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Appleファンから見たBALMUDA Phoneのデザイン

BALMUDA Phoneについては発表以来、多数のレビューが公開されています。
しかし、価格やスペックを中核に論じる記事が多いという印象です。
コンセプトやデザインについての考察を中核に据えた記事は見かけません。

そこで、コンセプトやデザインについての評論(レビュー)をしようというのが、今回のテーマです。

コンセプト

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BALMUDA

BALMUDA Phoneのコンセプトは「BALMUDAの社長、寺尾玄氏に最適化されたスマホ」です。このことは、寺尾社長に対するインタビューから明らかです。

「ひとりでいいから、どうしてもそれを欲しいと思っている人が必要なんです。(中略)
──そのひとりというのは、バルミューダではやはり寺尾さんですか?
はい。こんなにクレイジーに「絶対に欲しい」と言い切れる人間は、わたしはほかに会ったことがありません。ある程度クレイジーが必要なんですよ。」
https://wired.jp/2021/11/08/balmuda-the-brew-interview-2/https://wired.jp/2021/11/08/balmuda-the-brew-interview-2/

BALMUDA Phoneは5G通信機能搭載のために再設計されたといわれています。この開発経緯からすれば、必ずしも寺尾社長の趣味だけで作られたわけではないでしょう。
しかし、寺尾社長にとっての最適解を意識していることは間違いありません。

当然ながら、万人受けするスマホではありません。
スマホの国内出荷数の0.7%から1%程度のシェアが取れればよしというスタンスであると分析されています(記事1記事2)。

BALMUDA Phoneのキャッチコピーは「Another」です。我々がBALMUDA Phoneを評価する際の視点もまた「Another」である必要があります。

Anotherというキャッチコピーは、スマートフォンに異なる選択肢を用意するという意味で、これが表向きのコンセプトです。

では、その選択肢をどう実現するのかというと、寺尾社長に最適化されたスマートフォンを作ることによって実現するわけです。

そうして作られたスマートフォンがAnother足りうると感じる人はあまりいないのかも知れませんが、そこがこのデバイスの魅力でもあります。

バルミューダらしさとその妥当性

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BALMUDA

他のバルミューダ製品と比較した際の位置付けを考えてみましょう。

従来のバルミューダ製品にあった一点突破の手法がスマートフォンでは活かせないという指摘があります。

「トースターであればおいしいトーストが焼けること、扇風機であれば風が自然であることといった形で、単機能ながら製品の本質を明快に突いた特徴があった。
 外観や基本アプリはあくまでスマートフォンの味付けであり、(中略)一点突破的に機能を磨き上げるバルミューダの手法と汎用(はんよう)製品であるスマートフォンの食い合わせの悪さも、BALMUDA Phoneの売りが分かりづらい要因の1つといえそうだ。」
https://www.itmedia.co.jp/mobile/articles/2111/20/news029_2.html

しかし、バルミューダは基本アプリこそがスマートフォンの本質であると考えており、前提事実に相違があります。

バルミューダは、自らが用意したいくつかのアプリだけが他のスマートフォンのアプリに比べて便利であればいいと考えています。これは一点突破的な考え方に他なりません。
そういう意味ではこれまでのバルミューダ製品と同じ思想に基づいた製品であると言えます。

このバルミューダの考え方に問題がないかと言うと、そうは思いません。

先ほど引用した記事の指摘は、全くの誤りではありません。
確かに家電なら、ある機能がずば抜けて便利なら、他のいくつかの機能は諦めてもいいという判断はあり得ます。
しかし、生活のあらゆる側面で活躍するスマートフォンでも同じように言えるかは分かりません。

スマートフォンは日常的に使うデバイスです。「ある機能(アプリ)はとても便利だが、ある機能は不便」なスマートフォンよりも、「すべての機能がそこそこ便利」なスマートフォンの方がいいという判断は十分に成り立ちます。というか、普通はそうでしょう。

そういう意味で、一般的なユーザーの視点からレビューする(しようとする)ことが多いガジェットレビュアーがBALMUDA Phoneを批判するのも納得できます。

一方、前述のとおり、売上予測からすると、それほどメジャーになる必要がないという点に注意が必要です。一部の機能だけ便利に使えれば十分と思っているユーザーをすくい取ることができれば商業的に成功です。
一般的な視点からの批判はあまり意味がありません。


使いすぎないためのスマホという観点は妥当か

BALMUDA Phoneは、使いすぎないためのスマホという文脈で語られることもあります。確かにそういう側面もあります。発表会でもそういう話がありました。

しかし、使いすぎたくなければ、使わないようにすればいいだけです。ハードウェアを制限する理由としては不十分です。
それに、iOSなら、アプリの使用時間を制限する機能もあります。物理的にスマートフォンに触れる時間を減らしたければ、iPhone+Apple Watchという選択肢があります。

ですから、スマホを使いすぎないためのスマホという視点では、「Another」たり得ないだろうと思います。

筐体のデザイン

・成熟したデザインを芸術性によって克服

BALMUDA Phone本体のデザインの最大の特徴は、本来ほとんどの部分が直線でしか構成され得ないはずのスマートフォンを、あえて全て曲線で構築しようとしたところにあると言えるでしょう。
その矛盾と非効率の先にあるのは、バルミューダ自身が述べるように、芸術性です。

外観はiPhone 3Gとの類似性がユーザーから指摘されています。BALMUDA Phoneは結局過去のスマートフォンの歴史をなぞっているに過ぎないと見る余地もあります。

しかし、BALMUDA PhoneはiPhone 3Gに比べてもエッジがかなり薄く、効率よく部品が詰め込めているようには見えません。エッジの部分は、ほとんど部品配置に使えていないのではないでしょうか。手に馴染む丸みを帯びた形状という点では共通していますが、内部設計はiPhone 3Gに比べてもかなり不合理であるように思います。

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スマートフォンはその歴史の中で、大型化して板状になり、効率よく部品を内部に詰め込んでいけるようになりました。

寺尾社長はスマートフォンはまだ成熟していないと述べていますが、少なくともスマートフォンの設計それ自体はむしろ成熟しています。
BALMUDA Phoneはその成熟を芸術性によって克服しようとしたものであると捉えることができます。

部品の詰め込み効率を無視してでも寺尾社長の理想の曲線を実現しようとする姿勢によって、単にiPhone 3Gや黎明期のスマートフォンの焼き直しにとどまらない、新しいスマートフォンの形を生み出したと評価するべきでしょう。

芸術性と言っても、なんでも自由にやって良いわけではなく、バルミューダ製品のラインアップにおける統一感などの制約は当然ながら存在していると思われます。

この直線を持たないデザインは、握る分には心地よいですが、別の場面では、使いやすい場合もあれば、そうでない場合もあります。

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BALMUDA Phoneは画面のエッジが画面の水平面よりも若干高くなっています。このエッジは緩やかにカーブしています。

例えば画面を伏せるようにして机の上などに置いたときは、画面の左右のエッジのカーブが隙間を作っているので、そこに爪を差し入れて持ち上げることができます。しかし爪が短い人にそれはできません。むしろ背面の丸みゆえに掴み取りにくい形状です。

また、画面を上にして机の上などに置いたときは、画面をタップしようとすると、本体がぐらついて操作しにくいという不便さがあります。
ただし、画面が揺れることはバルミューダも分かっていて、画面を揺らすと画面をオンにするというオプションが設定の中にあります。

こうした偏った仕様は、まさに寺尾社長に最適化されているがゆえでしょう。
俺は机に置いたまま操作しないから、という寺尾社長の声が聞こえてきそうです。そこに共感できるか、許せる人だけがターゲットであるということになります。

仕上げ

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背面はシボ加工されたマット仕上げの部分とグロス仕上げの部分からなっています。
全てプラスチックではありますが、質感は比較的良いです。バルミューダ社の製品ラインナップとの統一感もあります。

ところで、スマートフォンの筐体については、Appleが金属とガラスを駆使した高級感たっぷりのデザインを生み出し、一つのマイルストーンとなりました。

バルミューダもこのことを無視しているわけではありません。
しかし、金属とガラスの組み合わせは、日々使っているうちに傷み、その傷が美しくないという理由から、適切ではないと考えたそうです(私はこの考え方にはあまり共感しませんが)。
そこで、あえて傷むことが前提のデザインを採用しました。

使っていくうちに背面のマット仕上げの部分が削れ、下地の色が出るようになっています。革製品のように味わい深くなること狙っています。

傷つき自体もデザインに取り込むことで、傷ついても美しい、これまでのスマートフォンにないデザインを実現しようとしています。
その傷み方が実際にどう見えるのか、バルミューダは明かしていませんし、レビュアーも「削ってみた」りしないので、実際にどんな見た目になるのかはまだ分かっていません。
一方、グロス仕上げの部分については、バルミューダの発表会でも特に説明がありませんでした。

USB Type-Cの端子の左右に2つずつ、マイクの穴がありますが、うち3つはダミーです。iPhoneでも似たような仕様があった気がしますが、単なるシンプルにとどまらない独自の美意識が反映されています。

ただし、全体的にディテールの仕上がりが甘く感じました。

例えばシムトレイのスロット周辺は、形状が本体の曲面形状と一体化しておらず、光の反射を受けた際に歪な印象を受けます。
また、マイクホールの溝などの処理には鋭さがなく、野暮ったい印象を受けます。塗装の厚みのせいかもしれません。
背面のシボ加工のパーツとの接合の仕方も甘く、私の手元にあるものは片側にわずかではあるものの隙間ができています。

iPhoneの部品の加工精度が高すぎるだけという話かもしれません。しかし、それがスタンダードになっている時代です。ここはちょっと惜しい部分だと思います。

どのような経緯でマット仕上げとグロス仕上げの組み合わせになっているのかはよく分かりません。

マット仕上げのみだと単調だからグロス仕上げを組み合わせた可能性や、元々グロス仕上げであったところ、その一部にマット仕上げの素材感を追加した可能性が考えられます。

・ベゼルとインカメラ

左右のベゼルは最新のiPhone並みに細いのですが、上下のベゼルは左右のベゼルに比べて太くなっています。ウェブサイトで製品画像をみるとかなり太く見えますが、実際はそれほど太いわけではありません。

上下左右すべてにおける対称性がないのは気になりますが、一応上下と左右でそれぞれ対称性があるので、絶対にダメというほどではありません。

問題点として指摘されているのは、上下に太めのベゼルがありながらインカメラをパンチホール式で搭載している点です。
もっとも、インカメラの直径(レンズ周辺部含む)が6mm、ベゼルの高さが最も高いところで5.5mmなので、ベゼルにインカメラを組み込むのは初めから無理な話ではないかと思います。

発表会の記事を見ていると、筐体のエッジが薄いせいでベゼルにインカメラを組み込めなかったという話もありました。検討段階ではべゼルにインカメラを組み込むアイデアはあったが諦めた、ということなのでしょう。

インカメラをエッジに配置するだけの厚みがないので、ベゼルレスにもできないということになります。
寺尾社長が自撮りしているとは思えないので、インカメラ非搭載でもいい気がしますが、さすがに商業的に問題があるということになったのかも知れません。

ディスプレイの下にインカメラを隠す方式がベストであったと思いますが、日本のメーカーが採用するのは難しいのでしょうか。

Pixel 6を見ていると、Google自身はパンチホールと少し厚めのベゼルをそれほど問題だとは考えていないことがわかります。最近のスマホはかなり縦長で、縦方向の表示領域で少し損をしても実害がないからでしょう。

BALMUDA Phoneの場合、縦に短いので、縦方向の表示領域で損をしているのが痛手となっています。

・電源ボタンの配置

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電源ボタン兼指紋センサーは背面側から見て左上部に寄っています。
これは左手で端末を持った際に、人差し指がちょうど届く位置です。
逆に右手で持つ場合、右手人差し指を電源ボタンに配置することは不可能ではないものの、決して自然に指が届く位置ではありません(慣れれば右手でも使えますが)。
つまりこの端末は、左手で持つことを強制する設計と言えます。

背面の要素の配置を見ると、背面上部左側に電源ボタン、同じく右側にカメラのレンズが配置されており、そのサイズ感も揃っていることから、この2つの要素の間に対称性があります。

しかし、よく見ると、電源ボタンはカメラのレンズに比べてやや左に寄って配置されています。

電源ボタンの位置をもう少しだけ右に寄せれば、カメラのレンズとの対称性が際立ち、より美しくなるはずです。
そうしていないのは、左手の人差し指が自然に届く位置に電源ボタンを配置したかったからでしょう。

電源ボタンがもっと背面中央に寄っていると仮定して、指のポジションはどうなるかを考えてみると、左手で持つ場合は、人差し指の位置がやや不自然になります。逆に右手で持った場合の人差し指の配置は幾分ましになります。
しかしこれでは、どちらの手で持っても中途半端な快適さしかないという結果になります。

BALMUDA Phoneは、右手で持つことをあきらめるという割り切りにより、特定の状況においては、という限定付きではあるものの快適な操作性を生み出しています。

ちなみに、電源ボタンを背面中央部に配置すればいいのではないかとも考えられます。
しかし、背面中央はブランドロゴを配置する場所として使うべきで、電源ボタンを中央に配置するのは避けるべきです。

昔私が書いた記事ですが、この中央配置の問題を説明した記事を貼っておきます。

なお、京セラの2014年のスマホDIGNO M KYL22は、類似する背面電源ボタンを搭載したスマホだったそうです。


面白いのは、センサーの表面もシボ加工になっている点です。一般的な指紋センサーの表面は基本的にツヤのある仕様です。

指紋センサーは、カメラのレンズと対称的に配置されており、ホワイトモデルでも指紋センサーだけはブラックになっています。
このことから、指紋センサーはカメラのレンズの見た目に寄せているのが分かります。
しかし、表面の質感に関しては、背面のマット仕上げに寄せていることになります。この辺りの判断には独特のものがあります。


スペック

スペック、特にCPU性能が低いことは、ほとんどのレビュー記事で言及されています。
ただ、そもそもこのスマートフォンは、バルミューダの基本アプリが快適に使えればよしというコンセプトで作られています。したがって、ハイスペックは不要である点を踏まえる必要があります。

チップセットだけハイエンドにしても、その性能を持続させるだけのバッテリーがありませんし、画面も小さいので、ゲーム等のパワーが必要なことには不向きです。
使いもしないのにCPU性能を上げると、バッテリーの消費も増えてしまうので、あまりメリットはありません。コストも上がります。
そう考えると、CPU性能はかなり吟味した上で選ばれたのだと思います。

ただ、想定外だったのは、アプリの開発費が高くついて端末価格がハイエンド並みになってしまったことと、5G通信対応をソフトバンクに命じられたせいで発売が遅れ、CPUも古くなってしまったことでしょうか。

搭載されているSnapdragon 765は、2019年末発表のCPUで、BALMUDA Phoneの開発開始は2020年の初めのようですから、おそらく開発開始時点での最新チップとして採用していたものと思われます。
開発終盤で、ソフトバンクから5G通信対応を命じられて再設計が施されたものの、CPUは変更されなかったわけです。

CPUを変えようとすると基盤自体から再設計が必要でしょうし、熱設計もやり直しになるでしょう。CPUの変更は開発期間・開発コスト、いずれの面でも無理な話だったのでしょう。

きびきびした感じはしませんが、CPUの性能の低さが問題になる場面は後述のカメラの問題を除いては特にありません。

CPUのスペックについて議論したがるようなユーザーはそもそもこの製品のターゲットではないのでしょう。


アプリのデザイン

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BALMUDA Phoneのウリは、バルミューダが開発した基本アプリを搭載していることです。
これらのアプリがなかったとしたら、本体価格は安くなっていたと思いますが、私は買わなかったかも知れません。

・ホーム画面

オリジナルのホーム画面が用意されています。
バルミューダの基本アプリを効率よく使うためのものですが、スマートフォンに自分らしさを加えるための役割も担っています。

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デフォルトの壁紙が複数色あるだけでなく、好きな色のストライプを配置できるほか、ホーム画面のトップにシグネチャー、自分の名前、誕生日、電話番号を表示できます。

情報量が増えてかっこいいのは間違いないのですが、他人に覗き込まれるリスクを考えると、個人情報をホーム画面に載せるのはいただけません。それにしてもティザー画像の「J.B.」はなんだったのでしょうか。ベタなところでいうと、ジェームズ・ボンドその他2名くらいのスパイの名前かと思っていましたが、なんでここで出てくるのかという話で。

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話を戻すと、ストライプには、それぞれのラインをスワイプすることで、あらかじめ指定したアプリを起動する機能があります。
ストライプをスワイプする動作とアプリの起動の結びつきが弱いように思いますが、なかなか便利です。ストライプはロックスクリーンにも表示されますが、ロック画面からは操作できません。

基本アプリは、ホーム画面上にも表示されており、アプリを立ち上げることなくアクセス可能です。
この機能は、Apple Watchにかつて搭載されていたグランスを思い出させます。


Apple Watchの場合は画面の小さや操作性の低さを補うために用意された機能でした。
BALMUDA Phoneの場合もコンセプトは類似していて、アプリへのアクセスを高速にし、スマートフォンをできるだけ使わずに済ますための機能となっています。

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また、機能には関係ないものの、背景には独特の模様が使われており、一部の基本アプリの背景にも採用されています。

この模様は、紙幣等の偽造防止に用いられていたグラフィックがモチーフとなっています。政府お抱えの職人にしか彫れない細かい線を無数に彫り込むことで、紙幣等の偽造を防いでいたものです。見た目の重厚感を演出するのにも一役買っています。

BALMUDA Phoneの場合、偽造防止の意味は失われ、重厚感や豪華さを演出するモチーフとなっているようです。
リアルワールドから取り入れたモチーフなので、スキューモフィズム的なものとして捉えられそうですが、もともと平面上の要素して発展してきただけに、同じく平面であるスマートフォンのグラフィックとは相性が良いものと思われます。
スケジューラとメモアプリの背景には用いられていないのが残念です。文字の視認性に影響を与えないようにという配慮でしょうか。

ホーム画面には、他にもステッチ状の模様が描かれています。
革製品の縫い目をイメージしたものでしょう。
ただし、なぜかインカメの付近だけステッチが描かれていません。何かと干渉する可能性を想定してのことでしょうか。

ホーム画面は、全体として違和感なくまとまっていますが、偽造防止の模様の上にステッチというのは不思議な組み合わせです。


・スケジューラ

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ピンチとスワイプというスマートフォンの最も基本的な操作を用いて、ありそうでなかったインターフェースを実現したカレンダーアプリです。
私はこの機能が試したくて買ったようなところがあります。サブ機として使っていますが、とてもよくできています。

寺尾社長がインタビューで語っていたBALMUDA Phoneの開発経緯で述べられていたアプリの話が一番当てはまるのがこのスケジューラだと思います。

「結局のところ普段使いのアプリにそこまで数はありませんし、それらが素晴らしく使いやすいかというと、わたしはそうではないと思っています。どれも、「iPhone」が発明された当時からほとんど変わっていません。これはもっと完成度を上げられると感じていたものが多々ありました。それを今回やった、ということです。」
https://wired.jp/2021/11/08/balmuda-the-brew-interview-2/

天気の表示機能もあり、ピンチインしていくと、その週の雨が降っている時間の部分が水色で表示されて、予定の最中に雨が降っていることが分かるようにもなっています。

横向きで使えない、一度登録したカレンダーの種類を後から変更できない、デフォルトで設定される通知タイミングが変更できない、といった弱点もありますが、いつかアップーデートで直ることを期待しています。

操作性という点では、初代iPhoneの頃に開発されていても不思議ではないアプリです。


・メモ

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スケジューラ同様、ピンチとスワイプでメモの管理ができます。
拡大縮小できる付箋が並んでいるようなイメージで、メモ同士の位置関係が視覚的に把握できます。

私の場合、メモは完全にiPhone純正アプリに依存しているので、あまり使い道はありませんがよくできています。

寺尾社長はメモアプリに古いメモがたくさん溜まってしまうことを問題視していました。
BALMUDA Phoneのメモプリでは、全てのメモを視覚的に把握できるので、どこに行ったか分からない書きっぱなしのメモが生じにくくなっているということでしょう。

・ウォッチ

スマートフォンで時間を確認したければ、時計のアプリを開かずとも簡単に時間を知ることができます。
そう言う意味で、時計そのもののアプリは基本的に無意味です。

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ではなぜウォッチ(時計)というアプリがあるかといえば、ウォッチという名称が、ストップウォッチ、目覚まし、カウントダウンの機能の総称として便利だからです。
とはいえ、BALMUDA Phoneの場合は、時計機能でも時計のベゼルを用いた時間測定ができるようになっており、単なる時間表示以上の機能を付加しています。これは腕時計に搭載されていることがある機能ですね。

ウォッチのアプリでできること自体は、一般的な時計アプリのものと大差ありません。ストップウォッチ、目覚まし、カウントダウンの機能があるのも一般的なことです。
ただし、カウントダウンでは、表示した際に目盛の矢印が少し動くようになっていて、矢印を動かして時間を決めるという操作をうまく説明している点がよくできています。

また、各機能が円を共通の要素にしてデザインされている点に独自性があります。この円の元になっているのはアナログ時計の背景になっている円です。
これにより、アプリ内での統一感を生み出すことができています。

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また、ホーム画面からアクセスできるウォッチアップでも各機能が利用できますが、円を基本形にして、四隅に各機能を切り替えるためのボタンが配置されており、シンプルにまとまっています。

アプリ本体のインターフェースと、ホーム画面で表示する際のインターフェースを丁寧に作り分けていているのはなかなか凄いことのように思います。


・計算機

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「億」や「万」をつけた表示や、「億」 のボタンを押すと単位が億になるように0を入力してくれる機能などを搭載しています。
また、複数の通貨の換算を行う機能もあります。

どちらも実生活に即した機能です。関数電卓を搭載するiOSの電卓アプリとは真逆の立ち位置にあります。

サードパーティーのアプリで「億」や「万」をつけた表示機能のあるアプリがあるとの指摘もあります。
確かにそういうアプリはあるのでしょうが、そうしたアプリの存在が紹介されているのはこれまで見たことがありません。億万表示という機能を知らしめたということ自体に評価するべき部分があるでしょう。

また、ホーム画面と一体的に使えるというBALMUDA Phoneならではの便利さもあります。
見た目が基本アプリ間で統一されているのも、使っていて気分が良いポイントです。

カメラ

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カメラアプリは非常にシンプルです。
世代を重ねるごとに機能が増えて複雑化しつつあるiPhoneの純正カメラアプリとは対照的です。この辺りは世代を重ねていないデバイスならではの良さです。

また、画面比率と写真の比率が一致しているので、画面全体を使って撮影できるのも魅力です。

ただし、写真の画質はそれほどよくありません。
筐体が小さいために、大きなカメラのモジュールを組み込めなかったのでしょう。

寺尾社長がインタビューで語っていた内容からして、カメラにかなり力を入れているのではないかと思っていましたが、そうではなかったようです。

「例えば、日本の大手メーカーが高性能なスマートフォンを開発したとしましょう。そのカメラの部分だけ高性能な部品に置き換えたスマートフォンを、カメラメーカーが出すようなことも可能になるわけです。でも、高性能なカメラを搭載したスマートフォンをゼロからつくれば、莫大なコストが必要になります。その「ゼロからつくる」を、われわれはしているんです。」
https://wired.jp/2021/11/08/balmuda-the-brew-interview-2/

カメラの話はあくまで例え話の域を出るものではなかったということでしょうか。

また、連写性能が著しく低く、動いている被写体を連写で捉えるといった用途には不向きです。この辺りはCPUのスペック不足が響いているのでは無いかと思います。


・その他

バルミューダ製のアプリとして紹介されていないアプリについても、アイコンや背景がカスタマイズされているようです。

・今後登場予定のアプリ

現時点では、BALMUDA製アプリは5つですが、今後も新たなアプリを公開する予定だそうです。
発表会では、アプリのアイコンがいくつか公開されていました。

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https://youtu.be/qpyaM8MdOCY

左から順に、ブラウザ、メールorメッセージ、テキスト入力、設定、ファイル管理といった感じではないかと予想しています。
かなり適当に言っているので、あまり真に受けないでくださいね。それにしても左から2番目のアイコンは、AppleのSwiftのロゴにそっくりです。

基本アプリを増やそうとしているのは、ホーム画面からアクセスできるアプリを増やしたいからという理由もあるのかもしれません。

基本アプリが増えていき、純正アプリだけで可能な範囲が広がると、「Another」がより際立ってくるのではないかと思います。




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