○○のこと、どう思ってるん?
「アンパンマンやってるで!ほら!」
アンパンマンが放送されているのを見るとつい子を呼び寄せてしまうワタシ。
もちろん子はアンパンマンが狙っている(←)世代でもないし、アンパンマンの沼にハマっているわけでもない。小さい頃のワタシの習慣がそうさせるのだろうか。それとも、自分だけがアンパンマンを見て楽しんでいるのがなんとなく心の奥底で罪悪感として疼くからなのだろうか。
その答えはいくら探しても見つからない。
しかし、答えなどみつからなくてもかまわない。そんなものがあろうがなかろうが、テレビでアンパンマンがついていたらワタシは子を呼ぶのみなのだから。
先日、アンパンマンを見ながら、子にずっと疑問だったことを聞いてみた。
「アンパンマン!アンパンマン!って言う割に、ぬいぐるみはばいきんまんをチョイスしまくってたし、カバンはドキンちゃん一択やったし。カレーパンがアレやったんは知ってるけど、ほんまはアンタ、アンパンマンのことどう思ってたん?」
”アンパンマンのことどう思ってたん”
我ながらよくわからんことを口走ったことに気がついた。
スキだと言われた相手に対しての気持ちを年ごろの子どもに対して聞くと考えれば適切な質問だ。けど。だけど。
アンパンマンに好きだと言われたわけでもないし、どう思ってたん?と聞く対象としてアンパンマンってどうなんだろう。
しかしそんなことにはお構いなしに、子はなにも気にしていない感じでちょっと考えた後こう言った。
「アンパンマン食べたいなって思ってた」
想定外。ワタシの頭の中にそんな答えはこれっぽっちも存在してはいない。食べたい?アンパンマンを?
「え?目の前で顔をむしりとんねんで?んで『僕の顔をお食べ』ってそれを差し出してくんねんで?」
「美味しそうやん」
マジか。
ワタシなら目の前でむしり取られた顔の一部がたとえアンパンであっても美味しそうだとは思わない自信がある。めちゃくちゃ空腹ならありがたく受け取って口にするだろうけど、それでも『おいしそう~☆』とはならん自身がある。
「うえぇ~?」
変な声を出しているワタシに構わず子はこうも続けた。
「おもちゃのアンパンマンはアンパンマンやねんで。食べたいとも美味しそうとも思わへんねん。でも、アニメで動いてるアンパンマンはめちゃくちゃ美味しそうでめっちゃ食べたいな~って思って見てた」
捕 食 者 ……
ワタシの頭にその三文字が大きく横切った。
見た目がおっとりしていてとても大人しそうだし、言動も外見に追従しているにもかかわらず、内面はかなり攻撃的なのは知っている。
でも。
それでも。
その攻撃性は身を守るために発動するものであり、まさか捕食対象に向かっていくものまで含まれていたなんてお母さん全くもって知らなかったよ。
その時、テレビ画面にCMが流れ始めた。
アンパンマン関連のおもちゃはなかなかクオリティが高くて、我が家でもよくお世話になったし、ワタシはおもちゃがスキだ。なので、最近のアンパンマン玩具はどんなものかなーと目をやると、まさかまさかのかばおくんだったこの驚き。
まあそれはいい。
だって、アンパンマンを歯磨きしたくても彼には歯が生えていないだろうし、歯が確実にあるけれども、ばいきんまんの歯磨きをしてしまうと、ばいきんまんが溶けてなくなってしまう。消去法でいっても、カバおくんが選ばれるのは当然のことだとワタシだって思う。
いつも困った事になるわけでもないのに、抜群の存在感を放つカバおくん。
バトルシーンでは決して闘うことが無いにもかかわらず、抜群の存在感を放つカバおくん。
カバおくん!
さすが影の主人公!
と思ったのもつかの間。商品説明のページを見たワタシは、カバおくんの扱いにすこし寂しさを覚えたのだった。
カバおくん……
歯磨きを繰り返しするためには仕方がない。仕方がないけれども。
でも「おくちをとじると またむし歯にもどるよ!」
って……。せつない……。
と、これを書いているのを覗いていた子が、たった今、こう呟いた。
「カバおやからな」
かばおくん……
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