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アートセラピーと持続性について

久しぶりのnoteです。
ふとひらめいたことや伝えたいこと、日々たくさんあるのですが、いざ言葉にしようと思うと.…トテモムズカシイ!
言語化への難しさや怖さは、わたしが数ある心理療法の中からアートセラピーに惹かれた動機にも関わります。だからこそ、向き合って、がんばりたいことでもあります。
カメの歩みですが、記事にお付き合いくださる方々に感謝しつつ・・・

3月も後半にさしかかり、今年度の締めの作業を行なっています。
個人セッションやセラピーグループなどは、年度の区切りを意識することはほとんどありませんが、大学や専門学校の授業、自治体等から依頼講座など、年度で動いている活動もあります。
また助成金や補助金等を受けている活動があると、個人の確定申告と重なって、3月はちょっとした(いや、実のところ大層な!)修羅場を迎えます。

私の主宰するアップコンセプトは、昨年度末まで子どもゆめ基金の助成事業を実施していました。
当初は諸芸術による支援をテーマとした援助者向けシンポジウムの開催が目的でしたが、その後、乳幼児親子向けの絵本とアートの活動、小学生を対象とした自由な表現を楽しむアトリエ活動、DV等の家庭で育った子どもたちのアートセラピーグループなど複数事業が加わり、トータルで13年間、基金にはお世話になりました。

支援者向けシンポジウムでは、様々な分野の方にご参加いただき、諸芸術と支援について、ディスカッションや体験を重ねることができました

支援にアートを取り入れる利点の一つに、利用者側のハードルを下げ、入口として気楽に入りやすい活動を作り出せるという側面があります。
カウンセリングや心理療法の枠組みでなく、地域の子どもたちや困難な環境にある子どもたちに、アートを用いて広く予防的・心理的援助となる活動を届けたい、というのが元々の願いでした。
多くの子どもが気軽に参加できる活動を展開するためには、参加者の金銭負担を抑える必要があります。また、医療やカウンセリング機関等は敷居が高く感じますので、地域センターやカフェのような気軽な雰囲気の会場で実施したいというこだわりもありました。

乳幼児親子向け「えほんの時間」は毎月1回、地域の親子が気軽に立ち寄り、読み聞かせやアートタイム、育児の情報交換など、集いの場となりました

画材費、会場費、人件費、チラシ印刷費等々、活動を継続するための費用を、助成団体がサポートしてくれることは本当にありがたいことです。参加者からは喜びと感謝の声が届き、団体としても助成活動から大きな恩恵を受けました。
しかしながら、アップコンセプトは昨年春で全ての助成活動を一旦終了する決断に至りました。
持続することの難しさを感じ、少々苦い思いを残す経験ともなりました。
継続する上での課題は何だったのか、思いつくことをまとめてみたいと思います。

①事務作業の負担をいかに解決するか
助成活動を実施していくには、申請書の作成、助成元からの承認作業、チラシの作成や配布、助成事業の看板設置、活動風景の撮影、指定方法での支払い処理、報告書作成など、活動ごとにさまざまな事務作業が生じます。
事務を担う部署や人材が確保されている大きな団体や企業にとってはたいした仕事量でないのかもしれませんが、セラピストが隙間時間に行うには時間的にも精神的にも負担が大きく、年度末になると疲弊感が強まるようになりました。
小規模団体の多くが、同様な理由で助成活動からフェードアウトすると聞きます。長年続けて慣れてくる面もありますが、蓄積していくとバーンアウトの要因になることを身をもって感じました。

②社会状況など外からの影響にいかに持ちこたえるか
ここ数年のコロナ禍の影響は甚大で、開催中止や参加者減少など、安定的に活動ができない時がありました。その際には、購入済の画材が支払われない、スタッフ費用が削減される等、活動団体が費用負担を担うことが増えました。助成頼みの構造の問題が浮き彫りになりました。
米国の知人から、政治的な方向性が変わると福祉関連の予算が大幅に削減されて現場がパニックになる、という話を聞いたりします。外側からの影響にも耐え得る力をいかにつけていけるのか、どこの世界にも共通する課題といえるでしょう。

③活動趣旨や方向性をいかに調整していくのか
支援の視点をいれるほど、オーダーメイドな対応になります。参加者によって様々な配慮が必要になり、スタッフの人数や専門性を要します。また困難な状況の参加者を対象とすれば、よりプライバシーを重視することになります。セラピーの視点では、活動中に多くの写真を撮る、事後にWebなどでに活動レポートや写真を載せるといった行為が倫理面等からも馴染まない活動もあります。
結果的に、多くの子どもを集め楽しむことを目的とした余暇活動とは、スタッフの配置の仕方や広報の方法が異なっていきます。助成元団体の主旨と活動内容が合致しない時に、諦めずにこちらの考えを届けていきたいと思っていましたが、この部分の一致をはかるのは簡単なことではありません。
助成活動である以上、出資者への説明としてわかりやすい指標が必要であることも理解できます。活動の評価として「子ども1名にかかった費用」という観点がありますが、「小規模で手厚い活動=効率が悪い活動」となってしまいます。
現場の声をどう伝えていくのか、大きな課題と感じます。

続けることには必ず意味があるはず。
利用者のニーズに沿いながら、提供者側も無理なく続けていく道とは?
SDG‘sが叫ばれる世の中、小さな小さな活動ですが、持続可能なあり方を模索していきたいと思います。

年長から小学生まで、アートや自己表現が苦手な子どもでも、作ることを楽しむことを目的に開催された表現アトリエワークショップ

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