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『ゴジラS.P』感想:理屈と大ハッタリに満ちた快作!

 いやあ、驚きました。想像以上に楽しめる怪獣アニメ作品でした。

 まず、毎週の配信が楽しみになるほどの作品だったことが嬉しい。怪獣好きだから一応押さえておく、のでなしに「次どうなるんだ、これ……?」という幕引きの上手さや「真相は何だろう?」と考察したくなるような、くすぐられる要素のおかげですっかりハマりました。
 とりわけ2話のラドンの群れが海から出現する引きや、1話のラストカットと3話において馴染みの伊福部メロディーをBGMにゴジラの存在を示唆させて「つづく」となる終わり方はワクワクしましたね。いっそのこと「つづく」という字幕を付けて欲しかったくらいです。

 「ゴジラの出番が少ない」という声もありますが、あれだけ他の怪獣を出しつつ、メインとなるゴジラの脅威と絶望感をTVアニメの尺で描くのは大変だったと思います。出番が少ない=もっとじっくり観たかった、ということでしょうか。その気持ちは分かります。しかし第10話での熱線シーンにおける「"あっという間に"観てる側を驚きや恐怖のどん底に叩き込」んでくれる感覚は大変良かったです。

 台詞や画面の情報量が多く難解な部分もありながら、特異点、破局、アーキタイプ、オーゴソナル・ダイアゴナライザーといった単語はよく分からないけど頭の中にこびりつくほど刷り込まれました。大切なのは原理云々ではなく「これらが鍵を握るのだ!」という思い切りの良さと科学的ハッタリのかまし方ですね。『ガールズ&パンツァー』の謎カーボンや人に危害を与えない砲弾と同様です。

 しかし何より、その「幕引き」や「くすぐられる要素」も、全ては最後にもっと凄いハッタリをかますための付箋だったという。確かに過去のシリーズでそんな事例はあるけど、まさか21世紀になってそれをやるか?! と。

 かつて『シン・ゴジラ』のクライマックス・ヤシオリ作戦でいきなり「宇宙大戦争マーチ」が流れた瞬間、
「え、この時代に昭和特撮の名曲をぶっこんでくるのか!」
 という衝撃と感激が入り交じる状態になりましたが、今回の場合は
「おい、嘘だろう……この要素をここでぶっこんでくるのか!」
 てな気分にさせられ、後で振り返って「いや待てよ、もしかして全部前フリがあったのか?」とまた見返したくなった時点で製作者側の勝ちなんですよ。完全にやられました。

 登場人物も、最初見た時は学生やら技術者、町工場のおっさん、一癖も二癖もある学者達etc...と、ここからどう話が広がるんだ? と思っていたらこれも想像以上に面白かった。
 「ありえない生物学」を選考する銘が特異点やアーキタイプを研究する側の人物と接点を持ち、「エンジニア」のユンが怪獣と直接戦う側になるねじれ状態。AIのペロ2とユング(後のジェットジャガー)との掛け合いもお互いの特徴が出て楽しいし、最終的には主人公のサポート役という枠を超えてしまう展開にも驚きましたね。

 そんな彼等二人の周囲にいる人物も一筋縄ではいかなかったり、様々なところで接点が描かれたりとサブドラマも進行してて、特に最終話のラスト10数秒は「そういやアレはどうなったんだ……え?!」と全部持ってかれました。ここまでされたら、もう参りましたとしか。続編希望の声もあるけど、あの結末だからいいんです、ええ。

 もちろん葦原博士の真の目的等々謎な部分も残ってますが、案外劇中のどこかにヒントがあったのかもしれませんね。そこを考察するのもまた楽し。

 いずれにせよ、満足度の高い作品になってよかったです。

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