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SIX HACK#1/感想、考察

現在テレビ東京で放映中の「SIX HACK」。
全6回構成で、「偉くなるためのハック」を紹介するビジネス番組である。
…というのを頭から鵜呑みにするものではないことを知らずに見ると、大変危険そうなコンテンツだ。

プロデューサーである大森時生氏が「がんばれ奥様ッソ!」や「このテープ持ってないですか」でホラー好き界隈その他をザワザワさせたことはもはや多数のnoteで触れられている通り。
私もそれらを鑑賞し、今作にも手を伸ばしたクチである。
とはいえそれだけではなく、ダ・ヴィンチ・恐山氏が構成に入っていることも理由として大きい。
近年梨氏、雨穴氏等、この手の話題の人達がオモコロとのかかわりがあるパターンが多い。
「このテープ持ってないですか」の着想に原宿氏があった、という話も飛び出していたし。
(ここには一過言あるといえばあるが、主題から反れるため割愛。)

この先は「SIX HACK」第1回放送分を視聴済みであることを前提とした内容になるため、ネタバレを避けたい方はご留意いただきたい。

*****


第1回『会議プロセスを効率化せよ/インサイトをハックし会議をハック/KPIとコアコンピタンス』

・語句

インサイト
→車ではない。
洞察・物事の本質を見抜く力のことを意味する英語表現である。特定の問題やトピックに関して新しい見方や理解を得ることを表す。(実用日本語表現辞典)

ハック
→これは色々と出てきたが…実際色々な意味がかかっていそう。
うまくやり抜く、プログラムに取り組む、ずたずたに切り裂いて原型を無くした上で修正する、種を植える、人をいらいらさせる、あくせく働く人

KPI
→ 組織の目標を達成するための重要な業績評価の指標を意味し、達成状況を定点観測することで、目標達成に 向けた組織のパフォーマンスの動向を把握できるようになります。(野村総合研究所用語解説)

コアコンピタンス
→ G・ハメルとC・K・プラハラードの著書『コア・コンピタンス経営』(日本経済新聞出版社、1995年)によって広められた概念で、他社に真似できない核となる能力のことです。(野村総合研究所用語解説)

・所感

「偉くなる」のフレーズに心を躍らせた視聴者ってどのくらいいるんだろうか。
前述の通りそもそも真正面から受け止めるタイプのコンテンツではないにせよ、なんだか向上心を煽るための文句としてはそれっぽい言葉でもある。
5つの基本的欲求に照らしてみたとき、「偉くなる」は力の欲求にあたるだろう。
私個人はこういった欲求が弱いので、正直全然惹かれるものはなかった。
「富や名声」と言われたら「名声は無しでいいのでその分富に乗っけたりできないですかね」と打診したい。
偉さって一般的には絶対値ではなくて相対値で、つまり複数の人間の目があるからこそ成り立つ概念だ。
私はあまり人間と関わり合いが好きなタイプではないから向上心が弱いのかもしれない。


「会議に勝って偉くなる」
この場合の勝ちってなんなんだ。
場を切り抜けてなんとかやり過ごしたら勝ちなのか、会議でひときわ目立ち成果を上げたら勝ちなのか。
なんにせよ、吉田君がまともに「勝って」いると思った視聴者はいないと言っていいだろう。
吉田君のこまっしゃくれた小中学生みたいな屁理屈は、相手を呆れさせることはあっても納得させることはない。
なんだか見ていて懐かしい気持ちにすらなった、いたいたこういう奴。たまに大人になってもいる。その場合大抵は腫物扱いだ。
とはいえそんなこと、ここで私が言うまでもなく誰でもわかるわけで。
じゃあなんでわざわざこんな、ラーメンズのコントみたいなことを吉田君は我々に見せているのか。
これを視聴者に実践させたいのか、視聴者を油断させたいのか。

前者だとして、よく耳にするカルト宗教の手口を思い出す。
教団は信者に対し、ある程度目立ち、周囲に迷惑のかかるような行動(主に勧誘)をするよう促す。
それは信者を周囲の人間関係から孤立させるためであり、逃げ道を宗教にしか作らせず、依存させることが目的だ。
孤立して、嫌われて、自分でもハックでもなく周りがおかしいと思い込み、ますますハックに傾倒していく…そんな構図が連想されてしまった。
ユースケサンタマリア氏が司会で進行するスタジオパートの演出も露骨にそういった「セミナー」の雰囲気を醸し出していること、近年カルトを題材としたホラーは比較的人気のジャンルであること(ホラーで異例のヒットを飛ばした「ミッドサマー」や「呪詛」、先述した大森氏の「奥様ッソ!」等)、社会問題として近年取り上げられる機会が増えたこと等もふまえて、ない路線ではないと思う。
後者だとしたら、吉田君がパワハラ疑惑で呼び出されているところでめちゃくちゃ笑ってしまったのでまんまと嵌められている。悔しい。


ブレーキを外す練習、ちょっとシャレにならないほど恐ろしい。
それまでどんなに前のめりでもあくまで番組側からの働きかけを受動的に受け入れるまでだったのに、視聴者が手を動かして、自分の意思で行動することを促してくる。
「決して大きな音を出すことはありません」と我々と"約束"をして(それも一方的に)、それを守って見せることで「ほらね?あなたに危害を加える気はないってことですよ」と言わんばかりだ。
私の視聴環境はiPhoneだった。ので、本体横の音量ボタンを限界まで押して…正直に言うとワイヤレスイヤホンを片方外した。
ビビっちゃった。すみません。
この「すみません」の感情込みで促され、転がされているように思う。疑ってすみません、もう疑いませんと思わされる感じ。
罪悪感でこちらを操作しようとするな!!!

加えて、口元だけが写される画面という構図。これもこちらの懐に入ってくるような意図を感じてしまった。
英語圏と日本語圏の顔文字が違う理由として、コミュニケーションの際に顔のどの部位に影響されやすいかが関係している、という話がある。
英語圏では口元が感情表現に強く影響する。よって顔文字も目より口が大きく表される。→ ;-)
一方日本語圏では、目元がより重要になるため、顔文字も目のバリエーションが豊かだ。→ ( >ω・)
逆に言えば日本人は目で見つめられることに敏感であり、圧を感じ取ってしまう。
銀行やバスなどによく張られている防犯用のステッカー。歌舞伎風のメイクをした顔の目元のみを切り取ったイラストだが、あれは実際かなりの犯罪抑止力があるらしい。
日本人は視線に弱い。
日本語圏で放送することを想定しているであろうこの映像であえて目元を隠す、その意図に、視聴者に対してある種の「安心感」を持たせることを感じずにはいられない。
もしくは、こちらが目を見られない…相手に畏怖の念を抱いていると逆説的に錯覚させるような作用。
この番組の大事なモチーフの一つに『目』があることが理由と言ったらそれまでだが、そうであるにせよ今後この番組を視聴する上で"目が見える(ある)"、"目が隠れている(ない)"は重要な意味を持つだろうことは想像に難くない。


取り急ぎざっと視聴した感じの所感だけ。
第2回、3回も視聴済みなので、そちらも別途まとめたいと思う。
Franz K Endo氏の映像についても丁寧に見直したいところ。
また後日気が付いたことがあれば追記の形で加筆したい。

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以上。

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