#ネタバレ 映画「希望の灯り」
「希望の灯り」
2018年作品 ドイツ
そうだ懐中電灯を買ってこよう
2019/5/1 10:58 by さくらんぼ
( 引用している他の作品も含め、私の映画レビューはすべて「ネタバレ」のつもりでお読みください。)
チラシの写真のような、
「夜道を一人歩く男と、クルマのヘッドライト」。
こんな夢をよく見ます。
車道はもっと遠くにあり、そして自宅へ帰る道は、
半分しか分からないのです。
道に迷いながら、ただ歩き続けるだけの夢。
追記 ( 中年クライシス )
2019/5/9 22:15 by さくらんぼ
今日観てきました。だいたい予想通りの内容で、とても良い映画です。
スーパーマーケットが舞台でなければ、そしてモノクロなら、昔の名作映画みたいな作品。語り口が純文学してました。そして、とても上品。
青年クリスティアンが主人公ですが、先輩の中年男ブルーノが主人公だと思って鑑賞するのも一興です。実は、寅さんになれなかった彼が、一番哀しかった、のかもしれないのですから。
★★★★☆
追記Ⅱ ( なぜ冒頭に踊りが出てくるのか )
2019/5/10 8:42 by さくらんぼ
映画「希望の灯り」は三角関係のお話のように思います。先輩ブルーノが好きだった同僚の女性を、後輩である青年クリスティアンに取られてしまうお話。
クリスティアンには前科がありましたが、堅気になろうと必死に努力しており、今がその正念場。そして心の支えには、一目惚れした女性の存在が不可欠でした。
一方、先輩のブルーノも以前から密かにその彼女が好きで、自らも独身であったため、なんとかしたいと思っていたのでしょう。でも、後輩に負けてしまったのです。それが中年クライシスを一気に進めてしまったのかもしれません。実際、中年クライシスにおいても、恋愛は大きなファクターをしめていると思います。
しかし、この三角関係でブルーノは騒がなかったし、後輩をいじめたりはしませんでした。それどころか、後輩の応援をしたのです。だから、この事は誰も知らない。
哀しい三角関係の話は、どこか映画「ライムライト」を思いだします。
追記Ⅲ ( 新婚旅行 )
2019/5/11 9:43 by さくらんぼ
「事務所のコピー機の作動音は、ゴジラの咆哮に似ている」。ある日私は、この奇跡に気づき、こっそりと一人の同僚に教えました。誰でも良いわけではありません。一緒に笑ってくれるような人を厳選して、ささやいたのです。
ところで、映画「希望の灯り」のラスト、「ブルーノから教えてもらったの」と言って、ヒロインがクリスティアンにこんな話をします。「フォークリフトの荷台を天井まで上げ、ゆっくりと下降させると、波の音がするのよ」と。さっそく試して微笑むクリスティアン。
「カップルがいて、『月がきれいだね…』と一人が言えば、それはアイラブユーの記号だ」とか申します。ですから、この「波の音」のエピソードも、ヒロインがクリスティアンに言ったアイラブユーであり、かつてブルーノがヒロインに言ったそれだったのでしょう。
ヒロインの部屋には作りかけのヤシの樹のジグソーパズルがありましたし、スーパーマーケットの従業員休憩室には、大きなヤシの樹のポスターが貼ってありました。さらには、男性従業員がイビサ島に憧れる言葉を発するシーンも。
クラシック音楽もたしなむブルーノは、意外とデリカシーのある人物でした。そんな彼が、かつてヒロインに接近する手段の一つとして、イビサ島への夢も語った可能性があります。
追記Ⅳ ( 就職初日の緊張感 )
2019/5/11 22:14 by さくらんぼ
先輩ブルーノの話ばかりしましたから、少しクリスティアンの話をしましょう。
この映画「希望の灯り」は、クリスティアンがスーパーマーケットに就職する初日からスタートします。制服のサイズを上司に決めてもらうところや、ボールペンなどの7つ道具を渡されたり、名札の付け方、刺青を隠すように注意されるところもありました。
そして現場のブルーノに引き合わされ、仕事を覚えていくところや、疲労困憊して夜道を帰宅し、「暗いうちから仕事に出て、暗くなってから帰る…」というボヤキも。私もそのように働いたことがありますから、朝なのか夜なのか、分からなくなるような気分は、分かるような気がします。
就職したばかりの、(どんな先輩がいるんだろう。ここでやっていけるのか等という)新人時代の不安が、良く描かれていました。しかし、先輩・上司は、無視しているように見えても、ちゃんとあなたを観察しているものです。そして真面目にやっていれば、ブルーノみたいに、貴方を応援してくれるものです。
追記Ⅴ ( クリスティアンの刺青 )
2019/5/12 8:05 by さくらんぼ
>この映画「希望の灯り」は、クリスティアンがスーパーマーケットに就職する初日からスタートします。… 刺青を隠すように注意されるところもありました。(追記Ⅳより)
最近「刺青を入れた外国人が増えてきた。外国で刺青はオシャレの一つ。堅気でも入れている。だから、刺青客が温泉に入れないのは問題だ」みたいな議論がありました。
でも、映画「希望の灯り」を見ると、あの国の庶民は、刺青に対して、日本人と同じように、敏感な反応を示しているのが分かりました。少なくとも、商売においては問題ありと認識されているようです。
追記Ⅵ ( 東西ドイツの再統一 )
2019/5/12 8:49 by さくらんぼ
>一方、先輩のブルーノも、以前から密かにその彼女が好きで、… でも、後輩に負けてしまったのです。それが中年クライシスを一気に進めてしまったのかもしれません。実際、中年クライシスにおいても、恋愛は大きなファクターをしめていると思います。(追記Ⅱより)
東西ドイツの再統一。それで得るものがあった人がいる一方で、失ったものがある人もいたのです。
おそらく、この喪失感が、(青春を失った)ブルーノの中年クライシスに繋がっているのでしょう。
追記Ⅶ ( 映画「Shall we ダンス?」 )
2019/5/12 9:04 by さくらんぼ
よろしければ、映画「Shall we ダンス?」(1995年)のレビューもご覧ください。似たテーマを扱っています。
追記Ⅷ ( あんな所 )
2019/5/12 11:27 by さくらんぼ
突然ブルーノは自殺してしまうのですが、その知らせを受けて、同僚たちは言葉もないほど衝撃を受けていました。
しかし、しばらくの後、落ち着きを取り戻した同僚の一人が、「あんな所に住んでいりゃ、死にたくもなる…」とつぶやいたのです。
きっと彼も、クリスティアンが招かれたように、ブルーノに招かれ、酒を酌み交わしたこともあるのでしょう。
そんな家である事を百も承知で、親交を深めるため、ブルーノは招待したはずです。なのに、亡くなってから「あんな所…」と言われては。
( 実は、ブルーノが憧れていたヒロインの家も映りました。ヒロインの家は豪邸とは言いませんが、モデルルームのように洗練された美しい家でした。ブルーノはそれを知っていたはずで、その落差もあって、もうひと押しが出来なかったのかもしれません。)
「死者に鞭打つ」という言葉もありますが、「あんな所…」が、この映画で一番刺さりました。
追記Ⅸ ( そうだ懐中電灯を買ってこよう )
2019/5/12 23:01 by さくらんぼ
100均で二本買いました。もう一本欲しかったけれど、「おまえ何本かうんだ」という心の声が聞こえたので、我慢しました。
今、気にいっているのは、アルミ製ルージュサイズで、単四電池3本、LED三つ、連続30時間OKの優れものです。
追記Ⅹ ( 「寅さん」と「純くん」 )
2020/2/26 9:40 by さくらんぼ
伝説のTVドラマ「北の国から」がBSで再放送されているので観ています。今7話ぐらいでしょうか。
少年・純(幼いころの吉岡秀隆さん)の目でドラマは進行しているようですが、この少年を見ていると、自分(の醜い部分)を見ているようで、不快感が溜まってきました。
しかし、自分だから叱り飛ばすことが出来ない。でも、このまま傍観するには辛すぎる。
ところが、同時に純の哀しみが分かるような気がして、純がかわいそうにも感じたのです。
あの北海道に、あの家に、純が心通う人は誰もいなくて…。
昨夜久しぶりに、(私の基調低音のような)道に迷っている夢を見ました。
正確に言えば、この夢には二種類あって、①たそがれ時の郊外で本当に道に迷っている夢。②大きな旅館に社員旅行に来て、(先輩たちと相部屋の)自分の部屋が分からなくなり、一人さまよっている夢ですが、昨夜は②を見たのです。
そして、この夢を見た引き金が、「北の国から」だったのだと思ったのです。
追記Ⅵ 2022.12.4 ( お借りした画像は )
キーワード「灯」でご縁がありました。街灯の灯りも良いですが、空の灯りも希望を感じさせて良いものですね。無加工です。ありがとうございました。
( 最後までお読みいただき、ありがとうございました。
更新されたときは「今週までのパレット」でお知らせします。)
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