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コンサルの単価は何で決まるのか?

戦略コンサルタントのアップルです。

コンサルティングサービスには様々あり、その単価も非常に幅がありますが、「コンサルティングフィーの単価は何によって決まるのか?」は、業界外の人からするとブラックボックスでわかりづらいのではないかと思います。コンサルティングファームの中の人にとっても、まだ入りたてのジュニアなんかからすると、わかりづらい部分があるのではないかと想像します。

「なぜ単価にバラつきがあるのか?」という問いに対してはいくつかの説明ができます。一番わかりやすいのはファームのブランドによって単価がばらつくという説明です。例えばマッキンゼーのコンサルティングは高単価ですが、それはファームの歴史と実績に裏付けられたブランド(そしてそのブランドを支える優秀なコンサルタントたち)があるからです。

しかし、ファームのブランドだけでは説明できない側面もあります。というのも、同じファームの中でも単価には相応のばらつきがあるからです。定価より高い単価をとれている案件もあれば、随分と値引きして低単価になっている案件もあります。これもいくつかの要因が考えられますが、本質的には各プロジェクトで「何を価値として提供しているか」の違いによって単価のバラつきが出ているとアップルは捉えています。

そこで今回は、一つの切り口として、コンサルティングファームの価値提供の類型化、そして価値提供の類型と単価との関係性について論じたいと思います。

結論から言うと、価値提供の類型は大きく4パターンで、単価が低い順に並べると次の通りです。

①高級人材派遣(低)
②価値が金額換算できるコンサルティング(中)
③緊急度・重要度が高いイシューに関わる支援(高)
④PJオーナーの自己実現・出世のパートナー(超・高)

順にみていきましょう。

①高級人材派遣(価値:社員の代替・補完)

最近では常駐してクライアント企業の一社員のような働き方をする支援も増えてきています。背景には人手不足、特に20~30代の若手の人材の不足があります。これをコンサル業界では「高級人財派遣」と言ったりします。コンサルティングと銘打ちながらも、実質的には派遣会社がやっているような人材派遣サービスに近いからです。

高級人財派遣は単価を取りづらいです。なぜなら、価格のベンチマークになるのがクライアント企業の人件費になるからです。もちろん、クライアント企業の人件費見合いよりは高いフィーをもらうのですが、それでもコンサルティングフィーとしてはかなりの低水準になります。

②価値が金額換算できるコンサルティング(価値:コスト削減、効率化等)

コンサルティングのテーマは多岐にわたるため、その価値が金額換算しやすいものとしにくいものがあります。

例えば、コスト削減を推進するプロジェクトは金額換算がしやすいです。そのプロジェクトによってどれだけコスト削減が進みそうかという見積もりが概算で立てられるからです。一方で「戦略策定」「新事業開発支援」のようなプロジェクトは、その価値を金額換算するのは困難です。「戦略」は収益(P/L)と緩やかにリンクするものですし、新事業開発に関しては性質上不確実性が高いので「この新事業開発によって将来●億円の収益が得られるだろう」という皮算用はほぼ意味を成しません。

このように幅がある中で、コスト削減や何らかの効率化を目的とするBPR、IT導入のような「価値を金額換算できるコンサルティング」は、その期待価値に見合ったフィーが支払われます。

高級人財派遣のようなコスト見合いではなく、価値見合いでフィーが設定されるため、単価もその分高くなる傾向があります。逆に言えば、金額換算された価値以上のフィーは取ることができません。

③緊急度・重要度が高いイシューに関わる支援(価値:短期間で完遂すべきことを完遂する)

緊急度、重要度ともに高く、かつ自分たちだけでは解決が難しそうなイシューに対してコンサルティングファームが起用されるのは一つの王道のパターンです。緊急度・重要度ともに高いイシューとは例えば、
・中計の策定
・全社戦略の策定
・重要な事業の事業戦略の策定
・営業改革、組織改革
・事業再生
といったテーマです。

一例として中計策定がなぜ緊急度・重要度ともに高いか見てみましょう。中計は企業経営のマスタープランです。さらに上場企業にとっては、その中身の質によって株価に影響したりもするので、極めて「重要度」が高いと言えます。また、中計の策定・発表のスケジュールには明確な「おしり」があるので、公表時期が迫るにつれて「緊急度」も高まります。

こうした緊急度・重要度ともに高いテーマでコンサルティングファームを起用する場合、クライアントとしては「背に腹は代えられない」という心理が一定程度働くため、金に糸目をつけず高いフィーを支払う傾向があります。

④PJオーナーの自己実現・出世のパートナー(価値:野望・自己実現の後押し)

もっとも単価・期間がとりやすい支援の入り方がこれです。ただし、役員以上の役職上位者がプロジェクトオーナーの場合に限られます(部課長などのミドルマネジメントを相手にする案件では難しい)。

大企業のサラリーマンにとっての最大の関心事の一つは出世でしょう。今より上の役職に上がり、さらに大きな権限をもって仕事や組織を動かしていきたい。そんな「願望」「野望」がサラリーマンの原動力の一つであることは間違いありません。また、優れた経営者・サラリーマンだと、出世競争のような会社の枠内に閉じず、より高い視座での目標や願望を持っているケースも多いです。つまり、「社会」に対して何かを実現したいという想いをもった人が一定数います。パーパス経営、SDGsが流行りの現在では、そうした想いをもった経営者や幹部は増加傾向にあります。

そうした「野望」や「自己実現」を達成するために必要なパートナーとしてコンサルティングファームが認められると、まず支援期間が長期化します。数か月のスポットでの付き合いではなく、数年単位の長期のお付き合いになります。

加えて、プロジェクトオーナーの野望や自己実現という「プライスレスの価値」が裏側にあるため、単価も高水準をキープしやすいです。

こうした「自己実現パートナー」立ち位置にいかに入り込めるかが、1コンサルタントの活躍にとって、ひいてはコンサルティングファームの収益安定化にとって、とても大事なポイントだと感じます。


今回はここまでです。
最後までご覧いただきありがとうございました!


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