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男が目覚めるとそこは無人島だった ☆1分で読めるショートショート

 男が目覚めるとそこは無人島だった。男はなぜ無人島だと思ったか。男の倒れている海岸から、反対側の海岸が見え、島の中心にヤシの木が1本生えているのみだからだ。誰もが子供の頃によく想像する無人島だ。男は砂浜に倒れている理由が思い出せなかった。たまの休みを有効に使おうと、船で沖釣りに行ったことは覚えている。船が転覆したのか、はたまた自分が海に落ちたのか。きっと前者だろうと男は思う。もし落ちたのならば、船長が助けてくれるはずだ。改めて周りを見渡してみる。島からは水平線しか見えず、近くに他の島はなさそうだ。男は服に付いた砂を払いながら立ち上がり、ヤシの木の下にへたり込む。困った。助けを呼ぼうにもポケットには何も入っていない。ぬれた服を脱ぎながら何かないか探すもやはり何もない。もちろん、島にはヤシの木以外に何もなかった。ヤシの木を見上げてみる。葉ばかりで実をつけていなかった。水分を取れるものがないと分かると、男は急激に喉が渇いてきた。大声で叫んでみるも、反応するものは何もない。男は助けが来ることを信じて、どうにか正気を保とうとした。あぁ早く帰りたいと呟いた。

 助けがこないまま一週間たった。島は文字通り無人島に戻った。

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