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経営を測る指標と国力を測る指標を対比して思うこと

戦略コンサルタントのアップルです。

ふと、経営を測る指標は多様化が進んでいる一方で国力を測る指標は全然多様化が進んでいない、そのギャップって問題じゃないか?と思ったので、記事にまとめてみました。ちょっと雑な考察かもしれませんが、興味ある方はご覧ください。

経営では、売上市場主義からの脱却が進む

こと日本では、企業経営において長らく「売上市場主義」がはびこってきました。売上市場主義とは、「売上の規模や成長率こそが最も重要な経営指標である」という考え方です。しかし近年は、この考え方はかなり問題があるという認識が一般的になりました。

売上が伸びていても、利益率が下がっていては問題がある。売上が伸びていても生産性(労働生産性や資本生産性)が落ちていては問題がある。このような認識が一般的になったということです。さらにここ数年で「企業価値」こそが経営を測る究極のモノサシであるという考え方も浸透してきました。ESG経営・ESG投資の流れを受けて非財務資産への注目が集まったことが、企業価値が究極的には大事であるとの考え方を後押しした側面があるように思います。

一方で、マクロの世界では・・・

以上は企業経営という「ミクロ」の世界の話です。目を転じて、国という「マクロ」の世界ではどうでしょうか?国力を現す最もポピュラーな指標は皆さんもよくご存じのGDPです。長年GDPは代表的な指標として君臨しており、現在でも国力といえば真っ先に使われる・想起するのがGDPです。各国の国力を比較するときには真っ先にGDPが使われますし、国内においてもニュースでよく取り上げられるのはGDP成長率です。「今年度のGDP成長率は1.2%でした」というようなニュースは毎年必ず聞きます。

GDP以外の指標、例えば「幸福度」なども提案されはじめていますが、まだまだその存在感は小さいです。つまり、マクロの世界ではいまだに「GDP至上主義」がはびこっているといえるでしょう。

国のGDP(マクロ)は企業の売上(ミクロ)と概ね対応しています。したがって、GDP至上主義であることは、ミクロの世界に置き換えればいまだに売上至上主義を踏襲しているようなものです。

このミクロとマクロのギャップに、ふとアップルは違和感を感じました。

先述のとおり、ミクロ=企業経営においては、ずいぶん前に売上市場主義、すなわち「フローのボリュームをKPIにする」という考え方はおかしいとなり、
・収益性(フローの効率性)
・生産性(フローの効率性)
・バランスシート(ストックの健全性)
・非財務資産含む企業価値(未来のキャッシュフローの現在価値)
・株式価値・株式時価総額
と指標が多様化しています。対してマクロにおいてはいまだにGDPという「フローのボリューム」だけを追いかけているのです。

なぜこうしたギャップが出てしまっているのか?この原因が気になるところです。アップルも現時点では特段の見解がないのでここでは論じませんが、ちゃんと議論されるべき論点のように思います。

マクロ指標の多様化を考えてみると

少し想像力を働かせてマクロでもミクロと同様に指標を多様化させるとどうなるでしょうか?おおむね以下のようなイメージだと思います。

【フロー】
①GDP(経済価値)⇔売上(経済価値)
②一人当たりGDP⇔労働生産性 
③国が創出する社会価値⇔企業が創出する社会価値
【ストック】
④国のバランスシート(財務的国富)⇔企業のバランスシート
⑤無形資産的な国富(人財、技術、文化、ブランド、環境資源等)⇔企業の非財務価値
【フロー×ストック】
⑥国の総利益÷国の総資産⇔ROA/ROIC

GDPだけで国力を測るのではなく、②~⑥も追加して国力を測ることが、多面的に国力をみることになります。例えば、SDGsを背景に、企業活動が生み出す社会価値が重視されてきています。これは国レベルでも言えることなので、③のような指標は重要といえるでしょう。また、⑤のような指標、すなわち国レベルでの無形資産的国富は、課題先進国、技術立国、クールジャパンをうたっている日本にとっては特に大事な切り口だと思います。

こうして複数のモノサシで国力を比較した場合、GDPだけで測った国力のランキングとは大きく異なる結果になることが予想されます。例えば日本はGDPではずいぶん前に中国に抜かれましたが、①~⑥で総合的にみればまだ中国より上かもしれません。

もちろん、上記のような指標の中には技術的に数値化が難しいものはあると思います。例えば⑤はかなり難しいでしょう。非財務価値は一企業でも定量化が難しいといわれています。一企業ですら定量化が難しいものを国レベルで定量化するのはかなりの技術的な難しさをはらむでしょう。

とはいえ、話は戻りますが、企業を測るモノサシが多様化・複線化する一方で国を測るモノサシだけがいまだにGDP一本足打法なのは違和感があります。国力を測るモノサシのほうも、ちょっとずつでも複線化が図られていくべきではないかと個人的には思うわけです。みなさんはどうお感じになるでしょうか?

今回はここまでです。
ここまで書いておきながらなんですが、アップルは決してマクロ経済やマクロ指標に詳しいわけではないので、「いやいやマクロ指標の世界でもこういう指標が提案されはじめてるよ」「こういう多様化・複線化が進んでいるよ」という話を知らないだけかもしれません。もし、そうした動きをご存じの方がいらっしゃれば、ぜひ教えてください。

最後までご覧いただきありがとうございました!

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