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変化する市場の中で、優位性はどこからくるのか?

ダイナミック・ケイパビリティとは?


ダイナミック・ケイパビリティとは、
急速に変化するビジネス環境の中で、変化に対応するために内外のさまざまなリソースを組み直し続ける、企業固有の能力・ルーティーンのことである。
世界標準の経営理論 第17章 著:入山章栄

端的に言えば、激しい市場変化に対応するため、経営資源を最適に組み替える能力のこと。

企業が持っている資源(=経営資源:人・もの・金・情報・知財・時間)は、有限である。だからこそ、今あるものを最適に配分する必要がある。
この配分を市場に合わせて最適にし続けられる能力こそ、ダイナミック・ケイパビリティである。

能力と言われて、abilityとcapabilityの違いは何かわかるだろうか?

abilityは、単に「能力」を持っていることであり、
capabilityは、「組み合わせる能力」といった、実際に使いこなすことを意味する。
一般にcapabilityとは、「能力」=abilityを意味するが、経営学では少し異なる。
追加で、resorceとは、企業特有の資産のことを意味している。

ダイナミック・ケイパビリティの構成理論


ダイナミック・ケイパビリティの構成理論は二つある。それは、「RBV理論」「ルーティーン」である。

RBV(リソース・ベースト・ビュー)とは、以下の二つの命題である。
命題1:企業リソースに価値があり、希少な時、その企業は競争優位を実現する。
命題2:さらにそのリソースが、模倣困難で、代替が難しい時、その企業は持続的な競争優位を実現する。(以下略)
 世界標準の経営理論 第3章 著:入山章栄

一言で言うならば、
企業が持っている「リソース=(経営資源)」こそ、競争優位の源泉である。
と言うことだ。

RBVのすごいところは、これまでの理論では、市場環境こそ全てであると主張していたところに、企業がコントロールできる「資源」に注目したというところにある。

ルーティーンとは、
繰り返し行われ、しかし状況変化によって変わることもある、行動パターンである。
世界標準の経営理論 第16章 著:入山章栄

組織が、習慣的な行動を記憶することで、コストが減るということを意味している。

一般的に言われる、ルーティーンを想像しても良い。しかし、経営学的には追加の意味がある。
組織が習慣的な行動を記憶することにより、判断のコストが減り、新たな知識を取り入れやすくなるという意味も「ルーティーン」に含まれる。

センシングとサイジング


ここでは、Teece(1997)とTeece(2007)の論文を紹介する。

どちらも、急速な環境の変化に応じた競争優位の源泉を説明するために、ダイナミック・ケイパビリティを唱えている。

Teece(1997)では、

ダイナミック・ケイパビリティは、企業の資産(Position)とその進化経路(Path)で形成された、企業の組織プロセス(Process)から生じる。
Teece, D. J.et al. (1997) Strategic Management Journal, Vol.18, pp509–533

ルーティーン・技術などの資産が模倣困難な場合に、競争優位が生じ、市場の変化に応じて、資産を組み換え直すことが重要であると主張している。

Teece(2007)では、

ダイナミック・ケイパビリティは、Sensing・Seizing・Transformationalに分解でき、価値を高めるように資産の組み換えを行うことが重要である。
Teece, D. J. (2007) Strategic Management Journal, Vol.28, pp1319-1350

Sencing(センシング)とは、「市場変化を察知する能力」であり、「サーチ」や「知の探索」と同じことである。

Seizing(サイジング)とは、「ビジネスモデルや顧客課題解決を描き、正しい意思決定を行うこと」である。

Trannsformationalとは、「資産を再構築すること」である。

一貫して、今持っている資産を市場環境に合わせて、組み換え直すことが重要である。

新しい資産を外から手に入れれば良いではないか?という疑問を持つ方もいるかもしれない。
しかし、この理論のベースは、「進化論」であり「経路依存性」がある。
つまり、競合と同じ資源を手に入れたとしても、進化の過程で異なるルーティーンを手に入れると異なる資産を持つことになる。そのため、単純に同じ状況を作り出せば良いというものでもない。

それぞれの論文では、各要素の詳しい説明と、要素に通じるトピックが紹介されている。詳しく見たい方は、原著論文の図を眺めるだけでも良いので、ぜひ読んでほしい。

市場優位性の理論の比較



Teece(1997)では、市場優位性を明らかにする理論が、4つ紹介されている。

このうち、RVBとダイナミック・ケイパビリティはすでに紹介した。
この2つは、企業内部から競争優位がくると主張する理論である。
残りは、上の2つの理論とは異なり、市場優位性は、「構造」から来ていると主張する理論である。

Competitive Force Appoach
産業組織論からきている理論で、ポジションを守るために企業がとれる行動を主張している。Poterの5フォース分析がこれに当たる。

Strategic Conflict Approach
ゲーム理論から来ており、製品市場の不完全性・参入障壁・戦略相互作用に焦点を当てている。

Teeceは特に、Poterの5フォース分析を批判している。
5フォース分析は、市場環境の構造が変わらない場合のみに適応できる理論であり、
市場環境が急速に変化する場合には、ダイナミック・ケイパビリティが優れている。

比較のために、RVBとダイナミック・ケイパビリティも再掲する。

RVB(リソース・ベースド・ビュー)
企業固有の能力や資産・分離メカニズムの存在がパフォーマンスを決める。
「知の深化」と強い結びつきがある。

ダイナミック・ケイパビリティ
変化する市場環境の中で、能力とリソースを組み直すことで、模倣困難な資産を作ることが重要である。「知の探索」や「進化理論」が前提にある。

RVBは、ニーズなどの環境が変化しない前提である。
さらに、リソースとダイナミック・ケイパビリティの違いもある。

リソースとは、企業におけるオペレーティング能力である。
一方、ダイナミック・ケイパビリティとは、変化する顧客ニーズに合わせ、進化していき、長期的な価値を構築する経営者の能力である。

まとめ


ダイナミック・ケイパビリティの理論によると、

市場優位の源泉は、環境に合わせて資産を組み替え直し続けることで生まれます。

現在の変化の激しい時代には、ピッタリの経営理論ですね!

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