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時間が、経ったからこそ

2月13日に福島県沖を震源とするM7.3の地震がありました。みなさん、ご無事でお過ごしでしょうか? 東京も大きく揺れました。この地震は東日本大震災の余震だったそうですが、10年前のことを思い出してしまう方も多かったかと思います。

2011年から「Art Support Tohoku-Tokyo(東京都による芸術文化を活用した被災地支援事業)」を担当し、なんらかの災禍が起こるたびに、震災後の経験から何が言えるのだろうか? と考えてしまいます。コロナ禍で、震災のときはどうだったか? と聞かれることが増えましたが、いつも答えに窮してしまいます。それでも、この頃、実感するのは「災禍の経験は人それぞれだ」ということです。

2020年6月末に「震災後の経験を未来に伝えるメディア」としてウェブサイト『Art Support Tohoku-Tokyo 2011→2021』を立ち上げました。「東日本大震災から10年目、いま何を考えていますか?」、「10年目の手記」、「こどもだったわたしは」、「震災後、地図を片手に歩きはじめる」、「あのときあのまちの音楽からいまここへ」、「10年目をきくラジオ モノノーク」、「2020年リレー日記」、「復興カメラ 今月の一枚」……複数の企画から、東北にゆかりのあった人たちの多様な声を掲載しています。

ある人は直後を振り返り、ある人はコロナ禍の現在を震災に重ね合わせる。あの頃、語れなかったことを語り出し、その後に起こったことを伝えようとする人もいます。「3月11日」や「震災」からイメージするものからは幅広く、ときに些細な出来事も語られています。10年という時間が経ったからこそ語れる言葉がある。そう思うと同時に、すでにあった、たくさんの経験にも気づかされます。

災禍の受け止め方は人によって異なります。その当然のような事実は日常の何気ないやりとりのなかにあり、聞く側の態度で見え隠れするものなのかもしれません。目の前の誰かの自分には見えない経験を想像し、それに触れようとすること。それは災禍に限って必要なことでもないのだろうとも思います。

ウェブサイトは、3月まで更新が続きます。ぜひ、震災のことやご自身の身の回りのことを振り返るため、ご活用ください。

本記事は、東京アートポイント計画のメールニュース「Artpoint Letter」の2021年2月号からの転載です。お申し込み(購読無料)はこちらから!