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フジテレビ「スカッとジャパン」に投稿したけど採用されなかったおっさんのスカッとする話

私はとある地方都市で警備員(ガードマン)をしています。
青空(仮名)と言います。
ひと口に警備員といっても、施設、交通、貴重品、身辺と4種類あって
私は道路や工事現場にいる交通警備を主とする会社に勤めました。

長年勤めた会社をリストラされ、
高齢で免許や資格、腕に職もない者には
再就職先を探すのも困難で、たどり着いたのがこの仕事でした。

もちろん初体験ですし不安もありましたが、
会社事業所の所長さん曰く
人手不足で、定年退職してから来る人もたくさんいるから
あなた(就職当時40代)位の人は即戦力になるから有難いとのことでした。

そして初出勤日のことです。
私より少し年上の先輩のSさんという人と同じ現場になりました。
が、このSさんがとんでもない曲者だったのです。

Sさんは3年ほどの経験者ということでしたが、
端的に言うと後輩に嫌味を言ったりいびったりすることを
生き甲斐としているような典型的な意地悪なタイプの人だったのです。

私は初日からその洗礼を受けました。
まったくの初心者ということをわかったうえでの言動でしょう。
Sさんから注意されたり、罵声を浴びたりしました。
「旗のふり方が悪い!」
「合図が分かりづらい!」
「無線をちゃんと使え!」
「笛もろくに吹けないのか!」
(この笛というのはトラックのバック誘導をするときに「ピピッー、ピピッー…」と吃音で吹かなければならないのですが、初心者にはうまく鳴らすことができません。だって、わからないですよ。これまでの生活の中で笛を吹く機会なんてなかったですから…)

また、ある日のお昼休みのことです。
現場近くのコンビニでお弁当を買ってきて休憩スペースで
食べようとしたところ
Sさんが「ろくに仕事もできないのに豪勢な昼食とるんだね、
こっちはあんたのせいで飯ものどを通らないというのに」
とカップラーメンをすすりながら嫌味を言われたこともあります。

すごく悔しくて腹が立ちましたが
それでも、せっかく見つけた再就職先ということもあって
「すいません」を繰り返し、言われるがまま穏便に過ごしていました。

それから1ヶ月ほどして、Yさんという新人さんが入りました。
このYさんの仕事初日の現場のメンバーが、Yさんと私とSさんの3人でした。
私も初めての現場で、
事業所の所長にYさんを車で迎えに行って
現場の事務所駐車場で現場監督を待つように指示を受けました。
(仕事の現場は工事期間によって、いろいろと変わるのでこういった集合は日常茶飯事なのです)

現場での作業は8時からなのですが、
事務所から車で5分ほどの現場ということだったので
7時半に事務所に行きました。
監督さんを待っている間に、Yさんと話したところ
Yさんは以前に工事の作業員をしていて、
体力的にきつくなってきたので転職したとのことでした。
そして、年齢は私より1つ上で
驚いたことに私と同じ中学校の先輩だったのです。
なんか物腰も柔らかくて感じのいい人だし、すごく親近感を持ちました。

しばらくして監督さんが来たところ、
その監督さんが現場を掛け持ちしているため
もうひとつの現場に行かなきゃならなくなったと言われました。
そして私たちが行く現場の作業員を迎えに寄こすので
もう少し待っているように告げられました。
仕方なく待っていたのですが、8時近くになっても迎えが来ません。

そこへ私の携帯に電話がかかってきました。
Sさんです。
開口一番「なにやってんの!遅刻か!」厳しい口調です。
Sさんは直接現場に行っていて、
私たちの事情を知らずに電話の向こうでわめいています。
どうやら監督さんの連絡ミスだったみたいです。
私が「すいません。迎えが来てくれるというので事務所で待っていたんです」
と言ったのですが聞く耳を持ってくれません。
「はやく来いよ!」
そう言われたので、とりあえずSさんに道順を教えてもらい現場に向かいました。

現場に着いたときに、また責められました。
「ホントにしっかりしろよ!作業員の方に迷惑がかかるだろ!」
そしてYさんに向かっても「アンタも初日から何やってんの!」と大声で叱責しました。

するとYさんが
「うるさいわ、ボケ!おれら監督に待っとれ言われたから、待っとたんじゃ。何にも知らんくせに偉そうなこと言うなっ!」と反論したのです。

やばい!と思いました。
大喧嘩になるんじゃないかと。

するとSさん、シュンとして黙り込んでしまいました。

何と、このSさん自分より高圧的に出てくる相手に対しては
一言も言い返せないとんでもないヘタレ野郎だったのです。

さらにYさんが畳みかけます。
「おまえ、おれが作業員しとる現場にも何回か来とって同僚の年配の人にも
偉そうにしとったの知っとるぞ。けどな、会社も違うしお節介やと思って黙っとったんや。でも、いっしょの会社になったからには言わせてもらうぞ。それにな、この青空さんもおれの中学時代の後輩や、なめとったらおれが許さへんぞ。わかったか!」と、渇をいれてくれました。

Sさんは小さな声で「はい」とうなずきます。

ホント、スカッとしました。

それ以来、Sさんはすっかりおとなしくなり
これまで呼び捨てにされていた私ですが、さん付けでよばれるようになったのです。


Y先輩、ありがとう!


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