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『お金』のことを知らない私たち

小学生の頃から算数が壊滅的に苦手で仕方がなかった私は、「絶対に数字に囲まれた仕事には就きたくない」と思って生きてきました。それにもかかわらず私は、はじめての就職は金融機関、転職した今は経理と総務の仕事をしています。

それでも私がこれからも、こういった仕事に携わっていきたいと思っているのは、数字ではなく『お金』との付き合い方を学びたいと思っているからに他なりません。

『お金』のことを知らない私たち

お金があれば必ず幸せになれるなんて思ってはいないけれど、お金は私たちの生活にとって欠かせない存在であることに異論はありません。

銀行にお金を預ければ、利息でお金が増える時代など知らずに生きてきた平成生まれの私たち。営業を行っている際に『今は預けるのもバカバカしい程の利息しかつかないのね』なんて皮肉を言われたところで、いまいちピンと来ないのが正直なところでした。

そもそも日本では、これまでお金の勉強というものがなされてきませんでした。それまで私が周りの大人からお金について教わったことといえば、「無駄遣いはしてはいけない」「しっかり貯金をしなさい」なんてことくらい。

私たちは意外と『お金』のことを知らずに生きているのです。

漠然と抱く将来への不安

金融機関で働きながらお金について学び、お客さまの資産形成のご提案を重ねるうちに、私は自分自身の将来や資産形成について、漠然とした不安を抱くようになっていきました。

昔と今とでは、経済をとりまく状況がすっかり変わってしまいました。少し前に、老後の2,000万円問題が話題になったこともありましたが、想定外に少子高齢化が進んだ今、きっちり掛けていれば安心だと言われていた年金さえも、果たして私の手元に戻ってくるのかという不安を拭えません。日本は既に、個々人が真剣に『お金』と向き合わなければいけない状況に立たされているのです。

そんな不安を抱いているのはきっと私だけではないはずで、最近では、個人型確定拠出年金のidecoの加入者が激増しているというニュースをよく目にするようになりました。さらに、小学生のうちから投資の勉強をさせる動きも見られているといいます。

そこで私は思ったのです。そもそも子供たちに投資を教える立場である私たち自身が、『お金』についてもっと学んでいかなければいけない状況にあるのではないかと。

現実を自分ごととして受け入れる

先ほども述べたように、昔と今とでは社会が大きく変わってしまいました。

定年を迎えれば、年金を貰ってセカンドライフを楽しもう。そのためにはいい大学を出て、いい会社に就職しなければならない。そうすれば安心して一生を終えることが出来る。そんな社会は、既に崩壊しつつある現実を、私たちはまず自分ごととして受け入れなければなりません。

こんなことをいえば、心配しすぎだと言われてしまうかもしれないけれど、そんなサクセスストーリーが夢のまた夢になってしまいそうな現代において、もしかすると私は、終身雇用ならぬ『終身労働』を強いられることになるのではないかと思ってしまうことさえあるのです。

今の若者は仕事よりもプライベートを重視しすぎるだなんて言われることも多いけれど、元気なうちはずっと働く、といった意味での終身労働を前提として考えるのならば、仕事に全てを捧げるのではない適度な距離感での働き方を模索したくなってしまう気持ちも、少しは理解されてもいいような気がしてしまいます。

一体それが、お金となんの関係があるのかと思われるかもしれませんが、働き方が変われば、これまで整えられてきた『お金』への仕組みも必然的に影響を受けることが予想できるわけです。

年金の受給年齢は徐々に引き上げられていますし、長期雇用を前提とした退職金制度も、年功序列制が見直され、成果報酬に切り替える企業が増えていけば、今後どうなっていくのか分かりません。

そうなれば、多額の退職金を見込んだローンの返済なんていうライフプランニングは、これからの時代には当たり前ではなくなっていくのかもしれないのです。もしかすると、家や車などの資産を持たないことが主流となっていく可能性もあります。

お金を稼いだり、貯蓄したり、運用したり。時代の変化と共に私たちは、ライフステージに合わせた資産形成の方法について、もっと様々な選択肢を積極的に学ばなければいけないのではないでしょうか。

お金について学ぶ

だから単純に、お金について学び、向き合うことが必要だとはいっても、ここぞとばかりに株や投資信託の勉強をすればいいのかというと、そうではないと私は思うのです。

投資信託や株というのは、お金を生み出す術のうちのひとつの手段でしかありません。いまや主流となってきた副業や、少しずつ受け入れられるようになっているクラウドファンディングも、お金を生み出す術のひとつですよね。

結局、「支出を削る」こと以外でのお金の生み出し方というのは、自ら学ぼうとしなければ知ることはできないように思います。

同じ投資をするにしても、NISAを利用すれば非課税の枠を利用できるし、現金だけではなくて、ポイントで始められる投資も見かけるようになりました。個人型確定拠出年金のidecoは、所得税の節税もできる商品ですが、これも手元のお金を生むひとつの術といえるでしょう。

最終的には、数ある選択肢の中から自分に合った制度を利用して、お金と上手く付き合うことができるようになるのが理想ですが、それにはメリットだけではなくデメリットもきちんと学び、理解することが大切です。

お金、そして将来と向き合う

少子高齢化が進むこの国では、若者に頼れない未来がやってくるのもそう遠くはないのでしょう。
お金についての選択肢を学ぶことは、どこか他人事だったこれからの自分の将来に、自分で責任を持つことに繋がるような気がしています。

この情報化社会において、お金について「そんなこと誰も教えてくれなくて、知らなかった…!」なんて言葉で済ませてしまうのは、どこか泣き寝入りでしかないように思えて仕方がありません。

私自身、そもそも金融機関に勤めていなければ、こんな不安を抱くことも、お金のことを知らずに生きている事実さえも知らなかったのではないかと思うと、今はそれだけでゾッとしてしまいます。

だから私は、金融機関を辞めた今でも、私なりにお金と向き合いながら暮らしています。特別必死に勉強しているわけではないけれど、なんとなくでも新聞の経済欄に目を通したり、気になったワードは後からじっくり調べてみたり。

「自己投資」なんて言葉もありますが、世の中が変わり始めている今だからこそ、私たちはもう少し『お金』と向き合う時間を増やしてみてもいいのではないでしょうか。

自分の将来に備えることももちろんだけど、もし自分に子供ができたとき、私はきちんとお金のことも教えてあげられる大人でありたい。

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