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斬られて候16

恩人である是枝が、この撮影を最後に役者業に終止符を打つと考えるだけで、眉間が痺れてしまう。鼻がジーンとする。

「死体が身を震わせるなどしてはならぬ」是枝に、斬られ役として始めの教えに言われた言葉だ。

是枝の有終の美を、助けてもらった人間が泥を塗るなんていかん。

思い出すと益々涙が込み上げてくる。是枝の引退は、越野と福富以外は知らされていない。

誰にも悟られぬように深呼吸をし涙を引っ込めた。
口の中に砂利が入り、舌の上を小石が踊る。
カメラがこちらを向いてないのを確かめて、頭を持ち上げ、是枝に一瞥をくれ、小石を噛み砕く。

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