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#ネタバレ 映画「いとみち」

「いとみち」
2020年作品
愛おぼえていますか
2021/7/1 18:12 by さくらんぼ (修正あり)


( 引用している他の作品も含め、私の映画レビューはすべて「ネタバレ」のつもりでお読みください。)

今回も観たい作品がたくさんありましたが、(失礼ながら)上映開始時刻が良かったのでこれに入りました。

ポスターはメイドさんが三味線を持って立っているという斬新なものです。ひるむおじさんもいるかもしれませんが、ふざけた作品ではありませんのでご安心を。

それどころか、全編、ほとんどのセリフが情け容赦のない津軽弁で、当然に標準語の日本語字幕などありませんので、私には英語を聴いているように、ほとんど理解不能でした。所どころに分かる単語があって、それから大筋を類推したようなもので、まさに英語劇の世界です。

これも、たぶん遠景はコロナ過の映画なのでしょう。

それにしても、メイドさんが津軽三味線を弾くのを見ると、なぜ涙が滲むのでしょう。

★★★★

追記 ( 秘められた三角関係 ) 
2021/7/2 9:16 by さくらんぼ

(  以下、映画「超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか」のネタバレにも触れています。 )

タイトルは、映画「超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか」から引用させていただきました。映画「いとみち」がオマージュか否かは現時点では分かりません。

ヒロイン・相馬いと(駒井蓮さん)は、幼いころに母を亡くしましたが、父・相馬耕一(豊川悦司さん)も、祖母・相馬ハツエ(西川祥子さん)も、母の事は何も話してくれませんでした。

いとが友人にそう嘆くシーンがあります。

娘として母のことを知りたいのは当然です。

何度か、縁側でくつろぐ母らしき若い女性のシーンが挿入されますが、あれはいとが母を恋しがっている心象風景なのでしょう。

(  たぶん娘を悲しませたくないと思い、家庭内で母の話はタブー化していったのでしょう。そんな微妙な空気を感じて、娘も母の事を尋ねられなくなっていったのかもしれません。 )

すると友人は、「あなた一人が哀しいんじゃない。母の夫も、母の母も哀しいんだよ」みたいな事を言うのです。

その(苦労人らしい)同世代と思えない視点の高さにハッとするいと。

その後でしたか、父と二人で登山をして、山頂から景色を眺めながら会話するシーンがあったのは、父と視点の高さを共有した記号なのでしょうか。

しかし、視点の高さが共有できたとしても、父と祖母は母に関する情報を独占しているわけです。

ここに母をめぐっての三角関係があるとしたら、父と祖父は母を独占し、いとは部外者のように排除された形でいるのです。

映画「超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか」に出て来る三角関係は、映画「いとみち」においては、このように昇華されていたのかもしれません。

追記Ⅱ ( メイド喫茶で母になる ) 
2021/7/2 9:43 by さくらんぼ

いとがメイド喫茶に応募したのは、(強い津軽訛りのせいもあって)人見知りを克服したいという表向きの理由と、メイド服を着たいという裏向きの理由があるようですが、母の一件とも関係があるように思います。

メイド喫茶で働くことで、ある意味○○プレイの母のような役を演じることで、無意識に、瞼の母と同一化できると思ったのかもしれません。メイド服はその為に必要な衣装(記号)だったのかも。

これは、いとが母に逢うための、未知への旅なのでしょうか。

追記Ⅲ ( 最終兵器は津軽三味線 ) 
2021/7/2 10:04 by さくらんぼ

青天のへきれきが起こりました。メイド喫茶のオーナーが詐欺商法で逮捕されたのです。

新聞沙汰になって客も逃げ、「そんな店で娘を働かせる親がどこにいる」とバイトを禁止する父。

メイド喫茶はつぶれそうです。

しかし、いとは父に反発して家出しました。

いとにとってこのバイトは、前述したようにただの銭稼ぎではないのですから。

そこで、店を再起する最終兵器として、歌の代わりに、いとの津軽三味線が使われるのです。

三角関係に敗れたいとが弾く、ソウルミュージックである津軽三味線が、敵艦隊を蹴散らすのではなく、沢山のお客さんを集めるのです。

追記Ⅳ ( オーナーの言葉 ) 
2021/7/2 16:24 by さくらんぼ

「世の中に本当に新しいものなんてありゃしない。みんな誰かのものまねだ」みたいなセリフが、店に来たオーナーから語られますが、あれが主題だと思います。

そして、そのオーナーは詐欺商法で逮捕されました。

ものまねと言えばメイドさんの服装も、昔の欧米の風俗のコピーですね、父がいとに見せた本に載っていました。

そして、いとは、そのメイド服を着て、恋しい母のコピーとなり、見よう見まねで覚えた津軽三味線を弾くのです。

追記Ⅵ ( 映画「陽だまりの彼女」 ) 
2021/7/2 18:14 by さくらんぼ

(  以下、映画「陽だまりの彼女」のネタバレにも触れています。 )

映画「いとみち」は、映画「陽だまりの彼女」の越谷オサムさんの原作です。

映画「陽だまりの彼女」は、人間に恋したネコが、人間に化けて(化けてというと人聞きが悪いですが)、人間の恋人になろうとするお話でした。

恋しい母になろうとした娘を描いた映画「いとみち」と、姉妹作のような雰囲気もありますね。

追記Ⅶ ( 名シーンの女子会 ) 
2021/7/6 9:15 by さくらんぼ

相馬いと(駒井蓮さん)が父と喧嘩して家出した先は、友人の伊丸岡早苗(ジョナゴールドさん〈りんご娘〉)の家でした。めずらしい芸名ですが、彼女は地元を中心にアイドル活動をしている方のようです。

そこでいとは三味線を取り出して見せるのですが、「私にもやらせて」と早苗もさわってみます。

早苗はギターがやりたかったのだそうです。でも、母子家庭で早苗を大学に入れるために一生懸命働いている母には、ギターが欲しいとは言えなかったのでしょう。

この時の2人のやり取りが、三味線という道具を前にしての話が、とても染みてくる良い雰囲気なのですね。

なぜかと思いましたら、友人宅で友人のステレオを前にして、少しうらやましいような気分でオーディオ談義をした、少年時代の私を思い出したからかもしれません。

そして、ここで初めて知ったのですが、津軽三味線は立てて弾くようですね。ギターが寝かせて弾くのとは対照的です。

早苗がギターのように寝かせて三味線を触るのを見て、いとは「立てて!」と指導するのかと思ったら、無言でした。私なら、最初が肝心と指導しますが、いとは優しいのですね。

いや、メイド喫茶の先輩は「仕事のコツは教えない。技は盗んで覚えなさい」みたいな雰囲気でしたので、いとも友人に厳しかったのかな。

いずれにせよ、私にとっては名シーンのひとつになりました。

(  この時のいとの手さばきは、三味線を使い慣れたものの動きだと思います。まだ、ほとんど演奏はしていないのに、その前段階で「お主できるな感」的なオーラが出ています。対して、演技かもしれませんが、早苗の手さばきは、ギターが弾けない者の動きでした。このあたりも注目。 )

追記Ⅷ 2022.6.30 ( お借りした画像は )

キーワード「メイド喫茶」でご縁がありました。カワイイ絵柄で色も楽しいですね。そのままでも良かったのですが、最大倍率にして、上下してみました。



( 最後までお読みいただき、ありがとうございました。 

更新されたときは「今週までのパレット」でお知らせします。)


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