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#ネタバレ 映画「わたしは、ダニエル・ブレイク」

「わたしは、ダニエル・ブレイク」2016年作品
(ケンカツ)の良さも再確認
  2019/12/17 17:57 by さくらんぼ(修正あり)

( 引用している他の作品も含め、私の映画レビューはすべて「ネタバレ」のつもりでお読みください。)

「 心臓の病で職を失った59歳のダニエルは、国の援助を受けようとするが、制度の複雑さに翻弄される。」

( ぴあ映画生活『わたしは、ダニエル・ブレイク』あらすじ より抜粋 )

素晴らしいです。

「一食抜いても観るべき映画」というのは、このような作品なのでしょう。

しかし、これを観て、吉岡里帆さんのあのTVドラマ「健康で文化的な最低限度の生活」(ケンカツ)の良さも、再確認しました。

映画「わたしは、ダニエル・ブレイク」では、主に住民側の苦悩に焦点が当たっていますが、TVドラマ(ケンカツ)では、役人と住民の、双方の苦悩が描かれているからです。

★★★★★

追記 ( 制度が問題 ) 
2019/12/17 18:05 by さくらんぼ

映画のラストに、主人公・ダニエルの事実上の遺書が、親友によって朗読されます。

そこには(役人ではなく)「制度が問題だ」と書かれていました。

その制度の中で、現場の役人は、苦悩しながら一生懸命に仕事をしていました。

しかし、その制度の中で、住民も苦しんでいたのです。

追記Ⅱ ( 公務員の仕事 ) 
2019/12/18 9:23 by さくらんぼ

心臓発作で失業した主人公・ダニエル。

今は役所から手当をもらって生活しています。映画の冒頭には、手当の継続をめぐって、ダニエルと役人が面接するシーンがありました。

しかし、役人は心臓とは関係のなさそうな、マニュアルどおりの質問を続けるのです(健康診断などでよくある問診票みたいなもの)。

それに苛立つダニエル。

しだいに、素直に答えなったり、口答えしたり、嫌みを言いだしたり、します。

最初は、冷静を装っていた役人も、ダニアルからの、度重なる挑発に、「審査結果に影響するかもしれませんよ」と反撃しました。

しかし、その直後には、また冷静を装って、役人は質問を続けます。ご苦労様。

( 本当は、「あとから心臓の話を聞きますから、まずは、この質問に答えていただけますか?」と、民間の一流の店員さんみたいに、やさしく諭せば良かったのですが。 )

ダニエルには分からないかもしれませんが、健康診断に問診票はつきものですね。それが、あのシーン。規則に定められた手順のはず。

第一段階です。

そして、第二段階として、「心臓」の話とか、その他もろもろの質問をするのでしょう。

そして「心臓に問題あり」みたいな特記事項は、大抵、書類の最後にある「その他欄」に書き込まれるのです。

このシーンをはじめとして、この映画「わたしは、ダニエル・ブレイク」には、役人と住民との感情的な面接シーンが多数出てきます。

役人の仕事は、現在の日本でも、あのようなシーンが日常的な光景だといってもよいでしょう。

一方、民間にある「カスハラ」の基準は、客に厳しくなってきたようです。

これからバラ色の夢を描いて、公務員を目指す方も多いと思いますが、「あれが公務員の仕事」なのです。

追記Ⅲ ( 似たような問題は ) 
2019/12/18 9:52 by さくらんぼ

昔こんな事がありました。

①失業し、就労する意思があるのに仕事が見つからない人は、雇用保険がもらえます。

雇用保険がもらえると、住民税が減免になるのです(他にも、一定の条件に当てはまることが必要)。

②一方、失業しても病気・ケガ・出産などで、年末まで働けない見通しの人は、住民税の何割かが減免になりました(他にも、一定の条件に当てはまることが必要)。

①は働く意思のある者、②は働く意思のない者の減免です。

しかし、これは役所側の規則であり、住民側としては、「税金を負けてもらえばどっちでも良い」のです。

その為、役所側と住民側との摩擦が起きます。

条例は市町村によって違いますし、今でも同様なことが、あるのかは知りませんが、この映画「わたしは、ダニエル・ブレイク」で、主人公たちが抱えていた問題から連想しましたので書きました。

追記Ⅳ ( 「 「I, DANIEL BLAKE」の謎 ) 
2019/12/18 22:20 by さくらんぼ

昔話で正確には覚えていません。NPOだっか、人権団体だったのかは忘れましたが、若いころに地下鉄の広告で、たしか「WE are」という名の組織を知りました。

多分、在日関係だったように思います。

その後、しばらくして、新聞だったか、これも何で読んだのか正確に覚えていませんが、「『WE are』とは珍しい名前の組織だね」みたいな記事を読みました。

私は英語は苦手なので、まったくの勘違いかもしれません。その際はご容赦ください。

「are」には「存在」というような意味もあるようです。

ですから、「WE are」は「私たちの存在」となり、在日団体などが使えば、「私たちの人権」と意訳でき、ネーミングの意味が分かるのだと思います。

これは決して珍しいのではなく、英語ネイティブらしいネーミングだと思います。

その上で、この映画「わたしは、ダニエル・ブレイク」の原題「I, DANIEL BLAKE」を見ると、「AM」が無く、これを意訳すれば、「私ダニエル・ブレイクには、人権がない」となるのだと思います。

ちなみに、「I, DANIEL BLAKE」という言葉は、映画のクライマックスに、ダニエルが役所の壁に、スプレーで落書きをした言葉です。

その時、周囲の住民(同じ境遇らしい)から、無名の彼が拍手喝さいの英雄扱いされるのですが、「そういう意味だ」と思えば、納得もできるのではないでしょうか。

彼らは働きたくても仕事がなく、(ドクターストップの)病気であっても、その程度なら働けるとして、手当も支給されないのです。

追記Ⅴ ( 「心臓」と「AM」 ) 
2019/12/19 8:45 by さくらんぼ

>しかし、役人は心臓とは関係のなさそうな、マニュアルどおりの質問を続けるのです(健康診断などでよくある問診票みたいなもの)(追記Ⅱより)

>その上で、この映画「わたしは、ダニエル・ブレイク」の原題「I, DANIEL BLAKE」を見ると、「AM」が無く、これを意訳すれば、「私ダニエル・ブレイクには、人権がない」となるのだと思います。(追記Ⅳより)

役人がマニュアル通りの質問を続けた点については、すでに述べた通り、概ね、理解できることだと思います。

しかし、この場合、「心臓」と「AM」は、(欠落している点で)符合しているように思います。

ですから、この映画は「人権の欠落」(あるいは血の通わない行政)を描いているのでしょう。

追記Ⅵ ( 「働ける」との審査結果 ) 
2019/12/19 8:57 by さくらんぼ

>彼らは働きたくても仕事がなく、(ドクターストップの)病気であっても、その程度なら働けるとして、手当も支給されないのです。(追記Ⅳより)

日本でもこんな事があります。

心身に障害を負った人は、医師の診断書をつけて市町村役場に申請すると、障害者手帳がもらえることがあります。

これで障害者の証明になります。

しかし、障害年金をもらうためには、もう一度、医師の診断書をつけて、国へ申請しなければなりません。

障害者手帳と障害年金の等級は、違う制度でありイコールではないのです。さらに、その他の基準も満たさなくてはなりませんから。

映画の中でダニエルが怒っていた、「仕事にドクターストップがかかっているのに、行政からは『働ける』との審査結果が出るエピソード」は、是非はともかく、そうして理解できます。


( 最後までお読みいただき、ありがとうございました。 

更新されたときは「今週までのパレット」でお知らせします。)


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