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今日の科学 7月2日

1906年7月2日は、物理学者ハンス・ベーテが生まれた日。
彼は、多くの業績を残しています。その中でも特に知られているのが、「恒星内部のエネルギー生成」についての論文です。この論文では、恒星の内部で起こる核融合反応が恒星のエネルギー源であることを示しました。

夜空にはたくさんの星が輝いています。なぜ、星は輝いているのでしょうか。1920年代には何らかの原子内部で起こる現象が関係しているのではないかと考えられるようになりましたが、具体的なしくみはよくわからないままでした。

この問題に立ち向かった研究者の1人がハンス・ベーテでした。彼はも原子核の研究をしていて、恒星のエネルギーについてはあまり関心がなかったといいます。しかし、1938年4月に物理学者ジョージ・ガモフが呼びかけた会議に参加することで、大いに関心を寄せるようになりました。

彼はすぐに天体物理学を学び、翌年には水素原子核からヘリウム原子核をつくる反応を考察する最初の論文を書きました。この論文では、炭素(C)、窒素(N)、酸素(O)のそれぞれの原子核を触媒にして、4つの水素原子核(陽子)からヘリウム原子核をつくるCNOサイクルを導き出しました。

しかし、CNOサイクルは、恒星の中でも重いグループで起こる現象で、太陽のように比較的軽い恒星のエネルギー源の説明はできません。ベーテはチャールズ・クリッチフィールドと4つの陽子だけでヘリウム原子核をつくるppチェインについての論文を書き、太陽の内部で起こる核融合反応を明らかにしました。

ハンス・ベーテは第二次世界大戦中、ロバート・オッペンハイマーからロスアラモス研究所の初代理論部長を任され、マンハッタン計画に深く関わっていて、映画「オッペンハイマー」にも登場します。映画を見る方は、そのあたりに注目してもおもしろいと思います。

ベーテの「恒星内部のエネルギー生成」についての研究は、星の一生を考えるうえでとても大切な成果です。さらには、超新星爆発、中性子星、ブラックホール、ニュートリノなど、様々な研究に大きな影響を与えました。その功績により、1967年にノーベル物理学賞が贈られました。

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