クライアントとの関係の理想形
戦略コンサルタントのアップルです。
またもや久々の投稿となってしまいました、、、。今回はクライアントとコンサルファームとの関係について、一般的な「発注者・受注者」「客とサービス提供者」という視点とは異なる切り口で書いてみます。
お互いに昇進していくというメカニズムの存在についてです。
昇進したときに上司が言った言葉
アップルがかつてある役職に昇進した直後に、クライアントとの会食がありました。そのクライアントとは比較的長期のプロジェクトをご一緒して、一定の信頼関係もできていました。そのプロジェクトでアップルは中核モジュールを担い、着実に成果を出したことで、クライアントからも感謝されていました。
さて、その会食の道中、そのプロジェクトにおける私の上司が、次のような言葉を口にしたのです。
「みなさんのおかげでアップルは晴れて昇進することができました。ありがとうございます」
この言葉は最初聞いたときちょっと意外でした。昇進させるかどうかはあくまで社内の話で、お客さんに対してどうこう言うものではないと思っていたからです。
ただこの言葉は、よくよく考えると的を得ていました。
まず、そのクライアントのプロジェクトで一定の成果を出し、一定の評価を得たことが、アップルの昇進の一つの決め手でした。
コンサルティングプロジェクトというのは共同作業です。もちろんお金を頂いているコンサルティングファーム側が頑張るのが前提ですが、良いアウトプットや成果を出すにはクライアント側にも意思をもって頑張っていただく必要があります。お互い努力しながら、プロジェクトのゴールに向けて共同作業する。少なくとも良い成果につながるプロジェクトには、そういう構図が成立しています。
そのときのプロジェクトも共同作業の構図が成立していました。アップル自身が頑張ったのももちろんありますが、そのクライアントがプロジェクトに真摯に向き合ってくれて、日々議論に付き合ってくれたり成果を出しやすい環境を整えてくれたからこそ成果が出たと言えます。
こう考えると、当時の上司が発した「みなさんのおかげでアップルは昇進することができました」という言葉は的を得ていると言えるわけです。我々コンサルタントは、パートナー、マネージャーなどの上司だけでなく、クライアントに育てて頂きながら一人前になっていく側面が多分にあります。
お互いに昇進しあっていくような関係が理想的
今のエピソードは「コンサルタントがお客様に育てていただいて昇進した」という事例になりますが、この逆もあります。つまり「コンサルタントの支援を受けたお客様が昇進した」という例です。
ご支援したクライアントの関係者(プロジェクトオーナーやメンバー)が出世していく姿をみることは、一定年数以上この仕事をやっているとしばしばあります。大企業の、特に幹部の人事ともなると、様々な要因で決まるでしょうから、そこに対してコンサルティングファームの支援の結果がどれだけ寄与しているかと言えば限定的かもしれませんが、ご支援した方が出世していくのは支援した側としてもうれしいことですし、さらにその出世に一役買うことができたと思えれば喜びはひとしおです。
出世したクライアントも、自身の昇進に一役買ってくれた存在としてファームを見てくれれば、信頼関係が構築され、他のファームには代えがたい存在になります。そして昇進後の新たな役職・立場で、新たな相談・発注が来るようになります(コンペではない形で)。
このメカニズムを図解すると、次図のとおりとなります。
この図からみてとれるように、クライアントの昇進とコンサルタントの昇進とは連関しあっています。ある種一連托生の関係の中で、お互いに昇進し、組織の中で権限と権力を得て、より大きな仕事に共にチャレンジしていく。これが経営コンサルタント/戦略コンサルタントとクライアントとの関係の理想像ではないかと思います。
但し、このサイクルを回すのに至るのは、現実にはかなり大変です。恩と信頼を獲得するだけのいい仕事をする必要があるため、コンサルティングのクオリティがまず大前提となります。加えて、このサイクルが回るのには、時間がかかります。一般的な大企業の人事異動のサイクルは5年くらいでしょうか。社内の出世ルートに乗っている人でも、昇格のペースは5年に1回くらいではないでしょうか。成果を出して、信頼を獲得し、また別のイシューで仕事をもらうためには、こちら側も数年の計で腰を据えて関係をキープし続ける必要があります。
元ATカーニー代表の岸田さんが「コンサルティングの極意」という著作の中でこのあたりのこと(顧客との信頼関係の築き方、長期的な付き合い方)はすごくリアルに書いていらっしゃいますが、これは岸田さんご自身の力が突出していたことはもちろんのこと、コンサルティング業界に非常に長くいらっしゃったからこそできたこととも言えるかと思います。
岸田さんの著作は、2015年に刊行されています。コンサルティングのスキル面ではなく、クライアントとの向き合い方などマインド面に多く紙面が割かれている本という意味で、他のコンサル本とは一線を画しています。アップルは刊行されたときに読みましたが、そのときはこの本に書いてある真意が十分理解できない部分もありました。最近、久々に読み返して、いいことが書いてあるなあと改めて思いました。
コンサル業界の方(特にマネージャー以上)、コンサル業界志望者の方にはお勧めの内容です!ご興味ある方はぜひ手にとってみてください。
今回はここまでです。
最後までご覧いただきありがとうございました!
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