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「22世紀の民主主義」を紹介したい

奇抜な眼鏡の経済学者が新しい民主主義を提案する一冊です。
何かとうまくいかない民主主義を、いっそイチから造り変えてみようと呼びかけます。選挙や政治家は主役の座からおろし、街中やネットからのデータ収集とアルゴリズムによる政策出力が新たな主役となります。人間はその選択がヤバそうな時だけ介入する門番になる…そうすれば課題を効率的かつ的確に解決できる新しい民主主義ができあがると論じます。

固定観念を吹き飛ばされる爽快体験

「本当にできたら面白そうだ!」とワクワクできる所が好きです。
筆者が「無意識データ民主主義」とよぶ仕組みは、街中のカメラやインターネットなどから、人々の何気ない会話や意思を収集し、民意として蓄積します。その民意を、GDP・失業率・ウェルビーイングといった指数を最適化するようセットされたアルゴリズムに入力し、政策判断をさせます。その判断プロセスは公開されており、人はその出力に問題がないか適宜確認作業を行います。
その結果、民意の測定は数年に一度の選挙から毎秒ごとに加速し、政党という粗すぎる区分から政策へ、民意の反映単位を変換できます。保守かリベラルかといった謎の2択は姿を消し、全員が無意識のうちに民主主義にアクセスし、最適な政策が自動で出力・実行されていくのです。
実際に読んでみると、様々なデータを提示しながら話が展開されるので説得力があります。こんな斬新なアイデアをここまで広げられるのか!と感心しました。

筆者の「粋」

ため込んだ膨大な個人情報をどのように管理するのか?といった想定に筆者は踏みこんでいません。
だからこそ、この本は楽しめると思います。 
その象徴のような台詞がとても粋に感じました。

「政治家から見れば、現場から遊離した世間知らずの学者の妄想だろう。政治学者や法学者、歴史学者から見れば、穴やツッコミだらけで閉口する素人の雑な暴論だろう。事実誤認も残っているはずだ。

ぜひ嘲笑してほしい。この本が必要なくなるような分析や思考を専門家に展開してもらいたい。そして、実践者に政治の現場に落とし込んでもらいたい。そのための反面教師となって海の藻屑と消えられれば幸福だ。」

私はとりわけ人に笑われたくないと思い、言いたいことを飲み込んで後悔してしまう性格です。
こんな気概を持ち、新しい何かを恐れずに発信できるような人間になれるよう、努力を続けたいものです。



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