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#ネタバレ 映画「地球が静止する日」

「地球が静止する日」
2008年作品
美は戦力に勝ることもある
2009/1/4 8:45 by さくらんぼ

( 引用している他の作品も含め、私のレビューはすべて「ネタバレ」のつもりでお読みください。)

新型インフルエンザは今年流行るのか、はたまた来年かと、人類は戦々恐々としています。もし近所で流行りだしたらマスクなどは一発で売り切れになると思い、ふだんは使わない私も少し買い求めました。小さきウイルスが巨大な?人類に牙をむくのです。

映画「地球が静止する日」でも、あの巨人が怪獣のように暴れまわるのかと思ったら、小さな虫の大群が津波のように襲ってきました。

そう言えばこの映画、宇宙人側も最高責任者は出てきません。キアヌと先輩の宇宙人たちだけです。地球人側も誰が最高責任者になるのかは意見が分かれますが、米国大統領も隠れてしまい代理人しか出てきません。さらにこの代理人もあまり役に立たず、結局、男女の科学者と小さな子供が活躍するだけです。

さて、キアヌはなぜ人類を助ける気になったのでしょうか。理由はひとつだけではないようです。先輩宇宙人との会話、男女科学者とのふれあい、今は亡きバッハの音楽、そして危機に陥った子供が心を入れ替えた事などが、彼の心に徐々にしみこみ、その結果「ろくでもない美しい星だと」コマーシャルのように口説かれてしまったのだと思います。

「危機におちいると人は変わる」とテーマらしきセリフが出てきましたが、最初に危機におちいるのはいつも現場で働いている名もなき人(あるいは宇宙人)です。会議室にいる最高責任者ではありません。そして危機におちいった人たちは命令を守るとは限らないのです。

でも、そんな名もなき人たちが、たとえ命令違反であっても美しく行動をするとき(キアヌやバッハを選んだ宇宙人の美意識は地球人と共通のものらしい)宇宙人に感銘を与え、地球の運命を変えてしまうこともあるのです。(京都が爆撃されなかったのは京都が美しかったからとか言われていますし)そのあたりが映画「リターナー」をちょっと思い出すような秀作でした。

★★★★☆

追記
2009/1/10 18:03 by さくらんぼ

(宇宙人のモラルについて)

「マーズ・アタック」という映画がありました。それを観て私は怖いと思いました。なぜなら宇宙人たちの考え方が地球人と違うからです。宇宙は広いからそんな宇宙人がいる可能性のほうが多いのかもしれない。そう思ったのです。

でも「地球が静止する日」では文明人同士、自然を愛しているならば、自然に根ざした、裏打ちされたモラルを共有しているはずだ、と語られていたように思いました。

映画の冒頭にインドが出てきます。インドは「0」を発明した国とか。九九算でも日本より上を行き、ある意味数学の聖地です。そして映画の中盤、地球の代表とされたノーベル賞学者と数式を解くことで理解しあいます。

最近別の映画でもありましたが、公式はある意味「美学」であり、当然に自然の摂理を表したものです。全宇宙といえども自然の手の中にあるのかもしれません。だから少しうれしい発見でした。

(子供について)

父親が中東で戦死し、ひたすら攻撃的なゲームに没頭し、戦いを望む黒人の子供。これは中東で米軍に父を殺されて報復を誓う現地の子供の様にも見えます。あえて黒人を配したのも、そんな理由かもしれないと思えます。父(イスラムの神?)を思うその子がキアヌ(イエス)に宗旨替えをするのは、米国の願いが込められているのかとふと思いました。

(キリスト)

インドの冬山で球体に遭遇するキアヌ。あのひげの風貌はイエスに似ています。また両手に印がつき、わき腹にも傷がつき、これは十字架へのはりつけですね。そして電気ショックで生き返る。その後は死者を蘇らせるなどの奇跡を行いました。そんな裏のストーリーが隠されているので、キアヌは最初から悪魔ではなく救世主として登場したのでしょう。

(確保)

球体は箱舟でした。宇宙人たちは地球上の生物を確保しました。そういえば、めぼしい科学者たちも米国政府によって確保されました。箱舟ならぬヘリコプターで・・・。

追記Ⅱ
2009/1/11 8:04 by さくらんぼ

(サンドイッチ)

キアヌが逃亡した駅でサンドイッチを食べます。赤ちゃんは生まれたらミルクを飲みますが、地球人として生まれた彼の体はすでに成人しており、欲するのはウオーターとサンドイッチだったのですね。

さらに、さかのぼれば映画の冒頭、女性化学者と子供が夕食についての話をするシーンがあります。

トイレで子供に電話をかけて「もう少し話がしたい」と言ったら「食事中だから・・・」と言って断られるシーンもありました。

食事にこだわる映画ですね。

でも、クライマックスでその訳が明らかになります。極小の虫の大群が餌を求めて津波の様に飛来し、すべての人工物を食いつくすのでした。

「食」(生存活動)はすべての生物について必要不可欠なものですが、人間が行過ぎた活動をするなら、同じ事を自然からしっぺ返しのようにされるという皮肉たっぷりのシナリオなのでしょうか。

追記Ⅲ ( 守るに値する国 ) 
2015/10/9 8:49 by さくらんぼ

「 国を直接守ることには関わらないが、守るに値する国にするのに役立ちます。 」

これは、2015.10.9の朝日新聞・朝刊の人気コラム「折々のことば」(鷲田清一さん監修)で紹介されていたロバート・ウィルソンの言葉です。

内容をご紹介しますと…

「 1969年の米議会の公聴会。素粒子実験の大型加速器建設の予算審議にあたり議員が『国防に役立つか』と尋ねたところ、核物理学者はこう答えた。同時に、『われわれがよい画家、よい彫刻家、偉大な詩人とともにおれるかどうか』が重要で、米国では芸術や文芸が尊重され、愛国心もそこに根づいていると語った。同じ物理学者の佐藤文隆が、京都で本人から聞いた話。 」

今年は、この分野で、日本人がノーベル賞を取りましたし、この映画「地球が静止する日 」も思いだしましたので、ここに、ご紹介させていただきました。

追記Ⅳ ( 「一礼」 ) 
2019/4/30 23:07 by さくらんぼ

>さてキアヌはなぜ人類を助ける気になったのでしょうか。理由はひとつだけではないようです。先輩宇宙人との会話、男女科学者とのふれあい、今は亡きバッハの音楽、そして危機に陥った子供が心を入れ替えた事などが、彼の心に徐々にしみこみ、その結果「ろくでもない美しい星だと」コマーシャルのように口説かれてしまったのだと思います。(本文より)

『 天皇陛下、退出直前の「一礼」に感動広がる まるで映画のラストシーン...

「退位礼正殿の儀の最後、天皇様がご退室されるときに一礼されたの見て、はじめて寂しさを感じた。平成、終わるんだな」 』

( J-CASTニュース 4/30(火) 18:32配信 より抜粋 )

映画「宇宙戦争」の親戚みたいな、この映画「地球が静止する日」には、映画「宇宙戦争」には欠落していた概念が描かれています。

バッハに感動した宇宙人・クラトゥ(キアヌ・リーブス)は、きっとこのシーンにも感動したことでしょう。

追記Ⅴ ( 聖書に出てくる大洪水 ) 
2019/5/2 17:44 by さくらんぼ

>映画「地球が静止する日」でもあの巨人が怪獣のように暴れまわるのかと思ったら、小さな虫の大群が津波のように襲ってきました。(本文より)

これに限らず、映画「未知との遭遇」など、宇宙人を神として描いた作品は他にもありそうです。ちなみにあの津波、暗示的には聖書に出てくる大洪水なのでしょうね。

追記Ⅵ ( 市町村役場の担当ではありません ) 
2019/7/7 21:55 by さくらんぼ

『 「アインシュタインにもこの写真を見せたかった」。今年4月、世界中が注目した「ブラックホール撮影成功」のニュース。各国精鋭の天文学者で構成される国際研究チームの日本代表者、本間希樹さんは会見でこう語りました。宇宙の不思議や研究の裏側など作家の林真理子さんが迫ります。

… 中略 …

本間:よく「宇宙人いますか?」って聞かれるんですけど、必ず「いますよ」って言うんです。もちろん見たことはないですし、いきなりUFOが飛んできて宇宙人と会うとは思わないですけど、大きい電波望遠鏡の数をたくさん増やしていくと、近くの星に地球みたいな文明があって、そこでやってるテレビを地球でも見られるという時代が、あと何十年かするとくるという試算があるんです。

林:ほォ~。このあいだテレビで見たんですけど、「宇宙人に何かを聞かれても答えないでください」という注意書きが各国に出ているっていうんです。誰かが代表して答えることになっているので、うかつに返事しちゃいけないって。

本間:万が一そういうことがあったら、しかるべきところに連絡するようにということで、日本は国立天文台に連絡することになってるんです。

林:えっ、先生のところに?

本間:僕個人じゃないですけど、僕がいる国立天文台に。ま、今すぐコンタクトがあるわけじゃないんで、大丈夫ですけどね。』

『 「宇宙人は必ずいる」ブラックホール撮影の天文学者が断言する理由〈週刊朝日〉 』

( 2019/7/7(日) 17:00配信 「AERA dot.」より抜粋 )



( 最後までお読みいただき、ありがとうございました。 
更新されたときは「今週までのパレット」でお知らせします。)


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