ショートショート「伝統の技」

ショートショート「伝統の技」

人類が宇宙に進出してから千年近くが過ぎていた。
有力な植民地はそれぞれ独立し、地球を盟主とした宇宙連邦を形成し
ていた。

そんな惑星の一つ、地球から数千光年離れた辺境の星、惑星ダイタロ
スも比較的歴史が古い植民星で連邦のメンバーであった。

さて、ある日の事……ダイタロス宇宙天文台は未開の宇宙空間から、
微弱な通信をキャッチした。

「こちら、第12次宇宙植民船団の生き残りの子孫だ。ダイタロス・・
応答を願う」

ダイタロスは騒然となった。ダイタロス自身も過去に領地を広げようと
植民船団を宇宙に送り出している。不幸な事にそのいくつかは遭難し、
行方不明になっている。第12次船団も行方不明となっていた。

「数百年かかってやっと船の通信システムだけ復帰する事に成功した。
だが、現在われわれが生活している惑星は資源が乏しく、気候も劣悪だ
……。援助を請う!」

ダイタロスは数百年ぶりの同胞からの通信に大いに驚き、また喜んだ。
とりあえず、鉱物資源や物資を満載したロボット船団を発信源の星に送
りこんだ。

……ロボット船団が目的地に達する前に忽然と消えたのは出発してから
数日後の事である。

ダイタロスは早速、宇宙連邦警察を呼び、この事件の調査協力を求めた。

宇宙連邦警察は開口するなり、
「あー、よくある手口ですね……。いまだにひっかかるんですよね」

ダイタロス担当官は驚き、尋ねた。
「え、どういう事でしょう……」

「ご存知ないですか。遠く20世紀からある手口で、こういうの
 オレオレ詐欺
 っていうんですよ」

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ところで、「母さん助けて詐欺」って呼び名、普及してんですかね・・?




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#ショートショート #小説 #SF #SF



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