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「100日後」がやってきた(ことばの足音を追いかける〈3〉)

アートプロジェクトの現場で出会った、気配を残しては去っていくことばたち。どんな姿をしているのか。どんな道を進んでいくのか。その姿をちょっと追いかけてみるシリーズ、はじめます。

「100日後だね」。東京アートポイント計画の係会(チームのミーティング)で、そんなつぶやきが漏れたのは先月、6月頭のこと。7月頭(=4月1日から100日後)に向けたチームの動きを確認しているとき、東京アートポイント計画の立ち上げ当初から関わるプログラムオフィサー、大内伸輔が発したことばでした。

4月・5月は、東京アートポイント計画の各プロジェクトで、外向けのイベントやオフラインでの活動が制限されていました。そして6月の頭は、徐々に活動再開に入る直前の時期。ROOM302での配信スタジオ施工が始まる前、各プロジェクト拠点の段階的な再開が始まる前、Tokyo Art Research Labの講座参加者募集が始まる前、各プロジェクトではリモート企画の準備が進み、noteは立ち上げから2週間。今年予定していた事業計画を見直し、実施内容や再開の判断基準を少しずつ決めていきながら、動き出せるところから手探りで動きはじめた、ウォームアップのようなタイミングでした。

プロジェクトが動き出してしまうと、目の前のものを「やる」ことに忙しくなり、「少し先(あるいはもっと先)」からつい目線がずれがち。でも、「少し先」を見ようとすることは、リスク回避、事業の方向性整理などにつながります。
例えば、「段階的に拠点を開けていく」ときに、次の段階、次の次の段階、をどう設定するのか。そもそも何のために、どうなってほしいから拠点を開けるのか。オンラインの集まりからオフラインに移行することで変化することは何だろうか(それを「戻る」と呼んでいいのだろうか)。
動き出す前だからこそ、落ち着いて少し先の未来を想像してみる。あのタイミングで出た「100日」ということばは、少し先を見据える設定方法の一つだったように思います。

プロジェクトに伴走するプログラムオフィサーの姿勢を先を見据えて間に立つと表現したのは大内でした。見ようと思わないと見えない、時間の区切り。チェックポイントの設定。日々変化し、基準がないいまだからこそ、少し先の未来を見据える意識が、我々にはより要されているように思うのです。

昨年度末、世間をにぎわせていたのは「100日後」のゴールが設定された某漫画でした。「100日後」に向けて世間が沸いていた年度末から、“非常”の新年度を迎え、いま、静かに行われた「年度最初の100日」から「次の100日」へのバトンパス。
この次の100日後は10月半ば。本来ならば東京アートポイント計画ではイベント目白押しで、一年でも忙しい時期ですが、今年は各事業とも、そのとき実施できるであろうかたちを日々探っているところです。

今度はどんなバトンパスができるか。またここで、お知らせできればと思います。

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※追伸:100日というのは、短いようでひとつのプロジェクトが誕生から終わりまでを向かえることもあります。
(同じく大内が執筆した『10年を伝えるための101日 「東京アートポイント計画 ことばと本の展覧会」ドキュメントレポート』をご参照ください。一つの展覧会のアイディアが生まれてから会期が終了するまでの「101日間」の記録が綴られています)