かわいいコンプレックス

マッチングアプリが大好きだ。pairsに始まり、with、mimiなど様々なアプリに手を出し続け、最終的にはTinderに落ち着いた。実際に会い、食事した男は100人を優に超える。まさに「暇な女子大生」だった。

マッチングアプリは若い女の子にとって超売り手市場。アプリを起動してイケメンを右にスワイプするだけでどんどんメッセージが送られてくる。少しでも「いやだな」と感じたらマッチ解除のボタンを押して画面から削除してしまえば良い。私達若い女の子はちょっと盛れた自撮りをアイコンにしておくだけで、何の苦労もなしに、モテているという現象を疑似体験することができるのだ。

恋人がほしい時以外にもちょっと落ち込んでしまった時、誰かにすぐに構ってほしい時、私はマッチングアプリを対症療法的に使用する。30人もマッチすれば4~5人くらいはすぐにメッセージのやり取りが可能だ。彼らとのメッセージや電話で時間を潰し、寂しさを埋める。仲良くなれば食事に行く。そんな生活を、気が付けばもう5年ほど続けている。

たまにとてもむなしい気持ちになるときがある。彼らのほとんどの目的はセックスすることで、そのたった一つのつまらない目的のために女性ユーザーに無差別に口説き文句を送りまくる。あまりにも質の悪いリップサービスに乗っかってしまう自分に嫌気がさす。こんな不毛なことはやめなければ、やめなければ、と思い何度もアプリを削除するも、自己肯定感が下がると再インストールして男からの褒めことばを求めてしまう。

「私はかわいい」と自認したい。でも自分のことを自分でかわいいと思いきれないから、他者からの承認が欲しい。小さなころの自分はかわいいをあきらめていた。中高生時はオシャレや恋愛を殺して勉強に励んだ。その抑圧された気持ちが今になって爆発している。多くの人、特に男にかわいいと言われたい。かわいいと言われることそのものが自分の存在価値の様に感じている。ちょっとタイプの男に「かわいいね」と言ってほしくてあっけなく心も体も開示する。後になって傷つくことはわかっているのに、一時的な欲求の充足をやめられない。私の心の何かが枯渇している。かわいいという暴力から逃れられない。

「かわいいと言われたい欲求」をインスタントに満たしてくれるのがマッチングアプリ。インスタント食品ばかり取り続けた舌が本来の素材の味を忘れてしまうように、私の心は純粋な愛が分からなくなってしまっていると思う。心から人を信用することができなくなっているから本当に大事な人を傷つける。ひどい仕打ちをしてしまう。自分で自分をちゃんと愛せるようになりたい。24になってようやく自己と向き合う時が来た。

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