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原状回復工事のトラブルを回避するにはどうしたら良いですか?(マンション経営Q&A)


(Q)原状回復工事のトラブルを回避するにはどうしたら良いですか?

(A)不動産業界において原状回復は賃貸契約が終了した際にその物件を契約開始時の状態に戻すことを指し、「本来存在したであろう状態」に戻せば良いとされています。
現状回復工事で問題になるのは一般的な生活で発生する汚れではなくて、物件の契約者による故意・過失、その他通常の使用を超えるような損耗・毀損(きそん)に関してすべて修理・復旧する必要があり、契約時の状態に戻す必要があることです。
その際に発生する費用は契約者の負担となるのですが、どこまでの損壊・汚れを契約者が負担するのかが原因で揉めることが多いです。
そのトラブルを回避する方法をいくつか記載します。

・賃貸借契約書に費用負担を明記する。
原状回復の費用負担については賃貸借契約書に明記し、借主に説明することが大切です。
口頭のみではトラブルになるケースもあります。
ただし、借主が一方的になるようや不利な特約は、消費者契約法により無効となる可能性があります。
ガイドラインに沿った取り決めが必要です。

・入退去時の物件状況及び原状回復確認リストを作成する。
『入退去時の物件状況及び原状回復確認リスト』とは、国土交通省が提供しており、入居時と退去時の物件の程度差を明確にすることができるリストです。
このまま使うのも良いですし、各不動産事業者の原状回復の規定に合わせて変更することも効果的です。
記入する際は入居時と退去時に綺麗な部分と汚い部分を明確に記しておくことで、退去時に発見した汚れやキズが入居時からあったものなのかすぐにわかるようになります。
また、記入したリストは入居後に不動産事業者と契約者(必要であればオーナーも)で1部ずつ保管しておけば、改ざんの心配がなくなるので、個人情報が記入されていないことを確認して、お互いに保管しておくのがおすすめです。
「入退去時の物件状況及び原状回復確認リスト」
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001595154.pdf

・入居時と退去時の状況を記録する。
入居時の状態を記録として残しておくことで、退去時に修理・クリーニングを行う箇所の責任の所在を明確にできます。また、記録として残しておけば、原状回復をする際に業者に対して『原状がどうなっていたのか?』を説明できるので、修理・クリーニングを依頼する時に作業が円滑に進みます。
入居時の記録の残し方としては、以下の方法がおすすめです。
 ・国土交通省が提供する原状回復確認リストを使って記録
 ・動画・写真・イラストなどにより記録
オンラインで内見を済ませる方も増えてきているので動画による記録は効果的です。
オンライン内見の映像をそのまま記録しておけば、実際に入居者が見た映像をそのまま記録として残せるので、退去時に『見た・見てない』で揉めるリスクが下がります。
記録の質を上げたい場合は、『入退去時の物件状況及び原状回復確認リスト』と『動画・写真の記録』を合わせて保管しておけば、細かい部分まで記録として残せるので、退去時に細かい指摘が契約者からあっても対応することが可能です。

・特約を記載して契約者に伝える。
賃貸契約書に『特約』を加えることで、オーナーが負担する修繕費用を減額できます。
特約に関してはオーナーの負担額を減らせるメリットがありますが、入居者側からは『通常であれば払う必要のない分まで払う』ことになるので不満に感じてしまい、そこからトラブルが発生する可能性もあります。
そのため、最初の契約時に担当者は必ず特約があること説明して、承諾してもらうことが大切になります。
また、可能であれば説明時に動画を撮って記録に残したり、別添えで特約事項をまとめた書類を入居者に渡したりしておくことで、揉め事を防げる可能性が高まります。

・「耐用年数超え=入居者負担ゼロ」ではないことを伝える。
耐用年数を過ぎた家具や設備の残存価値は基本的に1円とされています。しかし、原状回復の際に耐用年数を超えた設備等であっても、修繕等の工事に伴う負担を入居者に請求する場合があります。
例えば、経過年数を超えていたとしても物件の設備として使用継続が可能な場合には入居者が故意・過失により使用可能な設備を破損し、使用不能としてしまった場合には、賃貸住宅の設備として本来機能していた状態まで戻さなくてはなりません。
その際にかかる費用は入居者へ請求することが多く、それを知らない入居者は「耐用年数を過ぎているのだから支払いを拒否する」といった理由で揉めてしまうことがあります。
そのため、退去時に耐用年数について揉めないように、あらかじめ『耐用年数越え=入居者負担ゼロ』ではないことを伝えておいた方が良いでしょう。

・オーナーとの連絡をこまめに取り内容を決める。
原状回復費用を支払うのは仲介業者ではなくオーナーです。もし入居者側が原状回復費用に不服があって減額を求めてきた場合、オーナーと話し合いをする必要があります。もし、入居者の要望が通らなかったとしても、オーナーと連絡をしっかり取ったうえで交渉したができなかった旨を伝えれば、入居者も納得せざるを得ません。
ここで重要なのは、オーナーとの交渉をスムーズに行える環境が整っているかです。例えば、入居者が要望を出してきたとしても、オーナーとのやり取りがスムーズに進まずに時間がかかってしまっては、入居者の機嫌を損ねてしまう可能性があります。
ですので、普段からオーナーとの連絡をこまめに取りコミュニケーションをとっておけば、『普段何時ごろなら連絡が取れやすい』『この曜日は連絡がつかない可能性が高い』といった判断ができます。そうすれば、入居者とオーナーの間に入っても円滑に話し合いを進めることができるようになります。


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