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#ネタバレ 映画「嘘を愛する女」

「嘘を愛する女」
2018年作品
3.11という始まり
2018/2/8 10:21 by さくらんぼ

( 引用している他の作品も含め、私のレビューはすべて「ネタバレ」のつもりでお読みください。 )

映画「嘘を愛する女」とは「嘘つき女」の話だとばかり思っていました。

でも実際は「嘘つき男」の話であり、「そんな男を愛する女の話」だったのです。

ですから映画館で私の頭の糸がからまり、しばし「?」の時間を過ごしました。

30分ぐらいたって、やっと、私は落ち着きを取り戻し、映画の世界に入って行きました。皆さまはお間違えにならぬよう、お気をつけください。

長澤まさみさんは、若い女性から、良い女になりました。

しかし私は、男のくせに、高橋一生さんと、吉田鋼太郎さんのファンなのです。とくに吉田鋼太郎さんがずっと出ているこの映画を観ることは幸せな時間でした。ただ作品のスケール的には、TVの2時間ドラマかな、と。

★★★☆

追記 ( 3.11という始まり ) 
2018/2/9 9:22 by さくらんぼ

病気で家族一人を亡くしても、その喪失感は耐えがたいものがあります。なのに、3.11で突然町ごと消失するという脅威に遭われた方々は、いったいどれほどの悲劇を感じておられるのか。それは、私ごときの想像力ではとても追いつかないほど大きなものだと思います。

しかし、十分に喪に服したら、いつかは前を向いて歩き始めていただきたいのです。それは、亡くなった方々の望みでもあるはず。

この映画「嘘を愛する女」は、3.11の哀しみの中にある方々に、それとなく、それを伝える映画であるのだと思います。

ヒロインの川原由加利(長澤まさみさん)と出桔平(高橋一生さん)が、初めて出会ったのは3.11の日でした。東京では帰宅困難者が大量に生まれ、街が大混乱になっていた時です。

歩いて帰ろうとして、気分が悪くなった川原を、医師でもあった桔平が優しく介抱し、自分のスニーカーを履かせ帰宅させたのです。川原のハイヒールではとても長距離を歩けませんから。

それがきっかけで二人は恋に落ちるのですが、あの「男のスニーカーを、女が履く」エピソードは、「ここから二人が、同じ人生を歩き始めた」との記号だったのでしょう。

つまり、3.11は哀しみであることに間違いはありませんが、振り返ってみれば「終わりであると同時に、何かの始まりでもあった」のでしょう。そして二人は、それを5年後に知ることになるのです。

追記Ⅱ ( 嘘と誠 ) 
2018/2/9 9:30 by さくらんぼ

実は桔平、すでに結婚していました。しかし、妻子は亡くなったのです。妻はクルマに轢かれ、子は水に溺れて。これは3.11での、家屋の倒壊と、津波の記号でしょう。

桔平は優秀な外科医だったため、仕事で家を空けることも多く、妻子は大変寂しがっていました。そこで起きた悲劇です。もっと家族を大切にしておけば良かった。それが悔やまれてならないのです。

一人生き残った傷心の桔平は、つらい思い出から逃れるように東京へ転居し、そこで偶然、川原と出逢ったのです。医者である桔平は、妻と同じような年頃の女性が苦しんでいるのを、見過ごすことは出来ませんでした。

では、なぜ桔平は嘘をついていたのか。

それは、そうしなければ生きていけないほど、重い経験だったからでしょう。人は、あまりに重い経験をすると、心の整理が出来るまでは人に話せないものです。しかし沈黙も出来なかった。だから彼は、密かに日記というか、神に向かって懺悔を兼ねた小説のようなものを書き、癒しを乞うていたのでしょう。

神に向かって書かれたものだから、嘘は書けず、同時進行の実人生でも、誰かを欺く生き方など出来るはずはありません。

その「誠」を感じ取った川原は、嘘を許したのでしょう。

追記Ⅲ ( 愛憎 ) 
2018/2/9 9:47 by さくらんぼ

亡くなった桔平の妻は、映画の表層の物語では、子どもを道ずれに自殺したことになっています。

妻は、自らも飛び回る、やり手キャリアウーマンの川原とは違い、専業主婦であり、メンタル的にも、とても弱いようでした。

そんな妻は、桔平には誠がないと断じ、(たぶん)桔平に復讐したのでしょう。彼の一番大切なものを奪うことで。だから子供を浴槽に沈め、帰宅した桔平がそれを見つけて狼狽したのを確認したのち、今度は彼の目の前で、微笑みながらクルマの前に飛びこんだのです。

追記Ⅳ ( 映画「麦秋」〈1951年〉 ) 
2018/3/22 21:37 by さくらんぼ

映画「麦秋」〈1951年〉の追記Ⅳもご覧ください。



( 最後までお読みいただき、ありがとうございました。

更新されたときは「今週までのパレット」でお知らせします。)


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