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隅田川 × 〇〇 体験ツアー! -荒川区景観まちづくり塾2022 〈第3回講座〉-

荒川区景観まちづくり推進委員、委員長の山本です。
このnoteでは、私たちの委員会による景観まちづくり活動について記しています。
今回は、2022年10月22日に開催された荒川区景観まちづくり塾2022〈第3回講座〉について。

第3回の講座は、隅田川【体験ツアー】です。
前回の座学を受け、隅田川と荒川区のまちの実態を体感する体験ツアーを開催しました。
体験ツアーは、〈乗船ツアー〉と〈まち歩きツアー〉のふた手に分かれて開催。
今回の記事ではまち歩きツアーについて掲載します。
まち歩きと言っても、見どころ盛りだくさんということで、スポット間に距離がある箇所はマイクロバスでの移動としました。
(いくつか時間の都合でバスからの視察となりましたが、ここに写真や解説を追加して記します)



当日のルートはこちら。





1. トミンタワー南千住 (隅田川 × 眺望)

南千住にある32階建ての集合住宅。
その屋上にあるヘリポートからの見学です。

トミンタワー
トミンタワー屋上

地上100mオーバーからの視界。
西にどーんと座す富士山や、隅田川越しのスカイツリー、防壁団地の白鬚東アパートなどなど、どこに目をやろうか迷ってしまいます。

富士山
東京スカイツリー
防壁団地の白鬚東アパート

でも、やっぱりすぐ下にある隅田川駅に目が行きます。
隅田川駅は常磐炭田からの石炭などを受け入れるために、1897年にできた貨物専用駅。
写真の通り、線路がフォーク状に並んでいますが、これは間に水路が引かれていた痕跡。この水路から隅田川を介し、東京の市街地へ輸送していました。
その後、輸送手段が鉄道・コンテナ輸送へと切り替わり、船舶による輸送量は徐々に減少。1970年ごろに運河は全て埋め立てられ、今のコンテナが並ぶ姿に。

隅田川貨物駅

ここからぼーっと眺めていると、水路があった頃の情景がすーっと思い起こされるような気がしてきます。

今回は、特別に見学させていただきましたが、定期的に開放して欲しくなってしまいます。
早速、ハイライトと言ってもいいくらいの景色でした。



2. 瑞光橋公園 (隅田川 × 旧水路)

続いては瑞光橋公園。
現在は湾処(わんど)のある公園として整備されていますが、先の隅田川駅に引き込まれた水路はここを介して隅田川と繋がっていました。

瑞光橋公園の汐入水門跡

写真の正面奥、階段脇に見えるコンクリートの塊はかつてここに水門があった名残。
この水門は隅田川駅構内に掘り込まれた運河の水位を調整し、駅構内と周辺地域を水害から守るために1953年につくられたものです。

このあたりは区内で最も地盤が低く、また駅構内は荷物の揚げ下ろしの関係上低く造られていたことから、水門ができるまでは満潮時に付近は浸水。また台風などの異常な高潮時には遠く浅草方面まで水害が及んでいたようです。
その後、駅の水路が埋められたことで、水門もその役割を終えました。



3. 汐入公園スーパー堤防 (隅田川 × 堤防)

公園全体が緩やかな丘になっている、汐入公園スーパー堤防。
前回の講座でも取り上げられていましたが、こちらのスーパー堤防の特徴は、その下を道路が走っていること。
これにより、より高いスーパー堤防となり、大地震による地盤沈下や高潮などの災害に対してゆとりある計画になっています。

汐入公園のスーパー堤防

現在はスーパー堤防に置き換えられましたが、かつての防潮堤も一部残されています。

隅田川防潮堤



4. 天王公園 (隅田川 × 公園)

天王公園は1968年に開園した公園です。千住大橋のほど近く、江戸時代にあった武家屋敷の跡地にあります。この日は止まっていましたが、“岩山”から流れ落ちる大滝がシンボル。いつもたくさんの子供たちで賑わう、人気の公園です。

天王公園

ここには、戦後まで木材貯蔵の池があり、当時から子供たちの遊び場でもありました。開園の翌年には25mプールが新設され、噴水、遊具などがある緑豊かな公園として親しまれてきました。
その後、1989年から2か年かけて、特色ある公園づくり事業により「冒険公園」として再整備し、おおむね現在の形となりました。



5. 天王公園 拡張予定地 (隅田川 × 未来の公園)

天王公園の隣に、旧南千住浄水場用地があります。
ここを将来、天王公園の拡張用地として整備する計画があります。

天王公園拡張予定地

2022年度の都市計画決定により、公園面積は0.6haから2.8haへと、約4.6倍になります。新たな公園にはならず、天王公園の拡張として名称を継承することとなります。
川沿いにできる公園ということで、どんな空間ができるか、今から楽しみです。



6. アクロシティ (隅田川 × 住宅)

アクロシティは、千住板紙という段ボールの大規模工場跡地に計画された、マンション群です。隅田川沿いに建てられた良質な都市型住宅を目指したということで、前面にはスーパー堤防も設けられています。

足立区側から見たアクロシティ

スーパー堤防と親水テラス。
春になると桜並木が咲き誇る、美しい場所です。

アクロシティ前のスーパー堤防と親水テラス



7. 煉瓦塀 (隅田川 × 産業)

ライフ南千住店の前にある煉瓦塀。
日本紙通商株式会社から区へ寄贈された煉瓦塀を、文化財として保護しているものです。

煉瓦塀自体は直接隅田川と関係がないように思いますが、ここに工場があったのは水運を利用するため。また前回の講義でもあったように、レンガは隅田川がもたらした土を利用した荒川区の産業です。ということで、ここも荒川区の「水×景観」。



8. 旧三河島汚水処分場喞筒場施設 (隅田川 × 水処理施設)

旧三河島汚水処分場喞筒場施設(現 三河島水再生センター)は、日本最初の近代下水処理場で、大正11年に運用を開始しました。

下水道分野の遺構では、初めて国の重要文化財(建造物)に指定されました。荒川区にある国の有形文化財はここだけです。

施設のガイドさんに案内いただきながらの見学。
パネルを使いながら、とても丁寧に、建物のこと、歴史のこと、下水処理にいかに工夫がこらされているかなど、さまざまなことを学ぶことができます。

水田地帯だった頃の写真

1914年頃の写真。水処分場ができるまで、このあたりは広大な水田地帯でした。

外壁のレンガ風タイル

建物はレンガ風のタイルを使用した鉄筋コンクリート造です。レンガタイルの作り方も展示してありました。

地下の下水管へはヘルメットを装着して

そして下水管は、実際に歩きながら見学することができます。

喞筒井接続暗渠

喞筒井接続暗渠と、ここで暗渠という名前が出てきました。
瓦なような床タイル。下水が詰まらないように穴が開けられています。

正門の横にある石碑。これは当時下水処理していた範囲の地図を模しています。


旧三河島汚水処分場喞筒場施設は要予約ですが、誰でも見学することが可能。
春には桜のお花見、秋にはキャンドルナイトなどのイベントも開催されます。
まだの方はぜひ、おすすめです。



眺望、水路、堤防、公園、住宅、産業、水処理施設と、さまざまな角度から隅田川を見てきました。少々駆け足でしたが、荒川区が隅田川と関係しながら、いかに街づくりされてきたか、実感することができました。

塾生の皆さんには「体験ツアーを通じて、あなたが発見した〈水×景観〉を教えてください」という宿題の提出をお願いしています。
どんなものが並ぶか楽しみです。

さて次回、第4回の講座は暗渠についての講義。
ゲスト講師に暗渠マニアックスのお二人をお招きして、暗渠や暗渠と荒川区の関わりについて学んでいきます。


荒川区景観まちづくり推進委員 委員長 山本展久




荒川区景観まちづくり塾 2022 〈第3回講座〉
・内容:隅田川【体験ツアー】 乗船ツアー / まち歩きツアー
・日時:2022年10月22日(土曜日) 13時30分〜
・場所:荒川区内各所
・ガイド:原澤優介氏(荒川区景観まちづくり推進委員)、大野整氏(荒川区景観まちづくり推進委員)

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