見出し画像

手編みの帽子

学生時代のことです。
とある昼休みに男友達と一緒に食堂にランチしに行ったのですが、そこで同級生の女の子が毛糸で何かを編んでいたのを目撃しました。
相席させてもらって「こんなところで編み物してんだ」と声をかけたところ、ニコニコしながら「うん、とっても楽しいんだ!」の返事。
ガイド本のようなものが手元に無く、その手慣れた、軽快な編み棒の動きと速さに見とれてしまいました。
あたしと一緒に食堂に行った友達は「だれにあげんのぉー?💗」でしたが、あたしは「どーやって編んでんのぉー?」でした。
編み棒の動きと毛糸の絡み具合がまるで機械のように正確で一定のリズムで綺麗に編みあがって行くのを「はぁーっ」と感心して見ていましたが、そのうち「え?今んとこどーやった!」とか「もっぺんスローでやってけろ」などとリクエストを繰り返すようになりました。
女の子は嫌がらずにあたしの要求に応えてくれました。本当にいい子です。

あんまりしつこく訊いたもんですから女の子は「あんたもやってみたら?」と言ってきました。

「何を編みたい? 最初は当然簡単なのがいいからマフラー? 手袋だって? 慣れてからにしな。 腹巻でもいいんじゃない? え、持ってるから別の? じゃ帽子なんてどう?」
で、帽子になりました。
「色は? あなた目立たない人だから赤なんてどう? あ、嫌かい。 
何だって? 迷彩? 無理無理、単色にしな。
カーキ色? モスグリーン? 軍服チックが好きだね」
で、濃い緑色にしました。
次の日、女の子が「はいこれ。」と、初心者向けの手編み帽子の編み方が載った解説本を貸してくれ、その後、女の子と昼休みの男友達と3人で、とある手作りホビー材料店に出向き、毛糸、編み棒、かぎ針なんかを揃えに行きました。

最初は試し編みということで、四角い形に編む作業を何度か繰り返し、慣れたところで、本を見ながら帽子を編みはじめました。
ゆっくりと、慎重に、を心掛けたのでスピードは上がりませんし、やっぱり目の数を間違えてほどいたり、まさに「3歩進んで2歩下がる」状態でした。 しまいにゃ学校にまで持っていって、食堂の隅っこで女の子に見てもらいながら編む始末。 「おまえ恥ずかしくないの?」なんて、別の同級生の男友達から言われまくりましたが、そんなの一切気にならず完成に向けて ひたすら編み続けたのでした。

楽しい、本当に楽しい。 夢中になるっていいねぇ 実感しました。
出来はどうであれ、自分で作ったものと言うのは愛着が湧くもんです。
学生の頃は、冬になるとそればっかり被ってました。
「恥ずかしいなおまえ」と言ってた人たちも、もう何も言いません。
関心がなくなったのでしょうね。

編み物に誘ってくれた女の子にはホント感謝です。
その子が実は今の妻…  というオチではありません。

その帽子は社会人になってからもしばらく被っていましたが、いつのころからか押入れにしまい込んでしまって存在を忘れていました。

で… 探したら出てきました!
↓ これです!

学生時代のヤツ

どぉーです! 手作り感満載でしょ。


今の妻と結婚したての頃、「オレ毛糸の帽子編んだことあるんだぜ」と自慢したら、「じゃぁ編んでみなさいよ」ということになって、最初の帽子から10数年ぶりに手編み帽子を編み始めたのでした。
妻が「私も編んでみよう」となって、競争するかのようにやはり帽子を編み始めたのでした。
妻が実は編み物得意の人だったって、その時はじめて知ったのです。
あたしは都合2週間ぐらいかかったのに対し、妻は3日ぐらいで、しかも網目がなんか模様になってるのを作ってしまいました。
いゃー 敵いません!

 これがその結果です。

 左:あたしの2作目  右:妻作

これ以降、編み物してません。

#エッセー
#雑記

この記事が参加している募集

#創作大賞2024

書いてみる

締切:

よろしければサポートお願いします! 頂いたサポートはクリエイター活動費として有意義に使わせていただきます。