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HANIKAMU!!

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紹介していただいた記事や蜂賀が気に入った記事等、とにかく素敵なものをまとめたマガジンです。
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#ショートショート

秋の落としもの (150字ショートショート)

朝の参道に、なにか白い欠片が落ちていた。 かき氷の容器だろうか。 それとも誰かが落とした綿飴か。 昨晩はこの夏最後の縁日だった。 澄んだ秋風がすり抜けた。 それがふわりと舞い上がる。 目で追えば、天蓋を覆う鱗雲。 端に小さな穴―― 鱗が1枚欠けている。 そこに白い欠片はぴたりと嵌まり、鱗雲は高い空をゆったり泳ぎはじめた。 季節のなかでは初秋が一番好きです。一年中、秋の国に住みたい。 もう人生で何十回も秋を経験しているはずなのに、毎年この時期になると「嘘っ

自由研究 (150字ショートショート)

夏の自由研究で博物館に来てみると、クラスのテルとララもいた。 「君たちも夏の自由研究?」 「いや」テルは首を振った。 「春の自由研究だよ」 「私は秋と冬で悩み中」と、ララ。 「良かった、みんな被ってなくて」 ここには大昔に絶滅した〈四季〉が展示されている。 目玉は完全復元された〈猛暑〉だが、なぜか僕以外には人気がない。 Web Novel Labo 様のトップページに掲載して頂きました。 (2022年8月末)

鍋に入るカニ

今日は彼女との初めてのおうちデート。 俺は、カニ好きだという彼女のために、あらかじめ、タラバガニを取り寄せていた。 発泡スチロールの容器に入って冷凍で送ってきたタラバガニは、新聞紙に包んであるまま、冷凍庫に入れておいた。 一緒に家で映画を見て、いよいよ、蟹鍋たーいむ! 彼女がくる前に、冷蔵庫に移動して解凍をしておいた新聞紙の包みをニタニタしながら取り出す。 新聞紙を取るとトレーの上にパックされたそいつが出てきた。 「なんだこれ?」 そこには、タラバガニではなく青と白

鍋に入るもの (入るシリーズ ※本作は毎週ショートショートnoteと無関係です)

  そもそも青白の立方体にからんだのが間違いだった。いつのまにか犬だけでなく、蜂まで…。  そっと傍観していた私は我慢できず、割れた瓶から出てきた蜂と犬を連れて帰る。それらをまとめて軽く洗って絞り青白ツートンカラーの新種のかにといっしょに鍋に放り込む。  今までの話を総合するに、この料理がうまくいけば落選続きの私でも次の公募で必ず受賞できるはず。  しかしうまくいかなかった。鍋の中で浮かび上がる文字様灰汁と一緒に、蜂、かに、犬が茹だるどころか三つ巴になって争っているでは

鍋に入るカニ

 友人から分けて貰った青と白のツートンカラーのカニを利尻昆布と一緒に茹でる。カニがうふうふと鍋の中で不敵に笑っているように見えた。 「赤くならないな?」  茹で時間を聞くのを忘れていた事を後悔している間に、どんどんアクが増えていく。 「わ、やば」  慌ててカニを皿にあげる。茹で上がったカニは、茹でる前と何ら変わらずの姿で利尻昆布で遊んでいた。  アクを丁寧に掬い取ると、鍋に青く透き通ったカニの出し汁が残った。その出し汁が遠い記憶の海に見えた。懐かしい潮の匂い。 ーー呼ばれてい

瓶に入るハニィ

(こちら内輪受けが多分に含まれている劇薬です。何が何だか分からない方はこちらを) 「このハニィを瓶に入れると、コンテストが出てくるんだよ」 友人はそう言うと、黄と白の少年っぽさの残る可愛い蜂を瓶に入れた。更に野いちごや杏も入れて蓋をした。 ポコポコ、ポコポコ……。 常温でしばらく蜂を放置すると、発酵が進んで瓶の中に公募が浮き出てくる。 「なにこれ?」 「だからコンテストだって。あ、温度が重要なんだ。熱くなると、公募だらけになりやすいから」 「ふーん、不思議な蜂だ

【活動報告】Web Novel Laboにて作品紹介いただきました。

 クリエイター蜂賀三月さんが管理人を務めるサイト「Web Novel Labo」の記事内で、過去作「怪獣のいる世界に花は咲く。」をご紹介いただきました。  この作品は、YOASOBIコンテストに応募した作品で賞にはかすりもしませんでしたが、応募にあたって色々な人に原稿を読んでもらったりしながら、批判を受けることはあっても、何を描くか、何を面白いとするかは、自分で決めるべき、というポリシーが出来上がったりと、自分の中で初めての試みをした作品でもあったので、光を当ててもらえて嬉

自由お題|みんなの作品ピックアップ #2|ショートショートnote杯

こんばんは、戸画美角です。 #ショートショートnote杯 の『自由お題』をすべて読ませて頂いたので、その中から私がとくに気に入った作品をピックアップしたいと思います。 趣旨については、最初の記事などを読んでいただければと思いますが、一言でいうなら”面白い作品を埋もれさせたくない”という話ですね(そして多くの人に読んで欲しい)。 ◆ 関連リンクピックアップ企画の第1弾: しゃべるピアノ 1億円の低カロリー 株式会社リストラ アナログバイリンガル 違法の冷蔵庫 数学ギョ

SSN杯〆切まで抗うイベントをやってみた

 ショートショートnote杯 の〆切が近いのに作品をあまり出せていなかったため、このような企画を発案させていただきました。  結果的に、〆切までほぼ3日なのに3名の方が集まってくれて、無事に応募作品を増やすことができました!! 今回の記事で企画で出たお題や参加者の作品をまとめながら、感想などを話していこうと思います。 参加メンバーと引いたカード・蜂賀 三月 「朝の」「涙」「缶詰め」 ・射谷 友里さん 「ラップ」「二重人格」「イライラする」 ・星 彩さん 「部」「石けん

創作の輪を広げる #アドベントカレンダー2021

記事をご覧いただきありがとうございます。 当記事はnoteのお題企画「#アドベントカレンダー2021」に参加するものです。 プレゼントをひとつひとつ開封するように 25名のクリエイターの作品を、クリスマスまでお届けします。 (参加クリエイターの皆様へ) 記事は担当日が来る前、もしくは当日に公開してください🙇🏻‍♂️ ※当日以前にURLを登録していても、カレンダーからは当日にしか記事に飛べないのでご安心ください😊 お手数をお掛けしますが、よろしくお願いします! 当アドベン

君に贈る火星の|ショートショートnote杯|みんなの作品

こんにちは、戸画美角です。 というわけで第10弾もとい最後の『君に贈る火星の』からピックアップしてみたいと思います。 趣旨については、最初の記事を読んでいただければと思いますが、一言でいうなら”面白い作品を埋もれさせたくない”という話ですね。 これまでの作品は以下より。 まえがきそんなわけで、執筆時点(2021/10/23)での全作品を読ませていただきました。 いやはや、このお題はかなり作品が多かった気がします。 ”君に贈る”は人間ドラマの題材にピッタリですし、”

たった410字以内! 誰もが気軽に応募できる小説コンテスト「ショートショートnote杯」を開催します!

ゲームで遊ぶことをきっかけに、新しい作家さんがこの世に誕生してほしい。そんな想いからプロジェクトメンバーみんなで開発したカードゲーム「ショートショートnote」が6月に発売され、多くの方に遊んでいただきました。 発売から3か月、いよいよ発売当初から計画していたnote上でのイベントが始まります。 商品の発売元「株式会社パートナーズ」主催、本ゲーム監修の田丸雅智さんを審査員長に迎えて開催する、note上でのショートショートコンテスト。 題して、「ショートショートnote杯