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この1冊が文章と向き合うきっかけをくれた

文章を書くのが上手になりたい…!と思う一方で、私は「文章を書くこと」について書かれた本を読むのが苦手だった。

というのも、これまで手に取ってみた本のほとんどが、アクセス数だとかSEOライティングだとかいう視点から「読まれる文章」を書くことについて述べたものが多く、読んでいてもあまりしっくりこなかったのだ。

もう少し「モノを書くこと」そのものについて学べる本はないのだろうか。そんなときに出逢ったのが、noteユーザーとしても有名な古賀史健さんの著書だった。

この記事では、著書の内容で勉強になった部分を簡単に紹介していこうと思う。

■起承転結ではなく、起転承結

読者が自ら歩み寄ってくれるような「納得」は課題の「共有」によって生まれる。コンテンツに必要なのは①課題設定②課題共有③課題解決の流れである。読者を論破し説得するのではなく、読者が「自分ごと化」できる納得という要素が必要だ。

共感できない文章は、途中で読まれなくなってしまう。起承転結の「起」の部分で書かれる世間で常識とされていることを「転」で早々にひっくり返し、早い段階で読者に共感し、納得してもらうことで、読者に「もっと読みたい」と思ってもらうことができる。

■構成力は何を書かないかで考える

ライターを取材者と定義した場合、取材で得た原稿をもとにライターは、原稿を書く。取材によって100に知見を得て、10のことを書くということだ。そこで役に立つのが「なにを捨て、なにを残し、どうつなげるか」という絵本的思考である。

たとえば、桃太郎のお話を考えた場合、10枚だけイラストを入れるとしたらどのシーンを描くか。そして、なぜそのシーンをイラストにしたのかをきちんと答えられるようにする。勘やセンスとして片付けてしまうのではなくて、自分でそれを答えられるように訓練することで、「なぜ、この構成になるのか」を言語化できるようになる。

■コラムとエッセイはどう違うのか

コラムとは、人物、モノ、事件、世相など、主に時事ネタを対象として「評し、論じる」巻き込み型の文章である。一方でエッセイは、自分の内面にある自由気ままな想いを描いたもので、多くの場合、「外部のなにかと触れたことで生じる内面の変化」を描いていく、巻き込まれ型の文章である。

もっと簡単にいえば、主観だけで語ることはせず、客観の事実を交えながら論証するように対象を読み解いていくのがコラムであり、日常と地続きの風景で、事件や騒動に「巻き込まれたわたし」を語るのがエッセイである。エッセイのように自分ごとの文章を自分以外の読者に面白く読んでもらうことは、コラムのように論理という軸がないからこそ難しい。

筆者は「論理的文章」の対義語を「感覚的文章」だという。感覚とは、直感や感性のことでもあるし、視覚や聴覚などの五感のことでもある。わたしにはこう聞こえる。わたしにはこう見える。そんなわたしの感覚に根差して語られる文章が、エッセイの基本であり、感覚的文章の根底には、徹底した「観察」がある。

感受性にすぐれた観察者__つまりは取材者__としての日常があるからこそ何かを見つけることができるのだ。

辞書でいうところの論理的の対義語は感情的であるが、「感情的な文章」というのは、何も観察しようとはしない。自分の内面にしか関心がなく、感情のことばを吐き出して、「わたし」への共感や賛同を強要しようとする。エッセイストたちは、みずからが観察したもの(自分を含めて)を克明に描写するからこそ、そのていねいな情景描写が、心象風景とシンクロしていくのだ。

■コンテンツの魅力

魅力ある文章表現に大切なのは「リズム」「レトリック」「ストーリー」である。

「リズム」とは、句読点の打ち方や文末表現、改行のタイミングや漢字とひらがな・カタカナのバランスなどであり、これらが原稿全体で統一されていないコンテンツは、リズムが悪くて読みにくい。

「レトリック」とは想像力に補助線を引くものであり、その中核となるのが「比喩表現」である。アリストテレスによれば、比喩には「才能」や「生来の能力」が必要であり、他人から学ぶものではないのだという。すぐれた比喩をつくることは、類似を見てとること。つまりは、些細な感情の記憶を日々ストックし、感覚的比喩を磨いていくことが必要である。

そして「ストーリー」とは結末までの距離である。起承転結を4部構成として考えるのではなく「起と承」「転と結」の2部構成で考えて、1部と2の間に「転」が入るイメージを持つと良い。

■まとめ

この本は学ぶべきことが多くて、正直1,500字にはまとめきれない。この記事で書いたことはほんの一部でしかなく、手元において何度も何度も意味が理解できるまで読み込むべき1冊なのだとも感じた。

誰もが自由に文章を書き、気軽に発信ができる時代で、プロと呼ばれる人たちは、こんなにも色んなことを考えながら文章と向き合っているのかと思うと、自分ももっと貪欲に自分の文章と向き合わなければならないのだと思い知らされた。

少し分厚い本ではあるが、本当に勉強になったので、気になった方はぜひ一度手に取ってみてほしい。きっと私のように、自分の文章と向き合うきっかけを掴めるはずだから。

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