本を指でなぞってみる。机に伏せてみる。 窓から吹いてくる風に押されて靡くカーテン。 廊下から聞こえる足音で、 そっと机の中にしまった本。 知って欲しくなくて付けたブックカバー。 知りたかった外して欲しかった、ブックカバー。 誰にでもするけど本当は少し気持ちが違うこと。 そう思えばそう見えてくること。 たまたま同じものを選んでしまうところ。 夏休み初日にすれ違ってしまうこと。 音も立てず消えてしまいたいのは 追いかけてきてくれる気がしてしまうから。 目を逸らしてしまうのは
机に伏せて寝たフリをした。いつもは綺麗じゃないからしないようにしていること。 寝ても寝ても、眠たくなくても、もう眠りたい。寝てしまいたい。起きていたくない。そう思った。目を開けたくない。ご飯も、お腹は空くのに、いらない。食べたくない。 どうしたの?と優しく声を掛けられて、目を開けてみたけれど、結局目を閉じてそっぽを向いた。瞼の裏は罪悪感で塗りたくられていた。 家じゃ誰も気にかけないのに、外で誰かに気にかけられてもこんな態度をとる。話したって気持ちが軽くなりはしないのに。
アイコンが緑色に囲まれていて、お友達のストーリーに写っていて、ディズニーに行っていて、インスタが動いていて、サブ垢も繋がったままで、安堵した。 救い方を間違えた。選択をミスした。手を振ってしまった。そっとしておくべきだった。迷惑をかけた。嬉しくて、見つけて、手を振ってしまった。わたし以外もいるのに。 眠たくなる。時間の流れが遅くなる。爪が青紫になるほど冷えた手先を温めてくれる。斜め前の席の人の頭を撫でている。あの子のくれたポッキーをひとつ分けてくれる。 いちばん好きなポ
何も上手くいかなかった。1時間目からアカムシの首を切り落とし唾液腺を引っ張り出した。くるくる丸まったり伸びたり気持ちの悪い動きをしていた赤のミミズのような生き物は首を落とされた途端動かなくなって、ちっとも怖くなくなった。 生殺与奪の権利を握られていたところから形勢逆転、握る立場になると本当にどうでも良くなった。唾液腺は一応見えたが何もよく分からなかった。 第一志望の大学に落ちて再チャレンジしようとしているところで、併願の大学と連チャンになる絶望。倍率が4倍だった。わたしを認
篠澤広という遠いところにいるアイドルを好きになった。 これは篠澤広のネタバレだけど、「わたしにいちばん向いてないと思ったから」という理由でアイドルを選んだ彼女にもう一度、「なぜ、アイドルだったんですか?」と聞いた。 わたしは今、その答えに心臓を撃ち抜かれて5日が経っている。 「かわいくなりたかった」 2018年が好きだ。2018年のK-POPが好きだ。2018年の美容垢が好きだ。2018年がとにかく好きだ。ふと思い出しては何度もノスタルジーに浸っている。 教室の隅でぼ
「努力は報われる」という言葉には賛成派と否定派がいて、賛成派は実際に努力して成功した人と、失敗したけど別のところでその経験が活きた人がいて、その中の誰かが、他のどのライバルよりも1時間長く努力し続ければある程度迄は夢は叶うと言った。 頑張ったことに対して結果がつくことを怖がることがある。全力で作ったものを否定されてしまったら、自分の全力が、自分の全てが否定されてしまうのではないか、と。 矢口八虎もそんなことを言っていた。 以前芦田愛菜さんがあるインタビューでこう仰っていた
「一切皆苦」という言葉がある。仏教用語なのだが、簡単に言えば「人生って思い通りにいかないよね」という意味である。 人生ってそういうもの。上手くいかないのがデフォだって思ったら少しは楽になれるかな。 わたしは自信はないくせにプライドは高いから、わかったような口をきかれたり、わたしの行動を、判断を、コントロールしようと振る舞われたりすると、逆の行動を取ってしまう。 自分の感情を上手く管理できないから、理不尽にムスッとした態度をとってしまうこともある。 そんな態度だから誰か
一分一秒さえ無駄にするなと急かされる受験生。本当はnoteも一度休止するべきなんだろうけれど、怠惰なわたしはなかなか辞められない。 この先にどんな未来が待っているのだろう。 不確定な未来は霧のようで、心の迷いがそのまま道の迷いに繋がってしまう。 クラスのみんなが夜中まで勉強していて、どうしても焦ってしまう。焦らなきゃいけないほど危機的状況なのは確かだけれど。 「それは結局他人としか比べてないじゃん。他人と比べて落ち込んでちゃダメだよ。私はここに行くんだって意志を持って毎
おやすみ。ウザイ世界
「資料集めっちゃ読み込んだ」 「古典めっちゃとれたわ。日本史も」 「絶対数学Ⅱ見ないから答え合わせしてもいい?」 「歴総全然取れないんだけど」 「リーディングめっちゃ悪い!」「わたしも」 「いや絶対私の方が悪いよ」 「うーん、ちょっとね」「ほらー」 「現代文やばい。古典続きあるの知らなかった。」 教室が受験に向けて動いている。 去年まで文化祭一色だったこの時期は、主導権を握る人たちが受験勉強に励んでいてあまり雰囲気が感じられない。このクラスらしくていいなと思う反面、この娯楽
くだらないことを言って笑うところが好き。おはようって声をかけたら、小さく手を振っておはようと返してくれるところが好き。 中央にある水道の蛇口から水がゆっくり、ゆっくり重力に誘われて落ちていくように涙を流すあなたを見て心が張り裂けそうになるの。 泣かないで、苦しまないで、わたしが素直になれるくらい素敵な人なのに、どうして? 大丈夫だよ、ずっと一緒にいようよ。わたしが目を開けているから、安心して目を瞑っていてよ。 やっと目を瞑れても、すぐには眠れないよね。考えちゃうよね。人は考え
出会い、というものは6割忘れられ、4割強く印象に残る、と体感する。 2022年のあの聖夜に、ある一角でここだけが当たり前のように放った。それはあまりに強い光を放って、ここだけでは収まりきらなくなって、外に漏れ出た光はまた新たな人々を“当たり前”へと引き込んだ。 “意味の無いもの”だと括って見向きもしなかったものが、時を経て“ものすごく魅力的なもの”に変わっていた。 とても優しい世界に逃げていた。僅かな空気の揺れにすら敏感になっていた頃、信用出来る手に背中を摩ってもらいた
「人を救うことができるのはね、救われている人間のみですから」 と、ある人が話の中で零していた。 救われた側のわたしは、救いを求めていた側だったわけで、救いの形をよく探っていた。 放っておいて欲しいのか、寄り添って欲しいのかとか、黙って聞いて欲しいのか、あなたがいちばん大変な思いをしていてがんばっているよと言って欲しいのか、そういうことあるよね大変だよねと言って欲しいのか、解決策を一緒に考えて欲しいのかとか。相手にとって自分は助けて欲しい人なのか、いつも通りでいて欲しい人なの
ずっと心の奥にいたレヴィアタンちゃん。 でもね、あなたのことを書くなら今日だと思ったの。 ☪︎ 特別でいちばん 仲良くしてくれる人みんな大好き。だから、あなたのことももちろん好き。 わたしとあなたはまだ友達ではないけれど、わたしはあなたのことが好き。 高校で、あなたに新しい友達ができていたらどうしよう。わたしよりも先にあなたと仲良くなる人がいたらどうしよう。あなたがもし誰かと恋に落ちてしまったらどうしよう。あなたがわたしと仲良くなろうとしなくなってしまったらどうしよう。もう
17歳になることをずっと待ち望んでいた。 ずっとずっと今日を待っていた。 奈良坂くんを先輩と呼べなくなってしまうけれど、奈良坂くんと同級生になれる年。 それになにより、個人的にすこし、いいえ、かなり、この歳に思い入れがあって。 だからこの場所にはすごくパワーをもらえると思っていたし、恩返しをしなくてはならないとも思っている。 どんな一年にしようかな。 年始に言ったように、やりたいことをなるべく多くの人に言って、自分で掴めない機会を運んできてもらう傲慢さは持ち合わせていた
怒り方を知らない。どこからが怒りなのか、どこから怒っていいのか、わからない。 ただ今まで得た知識と経験が、これは「憤怒」だと、そう教えてくれた。 7つあるうちの重い方から4番目。「憤怒」というこの感情は“大罪”とされるらしい。 憤怒はどうして大罪に数えられているのだろう。 怒らせた人こそ大罪ではないか。どうして怒る側が悪いのだろう。都合の悪い者。そんなの、こちらからみても同じなのに。 そんなペラっペラな感情だけでその正義が通ると思っているのだろうか。甘い。甘すぎる。原因を