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フランスで、臨月のお腹を抱え、君たちはどう生きるかを見て。(前編)

宮崎駿監督の最新作、君たちはどう生きるかを観てきた。

水曜日は、夫が息子の送り迎えを担当してくれているので
14時から上映の回を、1人で観に行くことにした。
この作品を観るのに、私には少し、否、かなりの葛藤があった。
前編では、その謎の葛藤を書く。

なんなら夏の一時帰国の時に観に行けたのだが、監督82歳の、もしかしたら最後になるかもしれない長編だ。
公開されたポスターにも問題があった。私にとって好きなモチーフである青鷺が、線画で生々しく描かれたポスター。
心を惹かれすぎて怖かった。
前作の風立ちぬより、絶対に心を持ってかれるという予感がした。

という理由と、妊娠中期だったのもある。安定期に入っているとは言え
ジブリ作品は私の心の増強材のようなところがあって、平穏に過ごすべき時には、無闇に摂取してはいけないものという気持ちがある。
辛い状況にいる時や、道に迷った時に見るものなのだ。
この夏、私は非常に落ち着いて一時帰国を楽しんでいたし、この作品を観たことによって、やたらに感動したり、何か思い立って始めたりしてはいけない時期だと自分に言い聞かせていた。


そんな中、お互い大のジブリ好きを認めている高校時代の友人と、帰国時に長電話をした。(ちなみに、彼女はSNSを敢えて全くやっていないので、連絡はアナログな方法のみで、帰国時の長電話と、手紙のやり取りのみだ。)

もちろん公開早々、観に行っていた彼女。1度観ただけではわからないけど、絶対に映画館で観た方がいいよと半ば脅しのように言っていた。
そんな彼女に私は、「今は観る時ではない気がするんだ」と話した。出産を終えて、落ち着いて時間がある時に、スペシャルなご褒美としてゆっくり堪能することにしようと思いながら、電話を終えた。

なぜ観ることに決めたかというと、魔が刺してしまったから。とでも言おうか。というのも、息子のバカンス中に映画館にパウパトロールという子供向けの映画を観に行った。朝から珍しく雨で、出かける間際、母から着信があった。祖父母の四十九日の法要のために親戚が集まっていて、母や叔母とビデオ通話をしていたらバスを一本逃してしまった。

上映時間ちょうどに映画館に到着してみると、いつもは全くない長蛇の列。
バカンス中はこんなに混むんだな。と、びっくりしながら列に並ぶも
私たちの10人程前で、パウパトは満席に。がっかりする息子。
他の子供向け映画は観たく無いというので、せっかくきたけど引き返すか〜と思った矢先、魔が刺してしまった。
Le garçon et héron(仏タイトル少年と鷺)の看板が目に入ってしまったのだ。

長蛇の列には、公開してすぐのこの映画を求めて並ぶ人たちも混ざっていた
のだ。

私は息子には絶対に早すぎるけど、こんな絶好のチャンスある?と
悪魔の囁きのように、考えが止まらなくなってしまった。
結局、息子が怖がったら直ちに帰るんだ!と決めてチケットを買った。

上映室に入ると、映画はもう始まっていて、ほぼ満席状態だった。
前の1列しか空きがなく、一番前の端っこにそそくさと座ったが、小学校高学年くらいの女の子2人が真ん中の方に向かって詰めてくれて、どうぞと手で招いてくれたので、おずおずと少し真ん中に寄って息子と鑑賞スタート。

会場は観客の真剣さが、伝わってくるような静けさで、ポップコーンを
食べる小さな音だけが聞こえる位だった。

私たちが見始めたのは、冒頭の空襲のシーンの後からだったので
息子は田舎の学校の風景や、青鷺や鯉やカエルのシーンくらいまで
大人しくしてくれていた

しかし、夏子を追って、塔にたどり着くあたりで、廃墟の塔の中に入っていく感じが怖かったのか、「ママ、怖い。お家帰ろ。」と言い出したので
OK、帰ろう!と即座に息子の手を取って席を後にした。

そして、その後、もう頭の中は駿ワールドだ。
止まらない、やっぱりどうしても観たい欲。
禁じ手のネタバレの記事や動画にも手を出してしまった。
(でも結果的に、これは良かったと思う。)

長くなってしまったので、後日1人で見に行った際の話は次回に。
ちなみに昨日見に行ったので、今日は使い物にならない。
頭はまだジブリでいっぱいだ。



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