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#ネタバレ 映画「裸の重役」

「裸の重役」
1964年製作 103分
2022.7.28


( 引用している他の作品も含め、私の映画レビューはすべて「ネタバレ」のつもりでお読みください。)

森繁久彌さんという名優がいました。1913年のお生まれでしたから、私が小学生の頃には、年齢的には、すでにおじさんでした。

しかも「社長シリーズ」など、いわゆる威厳のある人を演じたドラマが初体験となってしまい、(失礼ながら)子どもの私には「いつも機嫌の悪いおじさん」としか思えず、父親に説教されているような気分にもなり、楽しめませんでした。

しかし、いつしか、そんな私も年金生活者になり、先日TV放送された映画「裸の重役」を観たら、初めて森繫久彌さんの魅力が分かったような気がしたのです。

古い記憶の中の彼は黒縁のメガネをして演じていましたが、映画「裸の重役」ではしていません。

何となく、雰囲気が、私のイメージするところの田中角栄さんにも似ています。森繁さんを観ているのか、角栄さんを観ているのか、そんな楽しい気分になりました。

今でも彼の威厳には近寄りがたいところもありますが、今ではそれ以上の魅力を感じます。

(まだ最後まで観ていませんが)もっとたくさん森繁さんの作品を観てみたいと思いました。昭和生まれには、昭和のオヤジは良いです。宝物を見つけた気分。

追記 2022.7.28 ( お借りした画像は ) 

キーワード「昭和」でご縁がありました。背景もふくめて良い雰囲気ですね。無加工です。ありがとうございました。

追記Ⅱ 2022.8.1 ( ふと、映画「コラテラル」も連想 )

新人の頃、会社の人は全員が先輩・上司ですが、部課長クラスに出世すると、後輩・部下の方がはるかに多いのではないでしょうか。

それなのに、さらなる出世を目指すあまりに、上のご機嫌は取っても、下に冷たく当たれば、味方になってくれるかもしれない多数の人間を、自分で捨てることになりねないのです。

後輩・部下には自分の脅威になる権力は無いかもしれませんが、少なくともたくさんの人間による情報網があります。時にそれは、一握りの先輩・上司を凌駕することもあるはずです。

人生は意外な人が敵になり、意外な人が救世主になってくれるものです。

この映画「裸の重役」は、そんなお話だったように思いました。

追記Ⅲ 2022.8.1 ( バーのマダムとコールガール )

映画「プリティー・ウーマン」では、実業家の青年が、偶然知り合った貧しい娼婦と結婚しそうです。しかし、大好きなストーリーではありますが、現実感は希薄でした。

一方、映画「裸の重役」では、会社の営業部長が人生につまづき、仲良しのバーのマダムから「淋しい男」と心配されますが、マダムはそれ以上の接近はしません。

しかし、同様に「淋しい男」と思われ、街で声をかけられた貧しいコールガールと一夜を共にした後、意気投合し、映画「プリティー・ウーマン」のように大金で専属契約を結んで、あの勢いでは結婚も辞さない雰囲気です。おかげで二人の運気も上向いてきました。

知らぬ間に恋人を取られた体のマダムは少し淋しげでもあります。しかし、この話は妙に現実感があります。

二つの話の骨格は同じようなのに、なぜか違う感じを受けるのか、面白いと思いました。

追記Ⅳ 2022.8.2 ( 「内助の功」 )

>一方、映画「裸の重役」では、会社の営業部長が人生につまづき、仲良しのバーのマダムから「淋しい男」と心配されますが、マダムはそれ以上の接近はしません。(追記Ⅲより)

なぜ営業部長が「淋しい男」になったのかと言えば、愛妻を亡くしていた上に、同居の愛娘が、自分の部下の、それも劣等生の烙印を押していた男と強引に結婚してしまったからです。

失意もあって、さらに、部長自身も出世をかけた大事な仕事を失敗しそうに。

この事を思い出すと、物語の焦点がもう少し合ってきた気がします。

男女同権の時代には微妙な響きかもしれませんが、昔から「内助の功」という言葉があります。内助とは「妻」を指します。「縁の下の力持ち」に似た意味です。

ここまで書けば、もうお分かりだと思いますが、ここに、いろいろな伏線が繋がるかもしれません。やはり、これは、上ではなく下の力を称賛する物語のようです。

追記Ⅴ 2022.8.2 ( 映画「THE 有頂天ホテル」 )

「内助の功」と言えば、映画「THE 有頂天ホテル」もそうかもしれません。

あれは「ホテルの役割を、夫(宿泊客)を陰で支える女房(従業員)に例えていた」気がします。



( 最後までお読みいただき、ありがとうございました。 

更新されたときは「今週までのパレット」でお知らせします。)


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