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「ラジオの時間」という時間 (ことばの足音を追いかける〈2〉)

週に1度、たった5人が20分間だけ聞いているラジオ。

それは、墨田区を舞台に展開しているプロジェクト「ファンタジア!ファンタジア!―生き方がかたちになったまち―(通称:ファンファン)」の定例ミーティングのなかで設けている「ラジオの時間」です。

筆者の担当プロジェクトでもある「ファンファン」は、「対話」をとおして一人ひとりが持っている”当たり前”を解きほぐし、地域のなかで「学びの場」を生み出していくアートプロジェクト。豊かな対話のために、コミュニケーションの方法を工夫したプログラムを展開してきました。

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▲ファンファンがプロジェクトで大事にしていることをまとめた冊子
「これするとファンファン」より。

事務局内のコミュニケーションにおいても、会議の合間のおしゃべりや、同じ場所で一緒に作業することをとおして、ささいな気づきや細やかな情報共有を生みだし、時にはファンファンのプログラムのアイディアにも発展していました。しかし、コロナ禍でリアルに集まることができなくなり、「チーム内コミュニケーション、情報共有やリサーチの方法」に悩んでいたファンファン。5月、ある事務局メンバーの提案で生まれたのが、オンラインミーティング内で時間を設け、ラジオ番組風に情報共有をする企画「ラジオの時間」です。

毎週のミーティングに出席するのは、事務局+筆者の5人。2人と3人のチームに分かれ、それぞれテーマ担当(ゲスト役)やパーソナリティ役、ジングル役に分かれます。テーマを決めたら、事務局の連絡ツール、slackで共有。1週間、時にはテーマに基づいたリサーチをしたり、時には何かを鑑賞したりして準備します。当日、「ラジオの時間」のあいだはビデオ会議の画面を消し、全員音声のみで参加。1チーム10分ずつの交代制で、テーマにまつわる情報や意見をラジオ番組風に紹介し、もう一方のチームは静かに耳を傾けます。
これまで話してきたテーマは「映画『タゴール・ソングス』の話」「詩って何だろう」「記事『迷い方を知らないでいるといつか身を滅ぼす。』について」などなど。

連絡ツールとは別途に運用している、事務局の日々の気づき共有ツールGoogle Keep で、ラジオに「お便り」が届くこともあります(はがき投稿風の、メンバーによる他メンバーへの質問)。

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▲slackでテーマを共有

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▲それぞれの興味関心を持ち寄ってきた

5回以上の収録を重ね、先日は事務局作業日と合わせてオフラインでの収録などにも挑戦を始めました。やり方も色々と工夫を重ねたり、個々人のラジオスキル(!)があがっていったり、着々と進化している「ラジオの時間」。そんななかで大事なのは、「情報共有やリサーチの工夫」から生まれたというもともとの目的を忘れ、ラジオをすることが目的になってしまうような、本末転倒を避けること。それは、奇しくもタイトルから教えられているように思うのです。

「ラジオ」ではなく、「ラジオの時間」であること。プログラムやコンテンツといった、はっきりした“かたち”と“かたち”のあいだの時間が、プロジェクトには流れていること。それが大切な時間であること。自然と生まれたタイトルに、“会えない”あいだは忘れがちだった、そんな当たり前の時間を感じます。

「ラジオの時間」自体がプログラム化していくのか、それともほかのプログラムと連動したものになるのか。まだ、どちらの可能性も(もしくはほかの可能性も)ある状態。完成形に近づくことを焦らず、そのときできること、やるべきことを、「ラジオの時間」で過ごしていければと思います。

ありがとうございます!嬉しいです。
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(公財)東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京所属。東京アートポイント計画プログラムオフィサー。「アートアクセスあだち 音まち千住の縁」、「ファンタジア!ファンタジア!-生き方がかたちになったまち-」を担当。長距離通勤中。隠し技はクラリネット。

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