高校生クイズ2023、悪くはないけど物足りない。
一年前にこんなnoteを記した。そして迎えた放送日、どういう番組になっているのかと思っていたが……これは果たして改革なのか。「努力を重視してガチで勝負させる」のは間違いなかったが、同時に既視感を覚えるところもあった。
もちろん、良いところはあった。何箇所か挙げたい。
「Q:映像クイズです。この国道は何号線?」に対して、映像を出す前にボタンを押して勝負に行き「339号」と正解を出すのは、大博打だが鮮やかな解答である。こう出題するからには普通の道を出すはずがない、と先を読んだうえで勝負に出たのはお見事。余談だが、もう一つありえた答えは「174号」。神戸市中央区にあり、長さは187.1mと日本で最も短い国道である。こちらを問う可能性もあったので、とりあえず映像が出るまで待ち、階段だったら前者を、市街地だったら後者を答えるという手もあっただろう。しかし仮に間違ってたとしても、そのチャレンジ精神は素晴らしいと思う。
あと「Q:8000m以上ある山の名前を出来る限り多く挙げよ」の答えとして「オリンポス山」を記したのも「ああ、確かにそれも正解だ」と思わされた。オリンポス山は火星にある山で標高はゆうに2万mを超える。何より問題文では「地球上にある」と限定されてないのだ。地球上で標高8000m以上の山は12峰なので、普通に考えれば答えは最大12となるが「より多く挙げよ」の部分を突き詰めた結果あの答えを書いたのだろう。Xでの反応も「これは上手い」と関心の声が多かった。同感である。
2つの問題はいずれも「知識」があるからこそ答えられるが、ただ覚えてるだけではこういう解答は出来ない。これも計算のウチだったかは不明だが、そう聞いてくるからには、と発想を広げてクイズバトルをするさまは良かった。
では満足かというとそうでもない。全ての問題を振り返ると、どこか偏りがちなのだ。
雑学とはいいつつも、社会・文学・歴史……といった系統が多く、さらには計算問題まであった。一時期あった「知の甲子園」とほぼ同じノリで、公式や求め方が分かっていればきちんと正解は出せるものであっても、そんなのを急に求められても困る、というのが本音だ。確かに数学もクイズにはなるが、やっていることはほぼ数学の試験。万物がクイズになるとはいえ、こういう問題はアリなのか? と思えてしまう。
何より、問題にミーハーさが感じられない。そこが一番引っかかる。
自分たちが普段楽しんだり嗜んでいるクイズは、学校で学ぶような知識もあれば、新聞や雑誌(ゴシップ誌も含む)に乗っているような情報、ネットでの流行etc…と多岐に渡っている。今回出場した高校生達も、サークル活動や例会ではそういった問題に数多く触れているはずだ。自作の問題はもちろんのこと、クイズ大会を主催した有志の方々が(記録も兼ねて)出した問題集を持ち寄って嗜んでいる……そんな光景が目に浮かぶ。それは主体が学生サークルであろうと、社会人だろうと変わりはない。
そこでは学問系の硬派からミーハーさに富んだクイズまで、それこそジャンルを問わずに様々な問題が飛び交っている。中には今回の高校生クイズで出題されたようなクイズもやはりある(アマゾン川の地下を流れる川など)が、ああいう問題ばかり解いてるの? と問われたら、間違いなく
「全然違います」
と答えるだろう。「普段やっているクイズとの剥離」はどうしても避けられない。その印象は拭えないのだ。
もちろん高校生クイズを「最も『知を高め』て、クイズならではの『発想』を求める」大会として突き詰めるスタイルを貫くのなら、そういうスタイルもアリだろう。間違いなく熱い戦いはあった。敗れた高校生たちの涙はこちらもジンと来るものがあった。しかし番組そのものはというと、前に書いていた「改革」というよりも「少し前に戻った」感が強い。その辺でどうしてもモヤモヤが残ってしまう。まだ手探りしてるのかと思ってしまうが、こればかりは正解など無いのだろう。難しい。
「努力」は間違いなくあったし、憧れを抱く方もいたと思う。ただ成功とも失敗とも言い難い。しかしこれだけは言える。クイズは硬派にもミーハーにもなるから、もっと気軽に触れられるものだと感じるものにして欲しかったなぁ、と。
ただし、早押し機の前では誰もが真剣勝負だ。あの熱意はガチなので、邪魔したり揶揄もするな。それだけは釘を差しておく。
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