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無職で世界一周中。27歳で仕事を辞めたぼくが見つけた、人生を豊かにする法則

「後悔したくない」。
それは、誰しもが普遍的に持っている価値観ではないでしょうか。しかし、世間体を気にしてしまったり、ライフステージが変わるなかで迷ってしまったりと、自分の気持ちに素直に従って行動に移せる人は少ないはずです。

今回インタビューしたのは、30歳を迎える直前にすべてを手放して世界一周を決意された、にしきよさん。

大学院への進学、就職を経験し、順風満帆な人生を歩んでいたにしきよさんは、以前は海外に行く人を見て「そんな無駄なことをして何になるんだろう」と思っていたそうです。そんな彼がなぜ、「世界一周をしないと後悔する」という考えに至ったのでしょうか。

現在(2023年)も旅を続ける彼に、世界一周を決断したきっかけや、今感じていることを伺いました。

にしきよ
1991年生まれ。2016年に大学院を卒業後、電機メーカーの開発部で働き始める。「後悔しないように生きたい」という想いから、2019年より世界一周の旅をスタート。東南アジア→インド・シルクロード→ヨーロッパ→アフリカの旅を終え、現在(2023年)はアメリカ大陸横断中。旅の様子を精力的にSNSで発信している。
ブログ:https://nishikiyo-world.com/
X:https://twitter.com/nishikiyo_world
Instagram:https://www.instagram.com/nishikiyo_world/

海外に興味がなかったぼくが、世界一周をすると決めた理由

出発時のにしきよさん

ーー現在さまざまな国を巡っているにしきよさんですが、なぜ世界一周をしようと思ったんですか?

にしきよ:
実は学生のころは、「海外に行ったところで何も残らないのに、どうして行くんだろう?」と疑問に思っていました。形に残るわけじゃないし、無駄なことなんじゃないか、って。

それが覆されたのが、仕事でタイへ2ヶ月間出張に行ったときのこと。 飲食店があまり綺麗ではなかったり、時間にルーズな人がたくさんいたりと、日本とはまったく違う生活や習慣に驚きました。

コンビニの店員さんが、イスに座ってスマホを触っていたことにも、かなり衝撃を受けましたね(笑)。 

そこで、自分がこれまで生きてきた世界の狭さを体感し、「自分が知らない世界をもっと知りたい」と思うようになりました。それと同時に、「世界を自分の目で見ることは、きっと人生において素晴らしい価値になる」とスイッチが入りましたね。

そこからはできるだけ国を巡ろうと、年末年始やGW、盆休みを利用して、タイやカンボジア、中国などを巡りました。社会人1年目にして17日間連続で休暇を取ってパキスタンに行き、周囲をドン引きさせたこともありましたね(笑)。

17連休を取得して訪れたパキスタンでの写真

ーーそんなことが! 会社員として働きながら海外を巡るのは、とても大変そうですね。

にしきよ:
そうなんですよ。やはり会社員だと、まとまった時間の確保をすることが難しいんです。どんなに頑張っても、1年でせいぜい5カ国程度しかまわれない。

でも、世界の国の数は200ヶ国近くもあるんです。このままのペースでは見たい国をすべて回るのに何十年もかかることがわかったので、ここで一度会社を辞めて、一気にまわってみようと決断しました。往復の飛行機代を考えても、それが1番効率的なんじゃないかと。そう決めたのが2019年のこと。社会人4年目、27歳のときでした。

ーー27歳といえば、今後のキャリアにとっても大切な時期だと思うのですが、会社を辞めるときに葛藤はありませんでしたか?

にしきよ:
もちろん、いっぱい悩みましたよ。でも、挑戦したい気持ちとキャリアを天秤にかけたときに、「今しかない。思い切って追い込んでみよう」と腹を括りました。

…と意気揚々と出発してから半年で、コロナウイルスの感染拡大で一時帰国することになっちゃうんですが…。

ーーたしかに、しばらくは家からも出られない状況となりましたよね。先の見えない世の中で、世界一周を継続することに不安を感じませんでしたか?

にしきよ:
やっぱり葛藤はありましたね。当初、コロナは1年ぐらいで収束すると思っていたのですが、次第に長引きそうだとわかってきたときは苦しかったです。もともとは、30歳になる前に世界一周を終えて、再び仕事をしようと考えていたので。

でも、自分のなかで「世界一周を完遂すること」は、人生における大きな決断だったので、それを諦めることは考えられませんでした。ここで諦めると「一生後悔する」と。

だから、「今は勉強の期間だと思って、時間を有効に使おう」と前向きに捉え、旅先の知識や世界の歴史、宗教、哲学などを学びました。

ぼくは、「人とは」「幸せとは」「生きるとは」を考えることにとても興味があったので、 それらのヒントを得て旅をもっと豊かにできたらと思い、勉強していました。

「自分はすでに幸せだった」旅をしたからこそ知った事実

ーー世界を旅するなかで、実際にどのような価値観の変化がありましたか?

にしきよ:
国を訪れるたびに新しい発見があって、価値観が揺さぶられるような体験をしています。なかでも、特に東南アジアの旅では、自分の価値観がかなり大きく変わりましたね。

東南アジアの人々は、経済的には日本より貧しいはずなのに、みんな幸せそうなんです。

彼らの生活を見たり、自分も彼らに混じって体験したりするなかで、「幸せになるために多くのものは必要ない」と気がつきました。そして、お金では絶対に買えない健康や家族の大切さにも。

カンボジアの子どもたち

自分はたまたま日本に生まれただけで、それは自分の実力でも何でもありません。大学に進んで勉強できることは当たり前ではないんですよね。何事にも感謝の気持ちを持てるようになりました。

あと、ヨーロッパやアフリカでの経験も自分の価値観を大きく変えました。「アジア人だから」と人種差別用語を言われたり、石を投げられたり…。でも、そうやって差別を受けて嫌な思いをしたことで、「自分も無意識のうちに、肌の色で人を区別していたのではないか」とも感じて。

人は差別される側にも、する側にもなってしまう。自分の思いを俯瞰したときに、差別の問題は根深く、簡単には取り除けないものだと再認識しました。

旅の目的は「価値観を広げること」。そこへの投資は惜しまない

ーーここまでお話を聞いていると、お金には代えられない素晴らしいご経験をされていると感じます。一方で、にしきよさんは無職で旅をされていますが、お金の管理はどうされているのですか?

にしきよ:
貯金を切り崩しながら工面しています。世界一周にかかる費用は、年間約150万円が目安と言われているのですが、ぼくはバックパッカースタイルで旅をしているので比較的お金はかからないほうです。

あと、ぼくは旅をするうえで「何にお金を使うのか」を決めています。ぼくの旅は「価値観を広げたい」が軸にあります。なので、伝統的な場所や博物館を訪れるなどの、現地でしかできない経験に対してはお金を惜しまない。その代わり、宿や移動手段にはお金をかけないようにしています。

ケニアでの移動もタクシーは使わず、ローカルバスで

ーーご自身で節約するポイントを決めているんですね。とはいえ、お金が減っていくことに不安を感じませんか?

にしきよ:
不安はありませんね。ありがたいことに、周囲の人や家族が応援してくれているので、「お金がなくなったら、最悪実家に戻ろう」ぐらいに考えています。
実は、家族からも少しお金を借りているのですが、「今しかできないことに投資すること」が何ごとにも代えがたい価値だと思っているので、今は頼らせてもらいつつ、未来にしっかり恩返しをしていきたいと思っています。

ぼくの心の拠り所になっている家族には、本当に感謝しかありませんね…。その気持ちを伝えたいし心配もかけたくないので、自分の様子を発信しようとブログやXを始めました。言葉で直接伝えるよりも、書くほうがうまく気持ちを伝えられるので積極的に発信しています。

「悩みながらも踏み出す」と、人生は豊かになる

ニューヨークの街並み

ーーご家族の存在が、にしきよさんのチャレンジを後押ししてくれているんですね。ところで、世界一周はあと半年で終わりを迎えるそうですが、その後にやりたいことはありますか? 

にしきよ:
それが…ないんですよね。

ーーえっ、ないんですか!?

にしきよ:
うーん…。前職がエンジニアだったので、世界一周後はおそらくまた日本でエンジニアとして働くと思います。

世界一周の経験をもとにした仕事がしたいとは、実はあまり考えていなくて。ただ、まだ道半ばではあるので、これから考えが変わるかもしれないし、「まだ可能性がいろいろ残されている」と思っています。

ーーまだ可能性がいろいろ残されている。にしきよさんのお話を聞いていたら、私も「何かやってみたい」という気持ちになってきました!

にしきよ:
「悩みながらでも踏み出す」のが人生においては大事かなと。

ぼくも不安を抱えながら一歩を踏み出しました。コロナで足止めもされましたが、それでも前を向いて、諦めずに努力をしていました。その結果、今では「世界一周の経験が無駄になることは絶対にない」「人生が豊かになる経験ができた」と言い切れます。

ガンジス川(インド)で沐浴をしている人々

ーー言葉に確信が満ち溢れていて、素晴らしいです! 最後に、挑戦することに踏み出せないと悩んでいる人たちに、何かアドバイスはありますか?

にしきよ:
まず、キャリアや安定した生活などを「捨てる」ことは必要かと思います。
とはいえ、すべてを手放すには勇気がいりますよね。そんなときに心の支えになるのが、何かしらの「スキルを持っている」こと。ぼくの場合は、「帰国したらエンジニアとしてまた働ける」と思えたのが大きかったです。

実際に、旅をしていて出会った人も、元看護士など、手に職がある人が多かったように感じます。今のキャリアは捨てても、またそこに戻れるだけのスキルを持っておくのは、挑戦を後押しする材料になるはずです。

あとは、人に頼ることも大切です。先ほども言いましたが、ぼくにとっては家族の存在が拠り所です。仮に、身近な人が理解してくれなかったとしても、挑戦の理由をしっかり説明して、理解してもらえるように努めていたと思います。

支えてくれる状況があることで、未来に向かってアグレッシブになれる。だから1人でも多くの人が、自分のことを応援してくれる環境をつくっていけたらいいですね。

パパイヤビレッジ(タイ)の宿で出会った方々

にしきよ:
最後にお伝えしたいのが、すべての経験を必ずしも何かに繋げようとしなくてもいい、ということ。

ぼくも世界一周を仕事にしようとは思っていませんが、新たな挑戦は、形には残らなかったとしても、「自分の人生を豊かにしてくれた」と思える経験になるはずです。

現時点で、自分の選択が正解かはわかりませんでも、その不安を自信に変えていけるように努力をすると決めて、悩みながらも一歩踏み出してほしいです。

〇 〇 〇

今回のにしきよさんのインタビューを通して気づいたことがあります。それは、「不安は誰しも持つもので、否定する必要はない」「まわりの目や言葉を理由にチャレンジを躊躇することは、自分の不安を隠すためのただの言い訳かもしれない」ということです。

どんな状況でも、ポジティブに変換して捉えられるにしきよさんの言葉に勇気をもらえるインタビューでした。

残り約半年で世界一周を終えられる予定のにしきよさん。今まで彼が見てきたものや感じたことが綴られているブログXを読むと、なぜ彼がここまで「自分の人生が豊かになった」と言い切れるのかがわかるかもしれません。

ぜひ一度、訪れてみてください。

〈取材・文=じんさん(@appoko_j)/編集=いしかわゆき(@milkprincess17)〉


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