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コロナで売上大幅減。ピンチをチャンスに。 名古屋土産の老舗「青柳総本家」の新しい挑戦

コロナ禍において、いろいろな業界が大打撃を受けている。ういろうや、カエルまんじゅうなど、「名古屋土産」としてビジネスを成長させてきた青柳総本家もしかり。この状況をいかに乗り越えようとしているのか。青柳総本家の取締役である後藤さんに聞きました。

後藤稔貴 (ゴトウトシタカ)
-明治12年創業、青柳総本家5代目の長男。大学卒業後、一般企業で営業として働いた後、2017年に青柳総本家に入社、取締役に就任。

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売上前年比30%、コロナがお土産業界に与えた影響

ーコロナは青柳総本家にとって、どのような影響がありましたか?

影響は本当に多大なものでした。3月以降の売上が、前年比でずっと30%代前後を推移しています。緊急事態宣言時は会社機能を止めていました。会社機能を止めるのは、戦時中はあったかもしれませんが、少なくとも、戦後ではなかった出来事です。

緊急事態宣言直後は、売上が前年対比で20%まで落ちる結果に。6月、7月に40%まで回復し、兆しが見えたかと思ったところで、8月に愛知県緊急事態宣言の発表。それ以降、ずっと上下50%が続いている状況です。

弊社の商品はお土産色がかなり強いので、人の動きが制限される状況においては、売上がたたないということが顕著に課題として浮き彫りになりました。

事業領域としてお土産一択であることは以前から課題と認識していたのですが、その変革を早急に進めていかなければいけない状況になったんです。

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ー数字で伺うと影響の大きさがリアルですね。コロナの影響が深刻化する中で、どのような取組みを進めてこられたのでしょうか?

コロナによって大きく下がった売上を立て直すことはもちろんですが、その後、会社がより成長する土台作りが必要だと感じました。そこで、青柳総本家という会社の「経営理念」や「お客様への提供価値」を、昔をさかのぼり、見つめ直さないといけないと思いました。

弊社は歴史があり、その歴史は重要な資産です。ですので、まずはその資産を理解する必要性を感じました。私は青柳総本家で働いて約3年になりますが、社内には長く働いてくださっている従業員の方も多くいます。その方々の気持ちも理解しなければ、皆で会社を前進させられません。昔から大事にしてきた価値を振り返り、それを組み立てて未来に繋げていくことが必要と感じました。

また、弊社は世間一般的には「老舗」と呼ばれます。ただ、「老舗」とはなんだろうと、言葉の定義も深堀りして、考えていきました。

どん底だからこそ向き合った。「老舗・青柳総本家」の原点


ー「老舗」について深掘るというのは興味深いです。どのように考えられたのでしょうか。

老舗というのがマイナスに影響して、身動きが取りづらいような状況になっているのではと思ったんです。廃業する可能性もありますし、何もしなければ老舗であろうと価値は無くなります。昔を振返る中で、常にお客様に新しいものを提供し続けることも、老舗の仕事なんではないかと。青柳総本家は老舗でありながらベンチャーマインドをもっていた歴史がありました。

創業から141年間。過去には喫茶店や、名古屋初の格式あるフレンチ、メキシカン料理、洋菓子店を経営するなど、昔から菓子製造に取り組みながらも、様々なチャレンジをしていたんです。

多様な業態があるものの、すべてに共通するひとつのキーワードがありました。それは「お客様を笑顔にする空間」を提供していたこと。

今回の原点回帰でそれが分かり、これからは積極的に「お客様を笑顔にしていけるシーンや場所を提供する会社」にチャレンジしていきたいと思っています。

本店

ー原点回帰の重要性をあらためて感じます。他に取り組まれたことはありますか?

2つの取組みについて紹介したいと思います。一つ目は、コロナの影響で移動が出来ないのであれば、こちらからお客様のもとへお伺いをして、商品を手にとっていただくという考えからの取組みです。

具体的には、地方のスーパーさんに弊社の商品を取り扱ってもらえるようアプローチを行い、移動できない中でもお買い求めいただけるよう活動を開始しました。活動する中で、アプローチ先の企業様から「弊社を知っている」という声を多くいただけて、本当に励みになりましたね。あらためて、まだまだ「ういろう」は勝負できるなと。


お土産以外の利用シーンを
「ういろう」「カエルまんじゅう」の新しい可能性


ー二つ目について、教えてください。

二つ目ですが、社内のメンバーを集めて、弊社商品に対して、「お土産」以外にどういった利用シーンが考えられるかブレストをしました。

はじめての試みだったのですが、いざやってみたところ、とても意味のある取組みになりました。

アイデアの一部を紹介すると、「ういろう」でいえば、例えば「朝食で食べてもらうこと」や「病院での嚥下食」としての検討などです。

「カエルまんじゅう」についても、「カエルまんじゅう」自体が「見ると笑顔になるお菓子」でありユニークだと考えていまして、それをより押し出していけないか。また、「旅行先から無事カエル」ということで旅行用や他にも縁起物としてなど、たくさんのアイデアがでました。

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ーなぜ「カエルまんじゅう」から縁起物菓子というアイデアがでたんでしょうか?

弊社のロゴマークは「柳に飛びつくカエル」なのですが、書道家である小野道風さんの故事で、「柳に飛びつくカエルが何度も諦めずに努力するチャレンジ精神を表している」というのがあります。

それにちなみ、「諦めずにチャレンジする」として、受験生向けにメッセージを届けられないかと考えました。

子どもや大人、おじいちゃん、おばあちゃんも
みんなの笑顔を引き出すチャレンジがしたい


ー本当に多様なシーンが考えられるのですね。

そうですね。これまで「お土産利用」への意識が強すぎて、他のシーンに対して、機会があっても、そのような利用シーンを広げていこうという意識にはなれませんでした。最近、お客様からいただいた嬉しいエピソードを紹介させてください。その方のお母様は、闘病中でなかなか食事が通らず、ぶどうを一粒食べることすらつらい状況とのことでした。

そんなお母様がある日、ふと「ういろうを食べたい」と口にしたそうです。そこで、青柳のういろうを購入し、お母様に食べてもらったところ、ういろうを2.3個食べて「とても美味しい」と笑顔に。「食事を摂ることができなかった母が、ういろうは食べられることに驚いたし、嬉しかった。コロナ禍のなか、何もできないことに悲しみしかありませんでしたが、本当にありがとうございました」という言葉をいただきました。私自身も励みになる、とても嬉しいエピソードです。

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これまでにも、このエピソードに似た話はたくさんあります。ただ、そのお客様の声に対して「よかった」と思うことはあれど、そういったお土産シーン以外の利用シーン拡大には意識が向いていなかったんです。

きっかけは身近にたくさんあったように思います。
もうひとつ違う話を紹介させてください。

私はコロナ前から、老舗和菓子店店主が集まる「あんこマンナイト」というDJイベントをやっています。

ー「和菓子」と「DJイベント」はなかなか異色ですね。詳しく教えてください。

はい。東京銀座の「空也もなか」さんが立ち上げたイベントです。なかなか和菓子に触れることがない方に向けて、音楽を通じてたくさんの方に和菓子に触れていただきたいという目的で、私もDJをしながらお菓子をお届けしています。名古屋で開催したり、東京でのイベントにも参加しています。

名古屋城でイベントを行った際に印象的だったのが、お客様がお菓子を「待ってでも欲しい!」と長蛇の列ができたんです。そして、お菓子を食べて、笑顔になっている方々に実際にお会いすることができ、お菓子屋としての本質はここにあるのではないかと感じました。

子どもや大人、おじいちゃんおばあちゃんが喜んでいるのをみて、本当に感慨深い気持ちなったのと共に、その笑顔を引き出せるようなチャレンジをしていこうと思った瞬間でした。

そんな多様な利用シーンが考えられる中で、お土産以外のシーンを提案する活動は積極的にできていなかったのですが、幸か不幸か、まさにコロナ禍で状況が激変し、早急にお土産以外のシーン提案も検討していかなければいけない状況になりました。

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改革の待ったなし。応援してくださるお客様のために
苦難を乗り越えるべく、SNSやECなども始動。
青柳総本家の新しい挑戦のスタート


ーなるほど。具体的には、これからどんな挑戦をしていこうとしているのかをお聞かせください。

短期的には、利用シーンの拡大に向けた取組みを開始しています。
何も動かないと「お土産」としての利用シーンのみになりますが、もっと多様なシーンで「ういろう」や「カエルまんじゅう」を楽しんでもらいたい。そのために、自社から利用シーンの提案ができるようにTwitterの公式アカウントを開設しました。

自社から情報を発信しつつ、お客様とコミュニケーションをとり、お客様と一緒に成長していきたいと思っています。

本当にお客様に支えてもらっているんです。先日、中日新聞さんが企画した、名古屋の様々な企業を集めてのクラウドファンディングに参加しました。

イベントの主旨は、コロナで観光業が大打撃を受ける中で、観光業に対して集めたお金を還元するという内容です。青柳総本家が観光業に助けられながら生きてきたのは間違いないので、しっかり恩返ししたいと思い参加を決めました。

クラウドファンディングで商品をご購入していただくなかで、たくさんの方からコメントをいただいたんです。青柳総本家のことを応援してくれてたり、励ましの言葉をかけていただいたり、弊社もコロナで本当に辛い時期でもあったので、涙がでました。

青柳総本家を応援してくれる人たちがいる。この人たちのために、ここで立ち止まってはダメだなと。なんとしてもこの危機を乗り越えて、事業を続けていきたいと強く思うきっかけになり、心の励みになりました。

ーそれは本当に嬉しい出来事ですね。

本当にそう思います。なので、このコロナでの売上の落ち込みを打開していかないとなと。多くの失敗もするかもしれませんが、チャレンジすることを重視し、スピード感をもって様々な挑戦をしていこうと思っています。

その一環で、ECサイトも強化する予定です。また、ECに特化した製品開発も検討しています。お客様により喜んでいただけるように、味にこだわり、表現していければなと。 

そして、中長期的には、お客様を笑顔にするシーンを拡大していき、いずれは食にこだわらず、笑顔を作れるシーンであれば他分野にも挑戦していきたいですね。

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ーありがとうございます。最後に読者に一言お願い致します。

実際、コロナの影響を受けて大変厳しい状況ではあります。しかし、下を向かずに前だけを向いて、お客様に楽しんでいただけるような会社、また笑顔になれる製品を提供できるよう邁進して参ります。もし、久しぶりにういろうを食べたいなと思ってもらえましたら、ぜひ青柳総本家のういろうを手にとってもらえると嬉しいです。

ここまでお読みくださりありがとうございました。
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