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戦コンビギナー時代の心に残る言葉

戦略コンサルタントのアップルです。

はや10年以上も前の話ですが、アップルも戦略コンサルタントとして駆け出しの時代がありました。最初の1年くらいはかなりハードワークをしました(1年くらいでコツをつかみ、それ以降は生産性も上がり「結構楽ちんな仕事だな」と思いましたが)。

入社1年目の密度の濃いプロジェクトワークの中で、上司・先輩たちから聞いた今でも印象に残っている言葉がいくつかあります。戦略コンサルティングの仕事の本質をあらわしている気がするのでご紹介したいと思います。

「なんでみんなインタビュー行く前にもっと考えないのかなあ?(ばかじゃね?)」

戦略コンサルタントの重要な業務の一つが「インタビュー」です。クライアントにインタビューすることはもちろんのこと、例えば市場環境や事業機会を探るときには外部の有識者や業界関係者などにもインタビューをします。今でこそ「ビザスク」のようなインタビューマッチングサービスがありますが、当時はそんなサービスは皆無。人づてで何とかライトパーソンにたどり着いたり、コールドコールでアポをとるのが一般的でした。現在よりインタビュー実施のコスト(時間、労力という意味での)がはるかに高かったのです。

逆に言えば、1件のインタビューの「重み」が重かったので、ちゃんとこちら側もインタビュー用の資料を作成して臨むのが一般的でした。1時間のインタビューを有益なものにするためには、こちら側から論点や仮説を具体的にぶつけなければならないからです。

上記の言葉は、とあるプロジェクトのマネージャーが半ばボヤキのようにぽろっと発したものでした。1件のインタビューの価値は、その準備段階での論点や仮説の練度によって大きく左右される。10件の浅いインタビューをするくらいなら、2~3件の深いインタビューをした方がバリューが高い。だとしたら、1件のインタビューに臨む前に、もっと脳みそが擦り切れるまで論点や仮説を考えたほうが効率的だし、それをやらないやつはバカじゃないか?(そこまでは言っていませんがニュアンスとして)ということが言いたかったのだと思います。

この言葉を聞いて以降、アップルもインタビューの準備を徹底するようになりました。具体的には、インタビュイーにさすがと言わせる何らかの構造化したキラーチャートを入れたり(例えば、業界構造の全体像をシャープに絵にしたチャート)、「うーん、面白いねこれは」と思ってもらえる仮説を入れることを強く意識するようになりました。これを繰り返すのはとても良い訓練で、インタビューの準備を通じておのずとコンサルティングスキルは高まっていったように思います。

「脳みそに汗をかこうよ」

徹底して考えるべきだということを端的にあらわした言葉です。これもあるシニアがプロジェクトミーティング中に発した言葉でした。メンバーたちはいろいろ調査したり分析をしている。その結果をプロジェクトミーティングで発表している。しかし、そこに今一つ「深み」が感じられない。クライアントと戦えるレベルのインサイト、アウトプットではない。そんな状況のときにプロジェクトを統括するシニアから発せられた言葉だったと記憶しています。

脳みそに汗をかくという表現は、生まれてこの方聞いたことがありませんでした。汗は体にかくもので、脳みそは汗をかきませんが、例えとして体を酷使すれば汗が出てくるのと同じように脳みそをもっと酷使しようよ、じゃないと大したアウトプットにならないよ?ということを伝えたかったのだと思います。

この言葉も強烈に印象に残り、自身もマネージャー昇進以降はメンバーに対して「脳みそに汗かいてる感じがしないんだよな・・・もっと考えないとだめだよ」といった感じにしばしば使うようになりました。

「論点仮説は何なの?」

あるパートナーの提案書作成をサポートしていたときパートナーから発せられた一言です。仮説というものの概念を変える一言でした。それまでの私は、論点と仮説とは別物で、対になるものだととらえていました。BCGの内田さんが「論点思考」「仮説思考」という本を姉妹書のように出していることからも、このように別物、対で捉えている方が一般的だと思います。

しかし、パートナーから発せられた言葉は「論点仮説」。ん?論点なのか、仮説なのかどっちなんだ?と思いましたが、この言葉が意味するところは「論点の仮説」でした。

あらゆる問題解決には論点が紐づきますが、論点はアプリオリに決まるものではないので、何が論点かということ自体が仮説思考の対象になるのです。特に、新規のクライアントに提案する段階では情報量が少なく、クライアントが解くべき問い、すなわち論点は明らかではありません。どう論点を設定するかに自由度・不確実性があり、したがって論点の仮説を立てる必要があるのです。

これ以降、一般に仮説と言われているものは「答え仮説」のことであり、それ以外にも、
・論点仮説
・アプローチ仮説
・メッセージ仮説
といった複数の仮説が存在し、何を考えるにしても仮説思考を働かせないといけないということを肝に銘じるようになり、行動原理となっていきました。仮説思考には複数あるということについては、過去にnoteの記事にまとめていますので、興味ある方は以下ご覧ください。

戦略コンサルタントが駆使する3つの仮説思考|アップル|note


今回はここまでです。
最後までご覧いただきありがとうございました!

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