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デジタル化はディストピアへの入り口

デジタル化の行きつく先はディストピア(反理想郷)であり、これを阻止するために努力しなければ人間は退化するだけでなく、悪い精神状態を生み出すリスクがある。

産業の成長はモノやサービスを増やすフェーズから、モノやサービスを効率的に届けるフェーズにシフトしている。デジタル技術や人工知能技術はそのために不可欠なテクノロジーとして活用されている。いわゆるDX(デジタルトランスフォーメーション)である。

DXは大きく二つの方向性がある。一つはコスト削減である。コールセンターの業務効率化、集客戦略の効率化、工場の自動化など様々な形でDXが進んでいる。

もう一つは、顧客維持のためのテクノロジーとして現れる。例えば、SNSやECは、顧客に利用を継続されるためのあらゆる仕組みが組み込まれている。

次から次へと顧客好みの画像、動画、広告、商品の提示。イイねによって顧客が喜ぶ仕組みなど。最近では脳科学を駆使することによって、人間の報酬系(うれしいと思う感情を引き起こす脳回路)を誘導するための仕組みを研究することによって、顧客がサービスから離れられない状態を作り出している。TikTokやYouTube shortsのフリックが止まらない人もいるのではないだろうか?これらは人が欲しい情報をタイムリーに効果的に提示する仕組みによって誘導されているのだろう。

SNSやECなどのプラットフォームサービスは顧客の維持、いわゆるライフタイムバリュー(LTV)を最大化することが企業の目標になっている。企業の価値を最大化するためには、ある意味正しい製品開発を進めているのだろう。人々のSNS依存やスマホ依存が問題になっていることもこういった”企業努力”の結果である。いわゆるゲーム依存は、報酬系が暴走することによってゲームから離れられなくなる状態である。SNS依存やスマホ依存はこの状態に近い状態であることが推測される。

技術の進歩はこの状態をさらに加速する。最近はやりのメタバースは一例である。

メタバースは顧客維持のための最大の仕組みを作ることができる可能性がある。リアルなバーチャル空間に入り込むことで、脳への刺激が非常に強い状態を作り出し、脳の報酬系を刺激してバーチャル空間から離れられない状態をつくることができる可能性が十分にある。(メタがFacebookからメタバースにシフトしたのはこれが目的ではないか)

技術進歩は人々の生活を豊かにし、楽しみを与えるとともに、これらの製品・サービスを供与する企業の価値を最大化していく。一方で、人々の精神状態を操り、依存状態を生み出すリスクも増加している。

すべての企業は、こういったリスクを理解し、意識したうえで製品開発を進めなければ、ディストピアに自動的に向かっていくだろう。

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