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#ネタバレ 映画「靴職人と魔法のミシン」

「靴職人と魔法のミシン」
夫として失格
2015-06-18 11:26 byさくらんぼ

( 引用している他の作品も含め、私のレビューはすべて「ネタバレ」のつもりでお読みください。 )

>一台の自動車の中には、沢山のエンジニアの技術、アイディアが満載です。これは、沢山の人間が自動車の中にキツネみたいに化けて入り込んでいるのと同じです。そのまんまのCMでしたでしょ。そう考えると、世の中いたるところに、化けたキツネ人間、はいますね。

とつぜんですが、上記の文章は、映画「ジャッジ」の、私のレビューからの抜粋です。あの映画はCMフェスティバルを舞台にしたもので、トヨタ自動車の斬新なCMがキーでした。

映画「靴職人と魔法のミシン」でも職人が化けます。その思想は、あのトヨタのCMにも似ていますね。

こちらは、一流の職人が精魂込めて作ったり、修理したりした「一流の作品」(製品とは呼びたくない)は、それを使う人のステータスシンボルになり、その事は、間接的に、その職人が、使う人に化けているのにも等しい、という事でしょう。

そして、その一流の職人が、長く店を開いている街も、その店にふさわしいステータスに染められていく、という事です。

店主が店のステータスを作り、店のステータスが客を選び、客層が街のステータスをも作っていくのです。

だから、老舗の一流店が、量販店やファーストフードの店に駆逐されていくと、街の空気まで変わってしまう。そんな危惧をえがいた映画みたいでした。

それは、理解できます。

でも、同時に見えてきたものに問題が…

映画「鉄道員(ぽっぽや)」です。

あの映画は、真面目な鉄道員が、家族を犠牲にしてまで仕事をする物語でした。

この映画「靴職人と魔法のミシン」も、つまるところ、仕事熱心な職人が、家族を犠牲にする話でした。

主人公のマックスの父(懐かしいダスティン・ホフマンさん)は、命を狙われているとはいえ、妻子を捨て、裏世界の人間になりました。

年老いた妻は、もう一度夫と食事がしたい、それだけを願って…願いがかなうと、安心したように他界しました。

あの夫(食事をした夫)は、本当に息子が化けたのでしょうか。赤いマフラーはあったでしょうか。よく覚えていません。

どちらにせよ、夫の行動は、たとえ仕事熱心と言えども、家族を不幸にした点で、大いに問題ありです。

私には、あの妻が不憫でなりません。

ラストシーンでのハッピー感も無神経に感じます。

ほんとうは、映画「鉄道員(ぽっぽや)」のラストシーンこそ、家族を不幸にしたものに、ふさわしいものだと思いますから。

★★★


(  最後までお読みいただき、ありがとうございました。

更新されたときは「今週までのパレット」でお知らせします。)



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