三十五杯目「記憶のカメラ、カメラの記憶」
「そういえば、お前に似た東洋人を乗せたことがあるよ」
多分、運転手はそんなことを言った。
何もない荒野を一直線に走る。生命を否定する風景。それは古い旅行鞄の中にしまわれていた。だから、今は地面や空だけが残っている。
「いつもカメラを抱えていたっけ」
揺れる国境。
線を引く。
写真と日記から生まれる言葉。
焦点距離を変えないといけない。
近づくにつれ、僕はだんだん子供になっていく。
「また会えたね」
毎週末の朝、珈琲を飲んで浮かんだ散文をお届けします。
優しい朝を迎えましょう。
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(四月一)
君は友の、澄み切った空気であり、孤独であり、パンであり、薬であるか。みずからを縛る鎖を解くことができなくても、友を解き放つことができる者は少なくない