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SIX HACK 検証 /感想、考察

やられたなと思いました。

〇所感

SIX HACKの第4回放送が休止となった6/9、私は混乱の中でnoteを書き殴った。

読んでいただけると早いが、詰まるところ判断しあぐねていたのだ。
嘘か、真実か。
だってあの大森氏だし、あの恐山氏だし、だけどテレ東だし、地上波だし...
あーもう何も分からない、とにかく続きが観たい、真実が知りたい。
インターネットで調べれば調べるほど様々な意見が出てきた。
Twitterも、Togetterも、まとめ記事も、それこそnoteにも、「仕込みだ」という人もいれば「本当に休止したんだろう」という人もいた。
どちらの示す根拠も最もらしく思えたし、また詰めが甘くも見えた。
最重要参考資料であるアーカイブも閲覧出来ず、公式Twitterアカウントと番組ページをチラチラと覗いてヤキモキし、1週間が経った。
「SIX HACK #4」、否、「SIX HACK 検証」が公開された。

※以下、「SIX HACK 検証」を視聴済みであることを前提とした内容になるため、ネタバレを避けたい方はご留意いただきたい。

動画が終わった時、スタッフ一覧が表示された時、何を思いましたか。
私は悔しかった。
めちゃくちゃに踊らされた。完全に掌の上だった。
そして、そうやって踊らされたことを心底良かったと思った。
あんな心乱されたnoteまで書いて、ここに真実があると信じて動画を再生した私が客観的に見てアホ過ぎるし、そういうアホをしてこの作品を正面から楽しめたことを心から良かったと思う。

ホラーというエンタメにおいて、ついてまわるのが“リアリティ”に対する問題だ。
ホラーに触れてこなかった人、慣れていない人と何かの折にオカルト話をすると、度々「それって本当の話?」「そんなのいるわけない」と言われることがある。
ここは本当にデリケートな問題で、私はこれに対する正しい解を未だ持てずにいる。
ホラーはその曖昧な実存性を楽しみ、疑うことをキモとしているわけである。
幽霊、悪魔、その他人智を超えた存在が「いる」から怖いのではなく、「いるかもしれない」から怖いのだ。
ホラーをテーマにした作品を楽しむのは、「いる」と信じているからではなく、「いるかもしれない」と信じさせてくれるその体験を得、その手法に舌を巻きたいからなのである。
そしてその「いるかもしれない」に限りなく特化した“モキュメンタリー”という手法が近年かなりの人気を誇ることは、あまりに自然な流れと言わざるを得ないだろう。

話は大森氏の「このテープ持ってないですか」に移る。
出演者らが昔のバラエティー番組を見ていくうちに、現代と過去のスタジオ双方に異変が起こり、結局その全容は明かされないまま終わる...これを全3回に渡って放送した番組だ。
構成の梨氏は「いるかもしれない」を読み手に強く感じさせる怪談を得意とする作家であり、番組でも今までの作風を感じさせる部分が随所に見受けられた。
さて、その「このテープ〜」の放送後、私個人がSNS等で見かけた感想の中に、こんなものがあった。
「過去のVTRが本物に見えない」
私は年齢の関係で作中のバラエティー番組の元となったであろう年代のテレビを見たことは無い。そのため、この指摘が妥当かどうかは判断出来ない。
だが、この意見は「いるかもしれない」作風であったが故に色濃く出てしまったとも言えるだろう。
限りなくリアルに近づけた結果、ほんの少しでもズレているとそこが目に付いてしまう。
またこの番組は放送に合わせてWikipediaとニコニコ大百科に関連される項目がたてられている。
恐らく番組関係者の仕込みと思われるその項目は、架空の情報を扱っているとしてWikipediaからは削除されてしまい、一部で賛否が起こることとなった。
舞台装置の裏側が意図せずに透けてしまったことで、没入感を削がれてしまった人間も少なくないと思う。
加えて私がとても残念に感じてしまったのが、大森氏がこの番組の発想元にWebメディアであるオモコロの編集長である原宿氏を挙げたことであった。
原宿氏はYouTubeのオモコロチャンネルでレギュラーとして出演し、そのなかで奇抜な振る舞いやキャラクターを演じ、視聴者の笑いを誘っている。その中のひとつに着想を得たというのである。
断じて誤認して欲しくないが、私はオモコロチャンネルも原宿氏も大好きだし、ファンと自称してもおかしくない程に動画も視聴させて頂いている。
原宿氏の突飛な行動やワードサラダ的な言葉選びからホラーへの着想を得るのも素晴らしい思う。笑いと恐怖は紙一重とはよく知られたことだ。
ただ、限りなくリアルであることを売りにし、フィクションであることは了解しつつも「いるかもしれない」を楽しむコンテンツに対して、大森氏があまりにもあけっぴろげにネタばらしめいた後付けをしたことが上品でないように思えたのだった。
これらのマイナスな感想は私個人の中の極々狭義なマイルールのなかで湧き上がったものであり、作品全体に対する印象が良かったが故に粗をついているに他ならない。
しかしこのリアリティの中の粗探しは「奥様ッソ」の放送時からチラホラ目にしたものであり、大森氏もひとつの感想として認識していただろうことは想像に難くない。
繰り返しになるが、作品のクオリティが低いのでは決してない。
高いからこそ、本物と見紛うからこそ、違いをことさらに探し当てたくなってしまうのだろう。
「いるかもしれない」を求めた結果、「いない」の根拠を探されてしまう...これはこの作風についてまわる、ひとつの課題だろう。
そして私は、「SIX HACK」こそがその問題に対する大森氏のアンサーなのではないかと捉えたのである。

SIX HACKを追いかけながら、我々視聴者はいくつもの疑問にぶつかった。
・この番組の唱える陰謀論は真意なのか
・番組の休止は予定外だったのか
・総合演出の佐藤氏は本当に狂っていたのか
細かく上げればキリがないほど、真偽の不明な問いは多くあった。
そしてそのいずれもに明確な答えは出されていない。
考察は数多あがるだろうが、それは"真実"ではなく、そう考えることも可能だ、という程度のことだ。
つまるところ、明確な"真実"は恐らく存在しないのだろう。
恐怖は未知からやってくる。
視聴者は番組を見て、疑問を抱き、考察し、真実を知ろうと画策する。
納得のいく考察に行き当たれば、または番組の粗を見つけ出せば、「いない」の根拠を見つけた気になり安堵し、恐怖からは離れたところに身を置いてしまう。
大森氏がホラーというテーマを明確に上げていた以上、これらの一連の流れで作品が暴かれ消費されていくことになにがしか思うところがあったのではないだろうか。
であれば、「いない」の根拠などつかませなければいい。
内容はもちろん、番組の存在そのものから存在を揺るがせて、どの視点から見てもそこに答えを置くことをしなければいいのだ。
回を追うごとに未知を深め、解明させない。
それをメタ的なリアリティも物語に組み込んだうえで実現して見せたのが、SIX HACKという番組なのでは無いかと、私はそう思う。
であるからこそ、冒頭で述べたように私は悔しかった。
この番組の存続を本気で心配した時点で、私は大森氏に完敗していたのだ。
その不安こそ、大森氏が我々に抱かせたかった感情に違いなく、そこにまんまと嵌められた私は実によき視聴者であっただろうことが分かってしまったから。
そして心底よかったと思ったのは、上記のように、この番組を余すことなく楽しめるのはリアルタイムで更新を追い、その先がどうなるのかをハラハラと見守った人間だろうと確信したからである。

以上がSIX HACK全4編を視聴しての私の所感になる。
途中「このテープ~」の批判めいた内容が入ったことをお許しいただきたい。
「奥様ッソ」から「このテープ~」、「このテープ~」から「SIX HACK」へと番組を重ねるに連れ、それぞれに生まれた課題を見事な方法で解決していくその鮮やかさを説明するためであったことをご理解いただければと思う。
というかここまでやっちゃって、一体大森氏は次回作でどうするつもりなんだろうか。
休止を挟んでの演出までして、これを超えることなんてできるのか。
"考察好き連中"の一人として、次の知らせをワクワクと待ち続けようと思う。

〇考察

もはやここまでメタな所感を述べておいて考察も何も、という気がしないでもないが、やはりひっかかりがあることは見逃せない。
気になる点についていくつか列挙し、自分なりの考えをメモ代わりに記載しておこうと思う。
読んでいただいた方で気が付く点などあればコメントでご教示いただけると大変ありがたい。

・"T"が佐藤自身である伏線
T=佐藤の伏線というよりは、桜井=佐藤の伏線が多かった印象。
→アイデアの発端は桜井の渡してきたチラシ。
→佐藤がTに電話をかけた際、出ないのではなくプープーという音が鳴っていた。
 この音は通話中の場合に聞こえる音と思われるが、自分の番号にかけた場合この音が鳴る。
→拉致されて注射器を突きつけられるときにいたメンバー3人が、後のシーンにそのまま出てくる。
→第3回撮影時、桜井の入退室に誰も反応せず、佐藤には反応している。
 ユースケにも見えていない。

・美術担当の女性との会話
撮影は「茶色と緑の多いハウススタジオ」って言ってるけど、そうか…?
変更になったのか、照明等の関係でそう見えなかったのか。
→軽く確認したところ、バックに観葉植物が多いのであのスタジオのことで合っている?

・目に痛みが走った理由
流れでなんとなく見逃しそうになったけど、
構成作家→視聴者に真実を伝えるために動いたら、目から出血した。
佐藤→視聴者に真実を伝えることをためらったら、目に痛みが走った。
真逆のタイミングで目に異変が起きている。
目に異常をきたさせ、ハックしているのがNo eyes達だというのなら、佐藤が制作会社ディレクターに日和ったのはNo eyes的には都合のいいことなのだから邪魔する必要はなかったのでは?
作中で一般人に真実を伝えるべきだと主張しているのは桜井。痛みを加えているのも佐藤の中の桜井?

・元教師の同居人ジュンさんは何者なのか
正直桜井よりもこいつのほうが謎が多い。
途中まで彼も幻覚かと思ったが、インタビューに答えている以上実在の人物として扱う。
→「次は桜井さんには頼らないって言ってなかった?」
 ジュンは桜井さんの存在を認識している佐藤以外の唯一の人物。
 インタビューでも桜井さんの名前をはっきり出している。
 同じものが見えていたのか、もしくは佐藤の中の別人格として桜井を知っていたのか。
 桜井にあまりいい感情は持っていなさそうな雰囲気。
→怪しい授業を行うジュン。
 "お母さんに相談しよう!""毒ガス"モザイクのかかった"ケム〇レイル"
 ケムト〇イル、この番組で初めて知った。

 コンパスを握りしめていたのは子供の目のカーボナイズが始まった箇所を取り除こうとしていたのか?
→「最終決戦が近いことは知ってました」
 この最終決戦とは何だったのか。
→陰謀論ではない、彼が目を覚まさせてくれたと語る。
 彼=佐藤でいいのか。
 佐藤が自分の認識外で機密組織としての知識をジュンに教えた?
 

・桜井さん
色々と謎多き女性。30代くらい?
これはもうほぼ妄想だが、桜井は佐藤の元恋人なのではなかろうか、と考察。
架空の人物にしては佐藤にゆさぶりをかけすぎているし、手をつなぐ等のエロティックさ、またフルネームの設定があること(桜井ようこ)にも説明が付く。
ジュンが桜井を知っていたのは佐藤から聞いたからで、ジュンがいい感情を持っていなさそうだったのは佐藤が桜井との別れの際に良くない状態に陥ったのを知っている、もしくはジュンが佐藤の現在の恋人だと仮定すれば無理がない。

・"T"のツイッターアカウント
フォロワー15万人。多いな!
やっぱり炎上商法で獲得したフォロワーなんだろうか。
最後のつぶやきが行われた日は2023/5/25、SNSのことを扱った第2回放送日である。
もちろん実際に無いか探してみたが、見つからず。
さすがに15万フォロワーのダミーアカウントを用意するのは難しいか。

・羽音
 印象的だったが、2回しか鳴っていなかった。意外。
 1度目→佐藤登場時。2月、企画応募前、自室で煮詰まった様子。
 2度目→4月、美術打ち合わせの後、エレベーターに乗る直前。
 それぞれ羽音のシーンの後に桜井とバーで話す、拉致され目に注射をされる場面になる。
 佐藤の脳内世界の開始合図なんだろうか。
 最後、1度目の羽音の場面がもう一度流れ、佐藤の妄想だったことが示されるシーンでは羽音はせず、虫入りのコーヒーを平然と飲んでいる。
 
・エレベーター
 頻出するエレベーターは何らかの象徴と見たいところ。
 エレベーターは3種類ある。乗り場が黒いエレベーター、白いエレベーター、窓の外のエレベーター。
 拉致される場面、佐藤は8階から黒いエレベーターに桜井と共に乗る。3階で桜井が降り、やってきた3人に取り押さえられる。
 夢から覚めた後の場面で、佐藤は白いエレベーターに夢に出てきた3人と桜井と共に乗る。3階で桜井が降り、エレベーターは上に向かう(=佐藤が乗ったのは3階より下の階)。
 明らかに対比になっている…どちらも桜井は3階で降りるが、黒は下へ、白は上へ向かう。
 また、リキッドの部屋に導かれる直前に見かける桜井さんは、黒いエレベーターから降りてくる。
 窓の外のエレベーターは3月の企画会議と4月の第3回会議の際に使用している部屋。
 どちらも番組の内容を佐藤が決める場面、監視のモチーフ?
 
・佐藤の机にあった封筒
 裏に"炭化"と書かれた写真と、黒い粉(炭?)。
 写真には男性と女の子。
 人の顔の区別がつかないほうなので自信が全く無いが、彼らは他に出てきた場面はあっただろうか…(わかる方いたら教えてください…)。
 出てないとしたら、作中で語られなかった身内?
 佐藤自身にも全く思い当たらない人間だとしたらそれはそれで怖いな。写真の内容に一切言及しなかったこともあるし。
 Tによると、ワクチンを打った人間は98%が眼球が炭化して、炭化すると燃やした時にその灰が灰色ではなく真っ黒になる(うろ覚え)。
 写真の人物の眼球を燃やして出た炭を見せしめに送ってきた、ってことだろうか。
 後ろにいた人影は封筒を置いたNo eyes側の人間ということなのだろう。

また後日気が付いたことがあれば追記の形で加筆したい。
以上。

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