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生協と第三人格~それでええんです~
大好きな生協の宅配の日。
だけど少し憂鬱な生協の宅配の日。
ポチポチとめぼしい商品をカートに入れた後、最後にざっと見直してかなりの品数を泣く泣くカートから削除したにもかかわらず、たまに(?)冷蔵庫・冷凍庫の空き容量以上のものが届いてしまうことがある。
頼んだものが多いのか。
それとも消費しきれていないストック物が多すぎるのか。
月曜日は○○で~、火曜日は▽▽で~。なんてきっちりと一週間分の献立を決めて買い物をすればこんな問題にはぶち当たらない。
しかし、いつも2日目の献立を考えたあたりでワタシの脳みそは、もう晩御飯のことなんて考えたくない!とお菓子のページやご当地グルメ特集のページを厚く所望するようになってしまう。
目の前の欲望に忠実……いや、感性を大事に生きているワタシにとって、細かいスケジュールをたてることほど苦手なものはない。
そんなワタシにとってのスケジュールとは、ひとことで言うならば『締め切りを決める』。ただそれだけなのだ。
締め切りさえ決まってしまえばその前日までには作業を終える。
それがワタシのスケジュール。
これを生協に当てはめるとすれば、一週間食いつなげることができさえすればミッションコンプリート!ということ。なので、たまにいろいろと計算を失敗した結果、大量にある食材とまったくたりない食材を目の前に、なんじゃこりゃ……これでどうしろと……と頭を抱えこむこともしばしば。
そういう時は具材のバランスが常軌を逸してますけど…?みたいなおかずが並ぶことになるけれど
「家のごはんはそういうもんなんです。まずい日があってもええんです。お店のごはんじゃないんですから、それでええんです。いつも同じじゃない。それがお家のご飯なんです」
と、ワタシの頭の中で土井善晴先生が全肯定してくれるので、ワタシはいつも元気です(←
それに『年間最安値』『月間商品』なんて文字を見かけると思わず「これは買っとかなあかん!」とワタシの中のおばちゃんが一気にやる気を見せ始めるのも買い物下手な要因のひとつで。
「そんなん、店の思うツボやがな……」
といさめるワタシの中のオッサンを力づくで押しのけたおばちゃんが
「そんなこと言うても、どうせいつか買うもんやねんし、少しでも安いうちに買うといたらええがな!これが買い物上手ってやつや!」
と、鼻息荒く主張をはじめるまでがワンセット。
こうなると買わない自分が悪者になったように感じるし、小心者のワタシはこのおばちゃんに勝つことは出来ない。自分の中のおばちゃんにすら勝てないワタシの軟弱ぶり。
ちなみにワタシの中のおっさんは内部の決定権においてはおばちゃんの足元にも及ばないけれど、ワタシの外見や立居振舞においてはおばちゃんを押しのけてぐいぐいと全面に出ているので存在感は抜群だ。
抜群だ……。
でもそれでもいい。
それでええんです。
ということで、先週注文した商品が届いたワタシはいつもの事ながら冷凍庫の収容量を上回る冷凍食材を目にして立ち尽くした。ああ、これは。
アカンやつや……
冷凍品から目をそっとそらしたワタシは、冷凍庫を開けてかさばっていたアイスをひとつ食べはじめる。うん。アイスはいつ食べても美味しい。
そうだ。ひとりでアイスをこっそり食べるなんていけないいけない!と、天使のような微笑みを浮かべながら、ワタシは子にそっとアイスを差し出した。
ワタシってば、なんて優しいお母さんなんだろう。
そんなふうに思う存分自画自賛した後、ワタシは現実世界へと舞い戻る。そして晩御飯で使えそうなものをガシガシと投げ飛ばさんばかりの勢いで取り出すと、届いたものをぎゅうぎゅうと半分無理やり冷凍庫に押し込んだ。
「ほんますばらしい。ええですわ~。冷凍庫はね、隙間が無い方が省エネになるんです。だからそれでええんです」
頭の中の土井先生に全肯定されながら(土井先生はたぶんこんなことは言わない)冷凍庫を無事に閉めることに成功したワタシは次に「家族の健康を考えた栄養満点のカレーをつくるでぇ!」という頭の中のおばちゃんの号令に従って、冷凍庫から押し出された食材をすべてぶち込んだカレーを作るのだった。
夕飯時。
カレーを食べながら「今日のカレー、めっちゃ具多ない?」なんて言う家族の言葉にワタシはにっこりと微笑みながらこう返す。
「家のご飯はね、それでええんです。って土井先生が言うてるから。
それでええんです」
と。
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