見出し画像

不確かなことに向き合い続けたら|HAPPY TURN/神津島「島の庭びらきプロジェクト」がはじまるまでの話

不確かさの中に留まる力

先日、ネガティブ・ケイパビリティという言葉を知りました。意味や答えを性急に求めることなく、不確かなことや、すぐには解決できないことの中に留まれる力のことを言うようです。

「ここは〇〇のための場所です」「こうやって使いましょう」「こういうことをしてはいけません」。そんなルールや方法を、あえて「決めない」ことにチャレンジする場面に、アートプロジェクトの現場ではしばしば出会います。

答えがない、不確かな状況に向き合い続けるのは、なかなかエネルギーが要ることです。でも、そんな中から生まれるものがあります。HAPPY TURN/神津島で、10月から新しくはじまった「島の庭びらきプロジェクト」もそのひとつといえそうです。

「決めない」ことへのチャレンジ

島の庭びらきプロジェクト」は、読んで字のごとく、島の人たちと一緒に、空き家の「庭」を掃除してひらいていくというもの。実にシンプルなこの企画のもとになったのは、拠点「くると」にある「庭」にまつわる話です。

神津島の拠点「くると」には、芝生が生え、竹垣に囲まれた「庭」があります。もともとは、古い大きな大工小屋が建つ、ブロック塀に囲まれた砂地でした。

「使いかたを決めない、なんでもない場所」。

拠点を設計した岩沢兄弟からのそんなディレクションに、事務局チームはしばしば悩み、もやもや。

「なんだかよくわからない場所だなあ」「公民館とはちがうの?」「店でもやればいいのに」。通りかかる人たちからそんなコメントをもらい続けること1年半。ブロック塀を撤去して、学生ボランティアと竹垣をつくり、島の人たちとみんなで芝の種をまいて、水をあげ、雑草を抜いて……とにかく拠点と庭をひらき、手を入れ続けてきました。

プールが持ち込まれ、キュウリは実をつける

そうしているうちに、こどもたちが集まってきました。

竹垣の残りの竹はすぐさま遊び道具になり、夏はビニールプールが持ち込まれ、お手製ペットボトル水鉄砲でのたたかいが繰り広げられ、スタッフが教えた「おに」遊びはちょっとしたブームになります。

大人はおとなで、遊んでいるこどもたちを見ながら立ち話をしたり、もらったキュウリの苗を植えて育てたり、故障したスタッフの原付を暗くなるまでみんなで黙々と修理したり。

このなんでもないがゆえに豊かな「庭」の風景は、今ではすっかり拠点「くると」を象徴するものになりました。

「なんでもない場所」をひらき続ける

「決めない」ことを続けてみたら、人が自然にあつまる豊かな「庭」が生まれました。じゃあ、こんな「庭」が島のあちこちにあったら……。そんな想像から「島の庭びらきプロジェクト」はスタートしています。次なる”不確かさ”の中から、さて、今度はどんな景色が生まれるでしょうか。

*「島の庭びらきプロジェクト」レポートや新着情報は、HAPPY TURN/神津島webサイトInstagramで更新中です。