアディダスの古着を、、、神の見えざる手で、ポチッと。
神なんてエンターキー押すぐらいの能しかないんだわ。
変わったといえばこの間のMr.Childrenのアルバム。
どうでした?
ファンの間でも相当にいろんな意見分かれてきている気がしますね。
「尖ったミスチルが帰ってきた!」
「これは桜井のソロアルバムでは?」
「歌詞めちゃくちゃいいけど精神状態が心配」
「バンドサウンドが恋しいヮ、、、」
悲喜交々の意見がネットの海に放流されています。
どんな意見であろうと共通して、今までのアルバムとは明確に毛色が変わったとは断言できるでしょう。
それぐらいミスチル史においても特異なアルバムなわけで。
私自身としても評価がめちゃくちゃ難しい。
そんな今回の令和の問題作『miss you』を発売より10周はした私がダラダラ語っていく回になります。
そろそろ子供産まれるんでこんな風にレビュー書くことも少なくなりそうなので心して書いていきたいと思います。
『miss you』の特異点
①バンドサウンドが希薄
前々作『重力と呼吸』は完全なセルフプロデュースとあって
「これがMr.Childrenじゃい!文句あるか」という強い意志表示の元制作されたロックアルバムだった。King Gnuや髭男など若手ロックシーンが盛り上がる中「いやいやまだ俺らもやれるっしょ」という年齢やキャリアという重力にストラグルするファイティングポーズを示した作品であった。
そしてコロナ前に制作された前作
『SOUNDTRACKS』はバンドサウンドの贅肉をそぎ落として尖らせるべき点を尖らせたサウンドメイクでより成熟したアンサンブルを響かせていた。
しかし今回の『miss you』はTHEバンドサウンドと言える作品はM-2ぐらいでそれ以外は相当に薄い。アコギや打ち込みメインの曲が多く、曲によっては平然とメンバーを省く。私が聞き取れる範囲で全13曲中メンバーがフルで参加しているであろう作品は半分以下だろうと思う。今まで弾き語りやストリングスのみという作品は少なからずあるがそれが半分以上を占める作品は今までにない。
②諦観極まる歌詞
このアルバムを聴いた私の第一声が
「暗ぁ、、、」でした。
よく言われるのは彼らのキャリアでの問題作『深海』
正直『BOLERO』も大概だろと思うが、よく『鬱アルバム』と称される。
しかし鬱度合いは今作『miss you』の方が高いと思う。
『深海』のころは過激だし希死念慮も相当なもんだけど、どこか攻撃的で他者に理解を求めてもがいている感じがする。言うなればメンヘラ気味の鬱。
しかし今作はさらさら他者に理解を求めていない。死のうが天寿を全うしようが年齢的に変わらない気がして自死を選ぶ気力もないほどの純度の高い鬱。誤解を恐れず言えば前者はamazarashiで後者がsyrup16gぐらいの違いがある。
その証左に、彼の作詞の得意技「クエスチョン&アンサー」が機能していない点がある。
リリース前の最新曲『生きろ』。
おそらくおそらくこの回答者はこの後「それができたら苦労しねえよ」と返すのでしょうが、このように掲示板風に歌詞を表現できるぐらいには彼は丁寧に解決法を提示する作詞をする傾向にある。
しかし今作は
疑問を出したまま放りっぱなしで解決法も提示できない。そんな歌詞のアンサー度合いが極端に低いのもこのアルバムの鬱要因を高めている気がする。
一言でいえば自己の可能性を放棄した諦めを歌った曲が多い。あれだけ重力と呼吸でみなぎっていた自信はどこへ、、、となるのも無理はないが、やはりこの5年で、コロナで人も環境も変わるのだろう。
③諦めたが故の強い自我
このアルバム、明確に売れようとしていない。
全13曲タイアップゼロ。こんなアルバムは前例がない。
しかし聴いた人ならわかるだろうがタイアップつけられるような内容じゃない。暗い寂しい地味な曲たちに何をタイアップつけれよう。今の時代どんどん音色も派手になって大衆も刺激を求めている。そんな中できたこのアルバム。これで新規ファンは望めないだろうしファンですら難しい内容であるのは確か。
しかし、セールスを諦めたからこそ言いたいことやりたいことができたのだと考えられる。
このアルバムと真逆のアルバムがある。
2015年リリースの『REFLECTION』
一言で言うなれば『Mr.Childrenができることをすべてやり切ったアルバム』。
Naked盤なら全23曲、タイアップも多く曲幅も広い。光も闇も喜びも悲しみも一緒くたに混ぜた力作である。ジャケットの蜘蛛の巣に張り付く水滴がきらびやかに反射しているのもこのアルバムをよく表している。
対して『miss you』
ジャケットに映るのは桜井和寿ただ一人。うつむいた暗い表情で一人寂しくアコギを構えている。今まで彼一人だけ映ったアルバムは2000年リリースの『Q』のみである。
さらにはCD後ろの刻印の
All Songs by Kazutoshi Sakurai
の文字。ここをわざわざ刻印までして表したかったのではないだろうか。
しかも、普通だったら
All Songs Written by Kazutoshi Sakurai
(桜井和寿によって書かれたすべての曲)
が正しいはずなのに(桜井和寿による曲)と表現したのは、このアルバムがより強い彼の自我を持って製作されたことを示しているのではないかと思う。
つまりmiss youは『桜井和寿が言いたいことをすべて言い切ったアルバム』と言えるでしょう。
これをネガティブに捉えるかポジティブに捉えるかは人次第だけれども、下にProduced by Mr.Childrenとも刻印されている。邪推にはなるがより自我の表出した彼の曲を聴いてメンバーが「ある程度俺らは引いた方が曲のためだな」と判断しての4畳半フォークのようなこじんまりとしたアレンジになったのではないか。そうなるとこの選択はポジティブな判断のもと行われたアレンジだったと私は考えます。
アルバムとしての評価
このアルバム、3本の指に入るぐらい好きです。
メロディも一見とっつきにくいけれどちゃんとキャッチーさもあるし歌詞は過去最高の精細さだと思う。
地味がゆえに世界観が統一されていてまとまりもいいしこの10月というものさびしい気候にドンズバではまりました。聴けば聴くほどいいってのは本当にQっぽいなって思います。
ただこれをMr.Childrenのアルバムとして評価していいのかと思うところはある。あくまで特異点的なアルバムであってほしいとは勝手ながら思います。
大人になれば悩みなんてなくなるもんだって思いますけどクソほど悩むし現実味のある悩みとして降りかかってくる。逃れられない苦しみを彼も持っているってだけで救われる。
新規ファンの方に響くかはわからないけど、どうかいいアルバムなので聴いてください。彼ら全くプロデュースしないんで。いちファンから言えるのはそれだけです。
それでは。
おまけ:アルバム曲ひとこと雑レビュー
M-1. I MISS YOU
くーらーいー。でもスキー。終わりだけ盛り上がるバンド好きー。
M-2. Fifty's map ~おとなの地図
希望歌ってそうで何の解決していない曲。ライブではエレキジャキジャキに弾いてほしい
M-3. 青いリンゴ
サビのコード感すこ。最後だけ皇帝ギター炸裂
M-4. Are you sleeping well without me?
そろそろカフェインやめようぜ。サビ前のエフェクトが米津っぽい
M-5. LOST
曲調天国で歌詞地獄。唯一ライブで盛り上がれそう
M-6. アート=神の見えざる手
話題の問題作。サクラップって言われているけどいうほど韻踏んでない。トーキングブルーズの方が合ってる気がする
M-7. 雨の日のパレード
結構好き。美談色に染まるって歌詞好き
M-8. Party is over
令和版Surrender。コーヒーやめたと思ったら酒飲んでた
M-9. We have no time
歌い方がQ。アコギのリフが癖になる
M-10. ケモノミチ
トレーラー詐欺
M-11. 黄昏と積み木
柔らかい系で最近でいっちゃん好き。Signより好き
M-12. deja-vu
出だしがjewelry。こんなタイトルつけるか普通
M-13. おはよう
美メロの極致。最後の1節転調するの好きすぎる
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