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#11 毒親との関わり方 ~人生初デートは開戦の狼煙~

ついに、人生初デートの日。

お互い高校生なので、授業が終わったあとの制服のまま、夕方から、彼の地元の駅で待ち合わせしました。

このときはさすがに、心臓に毛が生えてる私とはいえ、ほんとドキドキしました。何せ、お互い「顔は知らない」のです。

許容範囲の顔じゃなかったらどうしよう。遠くから見て、どうしてもムリだったらそのまま帰るべきだろうか、などと、自分の顔は棚に挙げて頭を巡らせているうちに、待ち合わせの駅に着いてしまいました。

そして、降りるとすぐ、「あれかっ!?」という男が目に入りました。男、というより子供です。考えてみれば当たり前です、相手は16歳、高1なんですから。

イケメンとかブサイクとかそんなことより、「うわっ、子供!」と思いましたが、もう目が合ってしまってて、知らんぷりをするわけにはいきません。

そんなこんなで、毎日話してたくせに、お互いちょっと恥ずかしがりながら、いっしょに桜木町の駅まで移動しました。

ハマッ子というのは、ほんとにハマッ子であることに誇りを持ってますから、得意気に、これがオレの地元よ~!オシャレだろ!という感じで、みなとみらいを案内してくれました。

ランドマークタワーの下の広場で、いっしょに大道芸を見たり、マックでポテトを分け合ったり、彼がタバコをふかして煙で輪っかをつくって見せてくれたり(時代を感じますね)、夕暮れの大桟橋でたそがれたり。

最初こそ子供に見えたけど、時間を過ごすうち、彼の見せる男らしい姿に、そんな思いはいつのまにか消えていました。自己洗脳もあったかもしれませんが。

それにしても、初デートがこんな素敵な場所でできたこと、彼と神様に感謝するばかりです。

ほんとこのときは、18年苦しみ続けた人生が、やっと日の目を見たなあ、と、これまでの苦しみとこの日の喜びを天秤にかけたら平衡になるほどの、大きな幸せがありました。

そして、日が暮れた頃、あの有名なデートスポット「山下公園」にたどり着きました。

今ももちろん有名なデートスポットですが、あの頃(20年前)の山下公園は、比じゃありません。日が暮れれば、どこもかしこもイチャイチャのカップルだらけでした。

やっとのことで空いているベンチを見つけ、二人で座りました。で、このときはもう10月下旬だったので、めちゃくちゃ寒かったのです。自然に体がくっつきます。

そして、しばらくくっついてホワンとしていたら、彼がふいに、

「前の彼女に、キスが下手って言われた」と言うのです。

ここでおさらいですが、私はこの時点で、処女なのはもちろん、キスをしたことなど当然ありません。デートすらこれが初めてなのです。そのくせ、16の彼が「前の彼女」とは、なんとも生意気な話ですが、

でも、このころの私は、お姉さんぶりたくて、彼との最初の電話の時から、「(遊び人ではないけど)あなたより多少経験はあるわよ」的な雰囲気を醸し出していたわけです。

だからこそ彼は、「良いキスの仕方を教えてくれ」というニュアンスのことを言ったわけで。笑っちゃう話ですが。

でも、何でしょう、私にはなぜか自信があったのです。彼を腰砕けにするようなキスができる自信が。

そして、

「してみる?」

といって、自分の考えうるなかで一番良い、長い長いキスをしました。耳や首筋まで。

「すげーーー」

と、腰が砕けた(?)彼が一言。

みごと、私はキスミッションを成し遂げたわけです。笑

思えばこれが、私が常々言っている「人生何事もまずはハッタリ」の源泉になってるような気もします。

それからはもう、今書いててもこっぱずかしくて仕方ありませんが、それこそ一晩中、キスしまくってました。ちょっとはウトウトもしたかもしれません。

そして空が白んできたので、学校へ行く電車の時間まで、ゆるゆるとそのへんを散歩しました。

さらっと書いてますが、この日私は、初めて「無断外泊」をしたのです。いろんなことをすっ飛ばして、無断外泊とは、いかにも不良の私らしいですが、笑

同じ宗教の仲間としか結婚してはいけない、婚前交渉禁止、そもそも宗教人同士であってもデートで二人きりはNG、という親の信条があるなかで、宗教以外の男とデートし、しかも二人きりで、さらにキスまでしたなど、反逆どころの騒ぎではありません。戦争です。殺し合いです。

私は戦いの狼煙をあげたわけです。「あんたたちの教えに従って生きるつもりはないぞー!」と、親に全面対決の合図をしたと。

そして、だいぶ歩いて、日本丸の前に着いたとき、朝の7時くらいだったでしょうか、家に電話し、「今日はこのまま学校に行きますので」とだけ伝えました。親は向こうで何か大声で叫んでましたが(笑)、せっかくの二人のデートを邪魔されたくなかったのでブチ切りしました。

日本丸の前で、彼にもらって吸ったタバコの味、初めて味わったクラクラ感、昨日のことのように覚えています。これもまあ、時効ということで。

そしてついに、初デートの終わり。

桜木町から二人で満員電車に乗り、ギュウッとくっついて立っていた、その耳元で、彼が

「俺と付き合って」とささやきました。

「うん」とうなずきました。

やったあ、念願の念願の悲願の彼氏ができた!!!しかも、素敵なデートスポットでデートして、満員電車で抱きしめられながら告白されるなんて、こんな王道?で良いの、、漫画みたいでいいのーー!と、

夢が叶ったうれしさと、これから待ち受けるもろもろに、胸はドキドキではち切れんばかりです。

そして、学校に着いて、昨日と全く同じ服装で登校してきたことに気づいた友人たちは、「コヤツ…やっぱりやったな…はじめやがったな…」という顔をしておりました。

続きは次回。

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