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#ネタバレ 映画「ポルトガル、夏の終わり」

「ポルトガル、夏の終わり」
2019年作品
山頂
俳優だから主役を演じたい
2020/8/16 10:14 by さくらんぼ

( 引用している他の作品も含め、私のレビューはすべて「ネタバレ」のつもりでお読みください。)

チラシにもありますが、ファーストシーンは、ヒロインが避暑地のホテルのプールサイドに降りてくるところから始まります。

リゾートホテルに行き、初めてプールサイドに降りるときのワクワク感を思い出し、一気に脱力してしまいました。

それから、深い木立の中を散策するヒロインも。

すぐ寝てしまう私が、そんな世界に迷い込んだら抵抗できるわけがありません。

しかも全編、上品で、単調で、静かな語りが続く作品なのです。

まるで私は、偶然同じホテルに泊まった客の一人として、付かず離れずの距離感で、彼女たちを観察しているような気分になりました。

( 「寝ていた映画はレビューを書かない」というのもひとつの見識だと思いますが、私は観ていない映画についても「観ていない」と断って書くことがありました。それは映画関係者の方々にとっても、「(失礼ながら)映画名の広報になる点でマイナスではない」と思います。ならばお金を払い、映画館まで出かけた作品なら、書いても罰は当たらないだろうと思うのです。)

前置きが長くなりました。

俳優にとって主役を演じるのは夢でしょうが、これは「ガンで余命いくばくもない」と悟ったヒロインが、私生活で最後の主役を演じたいと願う、女優魂の映画だったのでしょうか。

しかし、事情が分かっているから予定調和になると思った実人生にも、謎がたくさん隠れており、なかなか予定調和にはならないのです。

いや、映画と違い、実人生で主役を演じることの方が難しい。それでも、そういう、ある意味おせっかいは、けっして悪いことではなかったのでしょう。

★★★★ ( どんな映画でも、15分も観れば、作品のおおよそのクオリティは分かるような気がします。昔、家庭用の録画機が無かった時代、夜9時からTV放送される映画は、そうやって、「2時間観るか否か」を判断していましたので。 )

追記 ( 「リモート会議」と「リゾートでの集い」 ) 
2020/8/16 17:04 by さくらんぼ

ファーストシーン、プールに飛び込んだヒロインに、女性が「写真を撮られるわよ」と注意すると、ヒロインは泳ぎながら、「かまわない。私は写真映えするもの」と返すシーンがあります。

そしてラストシーン、山の上に夕日を見に行ったファミリーは、水平線に夕日が沈むと、(暗くならぬうちにと)日の名残りを背に、山道を降りて行くのでした。

重要な二つのシーンで語られているのは、俳優と観客でしょうか。

さらに、おせっかいを焼くことで自分の気持ちが裸になるヒロインと、それを眺めているファミリー。

そして、夕日とは余命いくばくもないヒロインの記号。

ファミリーはヒロイン亡き後も、何事もなかったかのように生きていくのです。

避暑地という最高の舞台で、忘れがたい、ファミリーのドラマが演じられました。

私は「俳優だから主役を演じたい」と書きましたが、「俳優家業に忙殺された人生だったから、顧みなかったファミリーにお詫びをしたい」という気持ちが裏打ちされていたような気もします。

いわゆる「リモート会議」とは対極の世界観がここにありました。

追記Ⅱ( 「匿名」と「実名」みたいな ) 
2020/8/17 9:05 by さくらんぼ

>私は「俳優だから主役を演じたい」と書きましたが、「俳優家業に忙殺された人生だったから、顧みなかったファミリーにお詫びをしたい」という気持ちが裏打ちされていたような気もします。(追記より)

スーパーマンを演じた俳優さんが、本当に空を飛べたり、弾丸をはね返したりできると思っている大人はいないでしょう。

アイドル同様、俳優さんも演じるのが仕事ですから、大なり小なり、私生活のキャラは違っているのだと思います(多くの場合、作品の役柄と、俳優としてのキャラと、素のキャラは違うのでしょう)。

ファミリーから見たヒロインは、きっとファンから見たヒロインとは違っていたのでしょうね。

しかし、この旅で、視点は統合されたのかもしれません。

追記Ⅲ ( 「断片化されたデータ」の統合 ) 
2020/8/17 9:17 by さくらんぼ

そう言えば、影の部分はヒロインだけでなく、ファミリーにもあったようです。

ヒロインが問題を解決するには、ファミリーの統合を図る必要もあったはずです。

人間関係を深めるとは、そういう事なのかもしれませんね。

追記Ⅳ ( 二人の気持ちは ) 
2020/8/17 9:23 by さくらんぼ

ヒロインともう一人の女性が、長椅子で寄り添い座っている写真があります。

しっかりと手を取り合ってはいますが、顔は別々の方向を見ています。

まだ二人の心は寄り添ってはいなさそうですね。

統合はうまく行ったのでしょうか。


( 最後までお読みいただき、ありがとうございました。
更新されたときは「今週までのパレット」でお知らせします。)


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