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『SF怪獣大百科』:子供向けだけど「大映の懐事情」を語ったマニアックさ

 子供向けの仮面ライダー本に大人向けの生々しい内容が載っていた、との話題が。この情報はマニアックではあるけど、再放送等で何度も仮面ライダーを見返してた子供の中には
「この回だけ藤岡弘さんが出てないし、何か声も普段と違うなぁ」
とか気付いてた人も既にいたのでは。そんな子にとっては
「あ、だからか!」
と凄くためになるネタだったでしょう。こういうのを小学校高学年~中学生位に知ってしまうと、もうその手の情報が知りたくてたまらなくなるん。こういうネタがマニアとしての芽を育てるのですよ。

第66話・67話は実際には藤岡弘は出演していない。これは、怪我や病気のためではなく、NHK『赤ひげ』の出演問題がこじれてて藤岡弘が失踪したため。そのため、衣装のライダーが芝居をし、声はアニメファンには人気の高い市川治が吹き替えした。

上記図鑑より

 子供向けだけどマニアックな情報が載ってた大百科、というと

『SF怪獣大百科』ピコピコブックス(刊:永岡書店)

を忘れずにはいられません。

 Amazonだと刊行は1994年とありますが、どうやら84ゴジラ復活時に出版されたもののようです。ブームに合わせての一冊で、内容の一部はこちらでも紹介されてます。

 怪獣映画の情報を入れつつ、ガメラのオリジナルギャグ漫画が挿入されたり、はたまたコミカライズ版『ゴジラの逆襲』『大魔神』もありと独自要素も多いのですね。上記ブログでは紹介されてませんが『大怪獣ガメラ』もコミカライズされてて、
「ガメラは人類の脅威だと思われたが、灯台から落ちそうになった少年を助けた。ガメラは悪いやつじゃないんだ、という少年の思いも虚しく、ガメラはあらゆる攻撃を受け付けず大暴れを始める」
と話の要点を完全に掴んでて、今思い出しても大満足な内容でした。

 一方でかなり、というか相当マニアックな情報も載せていた。特にガメラ繋がりで大映(現:角川映画)という映画会社を紹介する時に
「『大魔神』は大ヒットしたため同じ年に三本も作られたが、それゆえにパターン化してしまい(※詳細は忘れたが、そのような趣旨の文章が書かれていて)その1年で終わってしまった」
 という具合に、成功と失敗の両方について振れていたのです。さらには昭和ガメラシリーズの終了についても「作っていた大映が倒産したから」とその理由をしっかりと書いてました。しかも、

これには当時の大映のワンマン社長、永田雅一が円谷英二に依存していた東宝に対抗しての考えだったのだけど、そもそも大映は製作至上主義を長く掲げすぎたせいで直営の映画館が少なく興行網が乏しかった。興行網が弱いということは、松竹、東宝、東映の映画館を間借りしての興行となるので大映の取り分が低くなる。後年になって「大映興業株式会社」という直営館の獲得に奔走するが時すでに遅し。すでに優良物件はこれらの会社に抑えられていたので大映は最後まで配給収入で苦労することになる。日本の映画産業というのは現在に至るまで土地転がし、土地活用の延長線上にあるということは念頭に入れていただきたい。

上記記事より

 先の『SF怪獣大百科』ではこの太字部分まで言及しており、さらには昭和シリーズ一旦の打ち止め作となった『ガメラ対深海怪獣ジグラ』では
「日活と配給網で手を結び『ダイニチ映配』を立ち上げるも、上手くいかなかった」
とまで触れていたのです。

 映画斜陽期の中で特に苦しんでいた大映・日活の二者による独自の配給網でしたが、日活はロマンポルノに移行、大映もとうとう首が回らなくなり倒産と2年も持たずに消滅。栄枯盛衰といいますが、虚しいものがあります。
 しかし子供の頃にこの情報を知った時は「どこがダイニチ映配なの?」でした。というのも本編ではダイニチ映配ロゴ→大映マークとなっていたものの、テレビ放映版ではそのダイニチ映配部分がカットされてたのですね。ロゴ付きで全編鑑賞出来たのは成人してからで、ようやく
「これがダイニチ映配か!」
と納得したものです。ほんの数秒でしたがあれは嬉しかった。

 結構お気に入りの一冊で、親に頼んで買ってもらい読みふけっていたものの、気が付いたら手元から消えていて「あれ、どこいったの?!」と非常に寂しかった覚えがあります。小学生時代に一度引っ越しを経験してるので、その際のドタバタで無くしたのかもしれません。自分の荷物をしっかり管理していればよかったのですが、いかんせんそこは小学生。引っ越しだなんてほぼ親任せでしたからね、こればっかりは。

 それゆえこの本は「自分をより怪獣好きにさせ、マニアへの芽を吹かせるきっかけにもなった」一冊。まさに思い出の本です。

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